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PART1 開かれた領域

 なんか、ロイの雰囲気が変わった気がする。


「マリアンヌさん、よろしくお願いしますッ」

「ああ、はい」


 今までの、というか運動会前のあいつは、どこか余裕のなさそうな態度が目立っていた。

 だが運動会が終わって、その不安定さはなりを潜めている。


「フッ!」


 わたくしの思考を遮るように、バキバキーン! と甲高い音が響く。

 魔力で構成された防御壁が粉砕された音である。


「マリアンヌ、次は僕がいくよ」

「ああ、はい」


 端的に言えば、余裕ができたように見える。

 黙り込む回数が減ったし、人の話をよく聞くようになった。

 なんかこれ受験生が成績ちょっと上がった直後みたいな変化だな。


破雷覇断(デストラクション)烈光衝砲(ライトブロー)!」


 またもバキバキーン! と甲高い音が響く。

 魔力で構成された以下略。


「マリアンヌ嬢、次はオレの番だ」

「ああ、はい」


 そういうわけで、歓迎すべき変化なのは間違いない。

 間違いないのだが……


「ハアアアアアアアアアッ!」

 

 三度、バキバキーン! と甲高い音が響く。

 全略。


 心に余裕のあるロイって、なんかアレだな。

 なんというかこう、心臓に悪いというか。



【こいつもう弱点ないじゃないですか。無敵ですか?】



〇無敵 無敵なのはジークフリートさんなんだよなあ



 やっべ、ダルいオタクが釣れちゃった。

 ミュートさせてくれねえかなあ。




 ◇




 先日の対抗運動会が終わり、年内に残った学校での大きなイベントはクリスマスパーティーぐらいとなった。

 とはいっても、12月24日当日は大聖堂で大礼拝が行われる都合上、一日ずらしたいわゆるイヴイヴの23日がパーティー当日である。

 学校の講堂を貸し切って行われるパーティーは年に一度の名物であり、リア充御用達イベントとして有名だ。


炸裂衝撃拳ネオインパルス・フィストォッ!」


 ユートの渾身の一撃が防御壁を粉砕する音が、貸し切りの訓練場に響く中、わたくしは腕を組み渋面を作る。

 何が悲しくて男子女子が出会い狙ってイチャコラする場に行かなきゃいけないんだよ。マッチングサイトでも使ってろ。


「そう言えばタガハラ嬢、大礼拝が近づいているが、準備は大丈夫そうか?

「はい、進行は頭に入れておきました。正装姿で一般の方の前に立つのは初めてですから、緊張しますけど……」


 防御魔法を解除していると、ユイさんとジークフリートさんの会話が聞こえてきた。

 そういえばそろそろ次期聖女であることを公式に発表するかもしれないのか。



〇みろっく このタイトルは詳しくない、主人公が聖女だってバレるのは最終盤って聞いてたけど前倒しになることがあるの?

〇苦行むり ねえよ!

〇火星 全部のネタバラシがあるグランドルートの最終盤で判明するのになんで一年目の12月で公表しようとしているんですかね……

〇適切な蟻地獄 そもそも人造聖女なのは本人すら知らないんだよなあ

〇つっきー 設定資料集にしれっと一行だけ『背教者たちが造り上げたデザイナーズチャイルド群の唯一の成功体である』とか書かれててユーザーの感情は破壊された

〇遠矢あてお この世界、本当に治安が悪すぎる



 あ、すっかり忘れてた。そういえばユイさんって人造人間なんだっけ。

 教皇とか政府とかがそこまで知っているのかはかなり微妙な気がするけど、別に言いふらすようなことではないかな。胸の内に留めておこう。

 そして気にかけるべき問題点は別にある。わたくしは挙手して、ユイさんに視線を向けた。


「前聖女リインの服装からして……こう、丈とか大丈夫ですか? ちゃんとふととも隠れてます?」

「え、多分出てますけど」


 ユイさんの言葉に、わたくしはマリアナ海溝より深い溜息を吐いた。


「ダメでしょう、デザインの再発注を要請します」

「お前どこの立場から言ってんだよ」

「当たり前です! やましい目で見る人間がいるに決まっていますわ!」


 熱弁を振るうわたくしを、一同が冷めた視線で見てくる。

 何だよ。間違ったことは言ってないだろ。


「ちょっといいかな、マリアンヌ」


 前に進み出てきたロイが、咳払いをしてから語り掛けてくる。


「やましい目で見るやつがいたらって……君がそうなのか?」

「は?」


 突然の疑惑をぶつけられ、自分の想定よりも低い声が出た。

 しかしみんな、こちらをじっと見ている。完全に犯人を見る目だった。


「……は、はあああああ!?」


 確かに最初にそこを指摘しているのは、そういう意識の仕方をしているみたいだけど!

