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PART20 最果ての塔

「命は簡単に壊れるものなんだ」


 己の口から吐き出された言葉の温度に驚愕した。

 声色は凪いだ水面のようでありながら、底に押し込められた激情は対照的に烈火の如く燃え盛っていた。


「だから、大事なものなんだ」


 手の上で眠る小鳥を、庭園の片隅に掘った小さな穴へと横たえる。

 自らの魔眼によって死んだ小鳥だった。


「俺なら、やれる。この『命』を、手段として扱える。他の人にはできないことをやれる」


 ずっと脳裏に響く声。

 荘厳であり、時には他人の言葉が聞こえないほどの音量で、自分に終末を命じる声。


「世界が滅ぶべきだとか、人類は愚かだとか、そういうのは分かんないけど……」


 幼き日のアルトリウスは、自分がきっと日陰を歩くべくして生まれた存在なのだろうと、理解していたのだ。


「いつか、終わる。どうしようもなく終わる。そして俺に、終わらせるための力があるんだな」


 小鳥の小さな体躯に土をかぶせてやってから、確かめるようにつぶやいた。

 聞こえる声は、明瞭に言語化できずとも意味だけを伝えてくるその言葉は、返事をしない。仮に返事をしていたとしてもアルトリウスには理解できない。


「分かってる……そういうものなんだろ」


 ただ自分の使命を悟った少年が、その瞳に妖しげな光を浮かべて唇を噛む。


「だったら、やってやるよ。お前の言葉に従ってやるって言ってんだ。いつか世界を滅ぼすために、俺は強くなる」


 親元を離れ。

 魔眼を取引材料として、違法な人体実験を行うカルト集団に潜り込み。

 そこで魔眼の力を徹底的に研究し、引き出し、幅を広げ、深度を深め。

 最後には教団を自らの手で壊滅させ、痕跡の一切を抹消した後に、退魔機関へと入った。


 愛が欲しかった。

 愛さえあれば、もしかしたら、この声に異を唱えたかもしれない。


 だけど──どうなんだろうか。

 愛を知ったとしても、本当にやめたのだろうか。

 無条件でこの世界を維持・運営する側に回っただろうか。


 血と肉と物理現象、そして魔力や神威。

 どれもこれもアルトリウスにとっては、力学的な作用によって働く存在でしかない。

 本当の意味での神秘など存在しない。魔力を介さない物理現象と比較して、方程式が神のヴェールによって秘められているから、という言葉遊び。


 それらすべてを暴き出す眼を持った者にとって、世界は、単なるシステムに過ぎない。


 だから、自分/俺/わたくしがそのシステムを破壊するために生まれたのなら、その使命を実行すればいいだけだったのだ。




 ◇◇◇






「お前はどう思う?」

「理論としては分かるけど受け入れられませんわ」




「────それでこそだよ、ピースラウンド」






 ◇◇◇




「マリアンヌ……ねぼすけさんだな……」

「ほわあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」



 開幕ASMR!?

 目をカッと開いたわたくしだが、視界に飛び込んできたのはベッドの天蓋だった。


「んな……っ!?」


 どこだよここ。

 かぶせられていた分厚い布団を跳ねのけると、自分がいつもの地獄みてーな風景の真っただ中、異様に浮いたキングサイズのベッドに寝ていたことを知る。

 こんなふざけた芸当をしてくるのは一人……いいや、一体。一体? あいつの単位何? 柱? 魔柱みたいな。いや神様の単位であって世界一慈しい鬼退治の物語ではねえよ。


「何の用ですか、大悪魔ルシファー……!」

「マリアンヌ、お前が勝手に落ちてきただけだぞ」


 ベッドそばでゲーミングチェアに腰かけ、ライトノベルを読む大悪魔の姿がそこにあった。

 一人暮らしのオタクかよ。


「……何読んでますの? 見覚えのあるキャラデザな気がするのですが」

「ブラック・ブレットの11巻だ」

「何何何何何何何何何何何何何何何何何何何何何何何何」


 わたくしが転生した後に発売されたんか!?

