10 デリケートな話題を切り出すタイミングとテクニック
(そんな事を聞くと、何でそんな事聞くんだって言われるだろうし、そうなると、
色雄さんのデートの申し出の事を話さなくちゃいけなくなるだろうし、
う~ん・・・・・・)
と、頭の中で言葉をグルグルさせていると、
「そういえば」と、撫子の方から話を切り出してきた。
「あんた昨日、静香さんと一緒に例の女の子の家に遊びに行ったんだって?」
「ああ、針須さんだね。静香さんに聞いたの?」
「そうよ。静香さん、すっかりあの子と仲良しになれたみたいじゃない?
休み時間の時に、それは嬉しそうに話してくれたわ。
これも全部あんたのおかげだって、大層感謝していたわよ?」
「そ、そんな、僕は何もしてないよ。
それより、お姉ちゃんも最近は、すっかり静香さんと打ち解けたみたいだね?」
「そうね、最近やっとこさ普通におしゃべりしてくれるようになったわね。
まだちょっと向こうは遠慮している感じはするけど」
「でも、極度の女性恐怖症だった静香さんとそこまで打ち解けられたのは、
凄い事だよ。流石はお姉ちゃんだね」
「フフン、それくらいどうって事ないわよ」
撫子はそう言うと、右手の人差指で鼻の下を軽くこすった。
撫子が得意気な気持ちや上機嫌になった時に出るクセである。
それを見て取った紳士クンは今こそチャンスとばかりに、例の話題を切り出した。
「ところで話は変わるけど、お姉ちゃんは今、付き合っている男の人は居るの?」
『今』と付けたのは、例え撫子が今までに男と付き合った事がなく、
これからも当分その予定が無いとしても、
それは『今』だけの短い間の事なんだという撫子の面目を保たせる為の、
紳士クンの優しさと気遣いからであった。
そしてそれに敏感に反応した撫子は、鼻の頭を指先でポリポリかきながら言った。
「そ、そうね、今は、居ないわね」
「そ、そっか」