 でも違うって! 本当にユイさんのことを思って……ユイさんの足のことを思ってわたくしはさあ……!

 イカン! ドツボにハマっている! このままではありもしない罪を自白する羽目になる!


「気をつけたまえ、ユイ。こういう人は確かに多そうだ」


 キメ顔になったロイが、わたくしを親指で指す。

 ぶっ飛ばしてやろうかこいつ……


「とかなんとか言われてるけど、実際どうなのよ?」

「肌面積的には制服とあんまり変わんないと思います」


 わたくしとロイが絶体絶命裁判4をやっている間に、リンディがユイさんを証人喚問していた。


「それで言うとあいつは年中発情女ね……」

「……ちょっとだけなんですけど、こう、なんか、嬉しいですね」

「アンタはアンタで性的な目で見られてゾクゾクしてんじゃないわよ! この馬鹿!」

「あいたっ」


 リンディのチョップを食らって、ユイさんは頭を押さえて涙目になっていた。

 愛のチョップだなあ。


 まあこんな感じで、学園もわたくしの周囲も、クリスマス(ちなみにこの世界のクリスマスはキリストじゃなくて建国の英雄の誕生日である。シュテルトライン王国建国以前の争乱時代を終わらせたえらーい人なので、大陸全土で祝う日になっているんだとか)の気配に若干浮かれている。


 だが魔法使いたるもの、特別なイベントがなくても毎日が訓練デーだ。

 というわけで、今日も今日とて、わたくしたちは放課後に特訓をしているのだった。


 今日のウォーミングアップは終了。

 展開していた防御魔法を、片手を振って消す。


「このウォーミングアップはいい試みだな、マリアンヌ嬢。意外にも考えさせられる」


 剣を鞘に納めながら、ジークフリートさんが呟く。

 最近、わたくしたちがウォーミングアップとしてやっているのは、わたくしが展開した十枚の防御魔法壁を破壊するというものだ。


 もちろん手を抜くことはない、過剰に魔力を流し込んだ流星ガードを除けば最高防御力を誇る城壁を顕現させている……のだが、なんかこう、みんなどうやって割るかじゃなくていかに最短で効率よく割るかを主眼に置いている。


「最近やっと一発で七枚割れるようになったんですよね」


 不服そうな表情で、ユイさんは自分の指先を見つめる。

 なんで満足してないんだよ。バフ薄い状態の攻撃でわたくしの防御魔法を半分以上粉砕してんだぞ。流石に満場一致でナーフだろ、どうなってんだマジで。



〇宇宙の起源 通常攻撃が防御値無視攻撃で無敵貫通攻撃の主人公は好きですか?



 嫌いです……



「じゃあ次のメニューを始めましょう!」


 ユイさんの言葉に頷いて、わたくしとリンディを除いた面々が練習場に広がる。

 わたくしはその光景を眺めながら、どこからともなく椅子を取り出して腰かけると、訓練には混ざらず、魔力構築式の調整を始めた。


「今日も例の訓練かしらね」

「目下の課題ですし、皆さんも夢中ですわね」


 水を取りに行くリンディが、隣を通り過ぎざまに複雑そうな声で告げる。

 気持ちは分かるよ。わたくしもこの訓練はやりすぎじゃねえかなってずっと不安に思ってる。


「準備できました!」

「分かった」


 散らばったユイさん、ジークフリートさん、ユートを順番に見た後、ロイが頷く。

 直後、変化は劇的だった。



「絶翔せよ、墜崩の翼──天空(テオス)の神威を振りかざそう」



 撒き散らされる神威が空間を軋ませた。

 世界そのものが啼き叫んでいるような感覚の中で、ロイが荘厳な声を響かせる。



「──雷霆下すは天空の審判(ケラウノス・ヴォイド)



