34 図書館裏での悲劇と、撫子の宝物
かくしてこの出来事は、
『図書館裏での悲劇』
と名付けられ、エシオニア学園で永く伝えられる事になった。
というのは真っ赤な嘘だが、とにかく紳士クンの学園生活の中では、
かなり大きな出来事のひとつにはなった。
それからというもの、色雄が撫子に言い寄って来る事はとんとなくなり、
希里も、撫子に余計な事を言ったり、
ちょっかいを出したりする事がしばらくの間はなくなって、
ある意味、万事めでたしめであった。
それでも紳士クンは時々、
(本当に、あれでよかったのかな?)
と思い、撫子の恋心をもてあそんでしまった事を、深く後悔するのだった。
ちなみにその撫子は、自分の部屋の机の引き出しの中に、
紳士クンからもらったあのラブレターをずぅっと大事にしまっていて、
落ち込んだ時や自分に自信が無くなった時に読み返しては、
ベッドのクッションに顔をうずめ、両足をジタバタさせているのだが、
それは紳士クンが死ぬまで知らない、撫子の絶対の隠しごとであった・・・・・・。
とまあこんな感じで、
これからも紳士クンの不本意な日々は、
まだまだ続いて行くのであった。
紳士クンの不本意な日々Ⅳ 完