 思わずベッドから飛び降りて、わたくしはルシファーの肩を掴む。


「ください!!」

「無理だぞ」

「なんで!?」

「最近はあり得た世界線の生成に凝っていてな。ブラック・ブレットが20巻まで刊行されてアニメが第4シーズンに突入した世界から取り寄せた。だが流石に架空の世界線を丸ごと運営するだけのリソースがない。おれの手元を離れた瞬間に霧散するだろう」

「じゃあこれでいいでしょう!?」


 わたくしはルシファーの両手を持ち上げ潜り込むと、やつの膝の上に身体を置いた。


「はい! 読ませてください!」

「何何何何何何何何何何何何何何何何何何何何何何何何」


 ルシファーがバグった。

 瞬間的にやつの身体がブレ、数メートル離れた地点に出現する。


「……やるな、マリアンヌ。このおれを動揺させるとは」

「中学生の情緒でよく大悪魔名乗れますわね」


 ああいや中学生レベルだからこそ世界を滅ぼす存在とか大悪魔とか名乗れるのか。

 そこはかとなく生ぬるい視線で見つめていると、居心地の悪さを感じたのか、ルシファーは文庫本を霧散させて(マジで後で読ませろよ!?)口を開く。


「とにかく、お前が勝手に深層部まで落ちてきた。相当ひどくやられたようだな」

「あ~聖なる光を最大密度で叩きこまれたっぽくて」

「言葉は正確に使え。本当にそんなものが直撃したのなら、おれのいる深層部へ落ちる前に意識が破壊されているだろう」


 なんてことはないように告げるルシファー。

 全部お見通しってわけか、相変わらずムカつく野郎だぜ。


「確かに一枚工夫したおかげで、最悪の事態は免れたようですわね。それで……」

「戻ろうと思えば戻れるぞ。治癒は完了した」


 大悪魔が指を鳴らすと、キングサイズのベッドが音もなく消失する。

 あっそれ回復エリアだったの? シティトライアルかよ。


「……そういえば。わたくしが意識を失ってるのに、アナタは顕現しなかったのですか?」


 確かこの空間と外は時間の流れが違うので、ある程度は余裕があるはずだ。

 そこで気になったことを問いかける。こいつに出てこられたらまず過ぎるなってやられた直後に思ったんだけど。

 問いを受けた大悪魔は、珍しく言葉に悩む様子を見せた。


「……厳密な説明をすると面倒だから、簡潔に言うぞ。あの魔眼使いは、先ほどの攻撃でマリアンヌに杭を打ち込んでいる。おれの顕現に制限をかけるためのものだ。解除は可能だが、完了する前に日が暮れるな」

「そんなことができるのですか?」

「ヤツの目は、おれから見ても特別(スペシャル)中の特別(スペシャル)だ。あらゆる存在に対して、あらゆる干渉を行うことができる。その根本的なギミックは、あらゆる存在を視ただけで分析・理解できるという点だ」


 なるほど、と得心がいった。

 魔眼って言う割にはあんまりにも万能だと思ったんだ。しかし根本的な能力にそういう要素があるのなら、逆説的にあらゆる干渉が行えても不思議ではない。


「あの時顔を合わせたのは失策だった。おれの顕現のメカニズムを解析したのだろう」

「え? いつ会ったんですか?」

「……野暮用でな」


 しれっと誤魔化した後、ルシファーが天を見上げる。

 業火に照らされた夜空に、流星の輝きはない。


「ともかく、今は出られない。今おれが出ると制限のかかった状態な上に、おれは最大の難敵と戦うことになる。向こうの機嫌次第では端末を数秒で破壊されかねない」

「はあ?」

「いや、なるほど。なるほどな……むしろおれへの対策は、こちらが本命か。迂闊に顕現できない状況をあらかじめ作り上げ、尚且つ杭による制限までかけておく、と」


 ルシファーは、珍しく不機嫌そうな表情をあらわに鼻を鳴らした。


「心しておけ、マリアンヌ。あの魔眼使いは、今までお前が相対してきた世界の滅びを願う連中と比べても……最も計算高く、最も冷静で、最も手ごわい相手だ」

「大悪魔に褒めていただけるとは、アルトリウスさんも本望でしょうね」


 退魔機関所属としては微妙だろうが、どうせあれも計画を進めるための隠れ蓑なんだろう。


「じゃあ行ってきますわ」


 空を見上げる。

 現実世界のわたくしの身体から、音だけは聞こえている。

 激昂したアルトリウスさんが、何故かリンディに対してブチ切れているのだ。


「友達を助けてあげなくちゃいけませんから」


 笑顔で言った。

 だがルシファーはわたくしの言葉に対して──悲し気に目を伏せ、首を横に振るのだった。




 ◇◇◇




 少女が姿を消した後で、ルシファーは顕現させた玉座に、ゆっくりと腰を下ろす。


「彼女が、そうだったのか」


 道理でな、とルシファーは自嘲するように唇をゆがめる。

 最初からあの少女だけは、ルシファーにも物怖じすることなく話しかけてきた。

 単に度胸が据わっている、良い友人なのだろうと思っていたが。


「マリアンヌ。お前の友情ですら、因果に導かれたものなのだとしたら……お前は……」


 その時。

 深層心理にすら響くほどの叫びを、現実のマリアンヌが上げる。

 