 訓練場を貸し切った理由はこれだ。

 七聖使(ウルスラグナ)の権能を発動させ、それを訓練に用いるためである。

 どう考えてもやりすぎ。入隊試験で大規模侵攻のど真ん中(具体的に言うとヴィザ翁の目の前)に放り込んでるみたいなもの。


「それじゃあ、まずはユイから」


 ロイの宣言と同時、彼の姿が消える。

 彼の権能である『天空(テオス)』は、フル稼働させた際に、その裁定に関する効果ではなく純粋な出力向上を要因としての光速行動を可能とする。

 具体的に言うと、人間の身体では耐えられないような量の神秘を扱う都合上、常に体外へと過剰神秘を放出する必要があり、ロイはそれを推力に転換することでロスなく加速しているそうだ。


 全ジャンル最強キャラクター議論スレwikiの記述かな?


 というわけで光の速さで疾走し、剣を振るうロイだったが。


「フッ」


 ユイさんは斬撃を右腕の一振りで弾いた。

 勘で見切っているらしい。本当にやめてくれ。転生してから一番の絶望だよ。

 光の速さを勘で……厳密に言えば攻撃が来る個所をいくつか想定した上で、見切りというフェーズを挟み防御しているらしいが……とにかくすべてが狂っている。


「次はジークフリートさんですね」


 もう防御されてもまったく動揺しなくなっているロイが、次の標的に顔を向ける。

 大剣を構えた紅髪の騎士が頷いた直後、ロイの姿が消えて激突音が轟く。


「くっ……!」


 ジークフリートさんの剣が、ロイの斬撃を受け止めている。

 この人は勘とかじゃなくて普通に素でギリ反応しているらしい。素で!? ギリ!?

 誰かこの異常な世界から助けてくれ。手に負えないんよ。


「次はユート、君だ」

「なんかそれ死刑宣告っぽいな……」


 ジークフリートさんの隣に佇むロイが、ユートへと顔を向ける。

 直後、彼の姿が消え、遅れて地面が爆砕する。


「ちぃっ!」


 ユートは何やら色々と仕込みを入れていたらしく、スレスレで回避していた。

 さっきに比べるとロイのスピードが落ちていたので、恐らくは動線上に不可視の防壁でも張り巡らせていたのだろう。

 あくまで光速でカッ飛んでくる相手に対応する訓練なので、見切ったりできなくてもいいのだ。


 よくねえよ。

 なんで対応できてんだよ。


「…………」


 わたくしはドン引きした。

 周辺人物が概ねシャンクスだったからだ。

 今度黄猿と遭遇することがあったら、一杯奢ろう。やっぱロギアってつれえわ。まあわたくしはヒトヒトの実幻獣種モデルマリアンヌだが。


「みんなだいぶん慣れてきたんじゃないか? 最初は転がされてばかりだったし」


 権能の待機状態(アイドリング)にしたロイの言葉に、思わず叫びだしそうになる。

 光速に慣れんなよ。どういう世界?


「でもまだ攻撃の芯を外せません……」

「オレも初撃は安定して防げるが、追撃が来れば即死だろうな」


 ユイさんとジークフリートさんが苦い表情を浮かべる。

 その顔をしたいのはこっちだ。なんで対応できてんだこいつら……


「あいつらやばいよな」


 半笑いの表情でユートが近づいてくる。

 なんかお仲間みたいなことを言っているが、こいつもロイの初撃を八割ぐらいの確率で回避することに成功している。

 実戦で二割を引けば死あるのみだが、根本的に1%でも対応できる方がおかしいんだよなあ。


「アナタだってヤバい側ですが?」

「あいつらはマジで反応してるっていうか、純粋に同じ速度帯で行動してんだよ」

「……まあ、そうですわね」

「俺はマップ意識して先行入力して対応しておくぐらいしかできないんだが」

「なんて??」


 ぐらい? 何が?


「やっぱりアナタも同類では……?」

「いやいや、んなことねーよ。一瞬で来るんじゃなくて、一瞬でこのマスまで、次の一瞬でこのマスまで、って分割して考えるとまだ対応できる余地が見えてくるだろ?」


 あっこいつ比較対象がおかしいせいで自己認識がバグってるだけだ!


