15 言葉の矢が刺さりまくる
一方の撫子はそんな紳士クンの様子には全く気付く事なく、
小さく頷いて言葉を続ける。
「そう、なの。
今日、帰ろうと思って学園の玄関に行ったら、
私の靴箱の中に、封筒が入っていたのよ」
「へ、へぇ~、そう、なの。ちなみに、どんな事が書いてあったの?」
繰り返しになるが、その内容は紳士クン自身が誰よりも知っているし、
できる事ならもう二度とそれを見たくも聞きたくもなかったが、
それを聞かない訳にはいかない紳士クンは、
ゲテモノ料理を口に放り込むような気持ちで尋ねた。
それに対して撫子は、いかにも言いにくそうに、
しかし、どこか浮ついたような口調で、言った。
「とても、キザで、恥ずかしい、事よ。
私の事を、自分の心に咲く大輪の花だとか・・・・・・」
(うぐぅっ!)
紳士クンの心に、言葉の矢が刺さった。
「自分の暗い心を照らす、まばゆい光だとか・・・・・・」
(ぐはぁっ!)
もう一本刺さった。
「私はあまりに美しく・・・・・・」
(はがぁっ!)
まだまだ刺さります。
「私はあまりに清らかとも書いてあったわ」
(んぎゃぁっ!)
グサグサグサッ!
もはや紳士クンの心は、
撫子の言葉の矢が刺さり過ぎてウニのようになっていた。
そんな紳士クンの心の状態など露も知らない撫子は、
最後のとどめを刺すつもりは全くないのだが、こう言った。
「本当に、キザで恥ずかしい手紙でしょう?
こんな恥ずかしい手紙、よく書けたものだと思うわ」
(ふぐぅっ!)
ドスゥッ!
最後に太い大きな矢で心を貫かれた紳士クンは、
白目をむいてその場につんのめりそうになった。