『わたくしの友達に!! 何してやがるんですかこの野郎ッッ!!!』




「はははははははははははははははははははっっ!!」


 聞いた瞬間にルシファーは爆笑した。


「ふ、ふははははは! そうだ、そうだろうなマリアンヌ。お前には関係がないのだろう」


 愉快そうに笑いながら、ルシファーは天を睨んだ。

 偽りの空の向こう側、現実世界。

 そこには既に、彼の仇敵が息を潜めて企みを巡らせている。


「直接対決にはまだ早い。それは互いに分かっているようだが──聖なる意志め。我が親愛なる令嬢の友情に割り込むと、後が怖いぞ?」




 ◇◇◇




 激突する。

 わたくしが放つ流星の弾丸が、アルトリウスさんの魔眼の効力とぶつかり合う。

 即座に無力化され、空中で霧散する星の輝き。その向こう側で、彼は薄く笑みを浮かべていた。


「思っていたより早い復帰だな。とはいえ……彼女が来るまで大人しくしてくれていればそれでよかったが」

「攻撃が当たる寸前に防護壁を張りました。本当に直撃していたら、人格とか壊れてませんでしたか? あれ」

「そんなことはないさ。半壊に留めるつもりで殴ったんだ」


 計算ミスがねえな。単なる無力化ではなく、あれはわたくしを傀儡まで落とし込むための攻撃だったわけだ。


「危なかったですわ……」

「いい反応だ。つまりピースラウンド、お前は感づいていたのか? 俺が裏切り者だと」

「いいえ。見えただけです」


 端的に告げると、アルトリウスさんが興味深そうに目を細める。

 あの時。聖属性パンチをモロに受ける寸前。

 わたくしは、アルトリウスさんに腹パンされるわたくしを見た。


「……その目。絶えず空間に干渉しているな。今まで使っていなかった伏せ札か」

「ご自慢の魔眼で暴いてみたらどうです?」


 ふふんと胸を張る。

 アルトリウスさんはわたくしを生かして使おうとした。即死は飛んでこないんだろう。

 というか今のわたくしなら、即死が飛んできても回避できるんだけどね。


「そうか。空間ではなく時空間そのものにアクセスしているのか。だが出力から見るに、3秒程度の未来予知が限界だろうな」

「………………………………………………」

「…………お前、本当に暴かれるとは思わないで挑発してないか?」

「いっ、いえ? 別に? アナタの眼が素晴らしいことは知ってますし?」

「冷や汗の量エグいな」



〇red moon え? 未来予知? そんなのいつ習得したの? っていうかこの段階で習得できるわけなくね?

〇苦行むり 原作だと周回前提のスキルポイント必要だもんな……ってことは、まさかと思うけどこれ、ミクリルアの権能を直に分割されてるんじゃ……

〇トンボハンター はああああああ!?

〇一狩り行くわよ 運営補佐プログラムを一部行使してる……ってコト!?

〇日本代表 知らん知らん知らん知らん、知りません、何!?



 なんで的中させてくんだよ!

 ていうかわたくしが新しく使う技、なんか初見で見破られてばっかりじゃない!? おかしいだろうがわたくし以外の思考力がよ!