「リンディ助けて! あいつら全員頭おかしいですわ!」


 わたくしは泣きながらリンディの元へ駆けた。

 勢いのまま彼女の胸の中に飛び込もうとして、寸前で急ブレーキ。

 さすがにそれはやりすぎ。マジでない。


「…………」


 全員分の特製スポドリ入り水筒を抱えたリンディは、わたくしを真顔でじっと見つめた。


「あんたの責任よ」

「……はい」


 思い当たるところしかなかった。

 ですよねー。相手が光の速さで行動できるって情報を共有したのわたくしだし。

 とはいえこんなスピード感でみんなが対応策を練り始めて、実際に訓練し始めるとはまったく予想していなかったのだが。


「アンタだってどうせ対応できるようになるんじゃない?」

「なんですかその投げやりな言い草。確かに対抗策を練ってはいますが……」


 まだ計画段階というか、実戦投入するレベルには到底至っていないというか。

 苦い表情を浮かべ、わたくしは魔力で投影した魔法構築式に目をやる。

 これこっからどーしたらいいんだろうな。


「マリアンヌ嬢は何をしているんだ?」


 近寄って来たジークフリートさんが、魔法構築式を見て首をかしげる。

 ああそうか、魔法使いじゃないから意味言語が読めないんだな。


「確かに、ここ最近は訓練のウォーミングアップはやってくれてますけど、基本的には式とにらめっこしてますよね?」

「ああ。式も複雑すぎて、発音自体はできるが何を意味したものなのかさっぱり分からないような代物だ」


 ユイさんやロイも近くにやって来た。

 まあ、訓練に参加しておきながら一人だけずっとこれやってるのは、説明ぐらいしとかないと不義理か。



「ワザマエフォームの詠唱が不完全なのが分かったので、それの改良中ですわ」

『…………』



 ユイさんたちが何も言わなくなった。

 続きを促されているのかと、わたくしは魔法構築式を指さして口を開く。


「ナイトエデンの戦い方からして、恐らくワザマエフォームには相当に改良の余地があるとは分かっていました。ではどうしたらいいのか、という段階で手詰まっていたのですが……気づけばなんということはありませんでしたわね」


 ぶっちゃけ、もしかしてわたくし頭固いのか? と自分を疑ったぐらいだ。


「ワザマエフォームはあくまで、ツッパリフォームから発展したもの。であるならば、この二つのフォームを比較分析し、どのスペックが伸びているのか、どう発展しているのかを検討すれば、ここの差から逆算してワザマエフォームの到達点を導けるわけです」


 考えるべきはわたくしがどういう風に伸びていきたいのかではなく、『流星』のポテンシャルがどういう方向なら自然に伸びていけるのかだった、というわけだ。

 比較対照ぐらい最初に思いついておけよって話だよな。


「ただいざ始めて見ると中々に精査が難しく……というかこれ、正直言えば小手先の工夫なら無限にやれちゃいそうなんですわよね。宇宙概念をどこまで現実に浸食させるかとか。なのであくまでナイトエデン対策は小目標に設定して、ワザマエフォームの次、さらなる新形態の構築が大目標ですわ」


 ひとまずはワザマエフォームに対ナイトエデン権能を積むことを目指しつつ。

 その過程で得られた情報をもとに、更なる強化フォームを構築していく。

 今のわたくしがタスクとして設定しているのはこのあたりだ。


「アンタまだここから強くなるの……?」


 戦慄した様子でリンディが尋ねてくる。

 光速戦闘に対応してる連中にも言ってあげてくれ。



〇苦行むり なんかこういうの既視感あるんだよなあ

〇red moon 分かる、なんか見覚えがある

〇無敵 環境カード使いたくないって言いながらファンデッキ必死に弄ってるやつだろ

〇苦行むり それだ



「殺しますわよ!!!!!!!!」



 流星はッッ!!! ファンデッキじゃねェッッ!!!



