11 相手による
姉のプライドを傷つけずに済んだ事を察した紳士クンは、更に質問を続ける。
「じゃ、じゃあ、今、誰か好きな人は居るの?その、恋愛的な意味で」
すると撫子は、ほのかに頬を赤らめながらも、キッパリとこう答えた。
「い、居ないわよ!
そもそも周りが女子ばっかりの今の環境で、誰を好きになれってのよ?」
「だ、だよね」
「何でそんな事聞く訳?あんたまさか、誰か好きな子ができたの?
そりゃあそうよね、あんたは毎日女の子に囲まれて、選びたい放題だものね。
自分の立場を利用して、ハーレムでも作ろうって企んでいるんでしょう?」
「そ、そんな事企んでないよ!」
「冗談よ。そんな悪気も度胸もない事くらい分かってるわ。
で、何でそんな事聞く訳?
企みとまではいかなくても、何かしら理由があるんでしょう?」
撫子はそう言うと椅子から立ち上がり、
丸テーブルを挟んで床に座り込む紳士クンを見下ろした。
その、えも言えぬ迫力に、紳士クンは
「う、まあ、それは・・・・・・」
と言って言葉を途切れさせる。
そしてしばらく間を置き、ひとつ大きく深呼吸をして、
ゆっくりと、慎重に言葉を選びながら、再び口を開いた。
「も、もしもの話なんだけど、もし、今、誰かが、
お姉ちゃんに片想いをしているとして、
一度でいいからデートして欲しいって言われたら、
お姉ちゃん、デート、する?」
それに対して撫子は、ピンと背筋を伸ばし、
両手を腰に当て、威厳たっぷりに、
極めてハッキリキッパリとこう言い放った。
「相手によるわ」
「だ、だよね・・・・・・」
そう言って苦笑いを浮かべる紳士クン。
そして『ちなみに、どんな相手だったらデートするの?』と聞こうとした時、
それより先に撫子が前かがみになって紳士クンにズイッと顔を寄せ、
一転して鬼のような形相になって言葉を続けた。




