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33 希里が、人生の中で最も痛いゲンコツを食らった日
そして撫子は両手の指の関節をバキバキ鳴らしながら、
希里と紳士クンに近づいて来る。
それを見た希里はさっきの虚勢がすぐさま吹き飛び、恐怖に怯えた声で訴えた。
「わ、わ、悪かったわよ!ゴメンナサイ!
もう二度としません!お願いだからそんなに怒らないで!」
が、撫子はそんな言葉など全く耳に入らない様子でズンズン近づいて来る。
一方の紳士クンは、
撫子がこうなってはもはや誰にも止められない事を骨身にしみて分かっているので、
無駄な抵抗はせず、
今からくらうであろうゲンコツの衝撃に備える為に目をつむった。
そして次の瞬間、
ごちぃん!
という物凄いゲンコツの衝撃音が響いたかと思うと、
「ぎゃぁああああっ!」
という、希里の断末魔が聞こえたのだった。
ところでその直後に撫子は、
紳士クンにも怒りのゲンコツをお見舞いしたのだが、
その威力は希里にやったそれよりも若干手加減されたものだった。
が、それでも紳士クンの心には十分痛みを与え、
「ゴメンなさい!お姉ちゃん!」
と、紳士クンは心の底から撫子にお詫びをしたのだった。