『!?』


 突如として虚空にキレ散らかしたわたくしを見て、一同がギョッとする。

 あっヤベ、急に沸騰する危険人物になってしまうところだった。


「え……何? 今の」

「気合を入れただけですわ」

「やめた方がいいわよ」


 顔をビキバキにひきつらせたリンディがそっと注意してくれた。

 はい。すみませんでした。


「あ~……まあ、今のはいつもの発作としてだ。じゃあしばらくは訓練にはあんま参加しない感じか?」

「いいえ、ちょっと飽きてきたので何かしらやろうとは思っています」


 気を取り直すようなユートの問いかけに対して。

 わたくしは魔力構築式を名前を付けて保存した後、唇をつり上げる。


「何かしらって、何だよ?」

「それはもちろん……禁呪保有者組、猛特訓の巻! ですわ!!」


 ぺかーと流星の後光を放ちながら、わたくしは天を指さして宣言した。


「……じゃあ俺帰るわ」

「ダメですわよ?」


 何かを察知したらしいユートの腕をむんずと掴む。

 逃がすわけねえだろタコ助。陰キャのくせに逃げ足が遅いとか恥ずかしくないの?


「いや光速対応で忙しいからさあ」

「小手先の工夫しかできてないって自分で言ってませんでした? わたくしが考えている訓練、割と根本的なところから色々変えていけると思いますわよ?」

「む……そう言われちまうと、興味は沸くな」


 そもそもの問題としてだ。

 お前らはナイトエデンを倒すことを喫緊の課題としているし、そこは同意見だが、着地点は大きく違う。


 わたくしは他にも、対ユイさん、対ロイ、対ジークフリートさん、対ユート、対アーサー……とまあ際限なく対策を練らねばならない相手がいるのだ。

 光速戦闘に関してはワザマエフォームの改良でなんとかなりそうだが、光速戦闘に対応可能な連中と勝負できる土俵に上がるためには、ハッキリいって力不足もいいところ。


 は? 不足してないが?


「というわけで明日からしばらくの間、ユートはわたくしの訓練に付き合いなさい! 護衛担当のジークフリートさんも当然ついてくること!」


 あくまでみんなの戦力を底上げするための訓練であって、わたくし個人の趣味とか嗜好とかは全然関係ないんだからね! と胸を張って宣言する。


「オレは王国の騎士として……禁呪保有者の訓練に参加を指名されていいのだろうか……」

「諦めなさい。ユートの護衛担当なんかやらされてる時点でもうアウトよ」


 視界の隅で、頭を抱えるジークフリートさんをリンディがそれとなく慰めていた。

 慰めてはいねえな。息の根を止めにいってるだけだわ。


「リンディも来ます? ユイさんとロイのサポートをしていてもいいですが」


 最近はすっかり部活のマネージャーみたいになっている我が幼馴染へ声をかけると、彼女は数秒間沈黙した。


「……じゃあ、私帰るから」

「ダメに決まってんだろ」


 何かを察知したらしいリンディの腕を、ユートがむんずと掴む。

 お前ら揃いも揃って陰キャなのに逃げ足遅いな。


「はいはい分かった分かった、分かったわよ! 行けばいいんでしょう行けば!」


 ヤケクソ気味にリンディが叫び、わたくしとユートは満面の笑みを浮かべて頷く。

 最初からそれでいいんだよ。


「なんか自然にハブられてません? 私たち」

「前に行動制限用の魔法を開発した時もそうだったけど、マリアンヌって一つでも自分が対応できない技術を味方が持つと、本人を放置して特殊な訓練を始めるよね……」


 ユイさんとロイが光の抜け落ちた目でこっちを見てきている。

 怖いので見なかったことにしよう。


「んじゃあメンツが揃ったってことで、具体的にはどういう訓練を考えてるんだ?」


 集まったのはわたくし、ユート、ジークフリートさんにリンディと錚々たる顔ぶれ。

 この陣営で生半可がことができるはずもない。当然、半端ないことをする自信しかない。

 わたくしは腕を組み、両眼をキランと光らせた。



「まずは……ラーメンを作りますわ!!」



〇日本代表 なんて??

〇つっきー なんて??

〇芹沢 なんだ……オマエ、同業かよ

〇適切な蟻地獄 だからなんでラーメンハゲがいるんだよ









お読みくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 唐突なワートリネタ(´^ω^`)ワロチ
[良い点] ああそうだ、この味方がやたら強くなるの早い感じ、周囲が環境デッキなのに主人公だけファンデッキなんだ…… 広く刺さりやすいのはいいんだけど、必死に現環境のデッキ対策のカード抜き差ししないと届…
[良い点] ユイさんがリンディママの愛のチョップをノーガードで受けて涙目になってるのが良いですね。 お前それでも狂人どもに作られた人造人間か?いいぞもっと人の優しさを知れ。
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