 微妙な感じでこちらを見る一同。アルトリウスさんだけでなく、ユイさんたちまでしらっとした目を向けてくる。目を閉じて眠るように気を失っているリンディだけが救いだ。


「コホン。ただまあ、怪しいとは思っていました」

「当然だな」

「ええ。何かしらの詐欺師だろうとは……随分と大掛かりな詐欺ですわね」


 気のない拍手を送る。

 悔しいがここまでは彼の構築したルートを通らされているのだろう。

 なんとなく聞こえた会話で、三騎士が選ばれる段階からやってたっていうし。もはやわたくしの同業者(走者)なまである。うわっ……お前のチャート、長すぎ……


「やっと、俺の思い通りになる。これで俺は自由になる」


 アルトリウスさんが拳を握る。

 彼の背後で立ち上がろうとしたユイさんたちを手で制した。


「リンディを守ってください」

「でも……!」

「魔眼の効果には洗脳もあるようです。複数で挑んで、誰かが支配下に置かれるのが一番避けたいところですわ」


 1vs1じゃないと、逆に魔眼使い相手に選択肢を与えることになる。

 狙いをわたくしに絞ってくれた方が百倍やりやすい。これは相性の問題だ。

 納得したのか、ユイさんはしぶしぶといった様子で引き下がる。


「アナタって」

「ん?」

脚本家(シナリオライター)というよりはスクリプターですわね」

「……何だ? それは」


 ゲーム画面上において、キャラの動きやら表情やらを変えたり、場面を切り替えたりするのをスクリプト言語で構築する人のことだ。


「えらーい職業なんですわよ。スクリプターなくしてゲームなしです。その割には知名度が低いのですが」

「……実在の職業か?」

「アナタは知らないというだけです。やってることは立派だと褒めてるのですわよ? アナタ自身と違ってね」


 その言葉を聞いて、アルトリウスさんは唇を歪めた。


「なんだ、分かっているじゃないか。君は今から、そんな自分を認められないカスに支配され、世界の終末の片棒を担がされるわけだ」

「計算通りにいけば、でしょう。でもアナタの計算は既に狂っている」


 両足で校舎の屋上を踏みしめて。

 わたくしは天を指さした。


「何故なら、ここにわたくしがいるから」


 アルトリウス・シュテルトラインの、唯一にして最大の誤算がここにある。


「そうだ。俺の誤算は、俺が一番分かっている。君が立ち塞がる可能性を残すべきじゃなかった」

「そうです。アナタの良心でもなく、人間味でもない。単なる計算ミスの結果として、わたくしは今ここに立っています」


 だからここから先は簡単だ。


「その唯一のミス、ここで潰させてもらおう」

「わたくしはバグとしてかなり重いですわよ?」

「自分で言うことか!」


 その言葉をきっかけとして。

 アルトリウスさんが踏み込み、わたくしが魔力を循環させる。



星を纏い(rain fall)天を焦がし(sky burn)地を駆けよ(glory glow)!」

星よ廻れ(rain fall)天を焦がし(sky burn)地に満ちよ(glory glow)!】                                      



 三節詠唱を唱える。

 だが、発動しない。魔法陣すら展開されない。魔眼の効果だろう。


「禁呪だろうと三節程度ではな!」


 ワンアクション無駄にしたこちらに対して、拳を握ったアルトリウスさんが迫る。

 うるせーな! わたくしはここからなんだよ!


「六節でーす」


 裏側に張り付けた三節詠唱が起動。

 魔眼によって凍結させられたのはあくまで表側だ、三節分は通した。


「……! 二重詠唱か!」


 わたくしが得られた情報は少ない。

 だが有用性のあるものばかりだ。


 ①彼はわたくしを殺せない。彼の最終目標にとって、わたくしが必須パーツなのだろう。

 ②彼はわたくしを、聖属性の攻撃でダウンさせることで支配下に置こうとした。魔眼を使っていないのには理由があるはずだ。つまりわたくしは、魔眼への警戒度を二つほど下げていい。恐らく致命傷になる攻撃を打てないのだろう。


 要するには、多少のリスクに目をつむって押しても問題ない!

 三節詠唱の流星が両足へと充填され、撃発。流れ星の推力をもって足が跳ね上げられる。

 こめかみを狙ったハイキックを、彼は片腕でガードした。


「うわっと」

「静止しろ!」


 発動の直前、魔眼の効果範囲から転がるように退避した。

 あぶねえ。3秒後のわたくしが下半身凍結させられているのが見えたぞ。


星を纏い(rain fall)天を焦がし(sky burn)地を駆けよ(glory glow)!」

星よ廻れ(rain fall)天を焦がし(sky burn)地に満ちよ(glory glow)!】                                      


 即座に展開した魔法陣から、流星の弾丸を撃ち出しながら殴り掛かる。

 曲射角度を調整、時間差で放たれた魔力砲撃はやはり霧散する。だが拳に宿った輝きは消えていない。


「感知はできるけれど干渉できないといったところですか!」

星よ廻れ(rain fall)天を焦がし(sky burn)地に満ちよ(glory glow)!】                                      

「チィッ……! 君のそれ、どうなってるんだ!? 見えるのに止められないなんて初めてだ!」


 格闘戦を繰り広げながら、アルトリウスさんが忌々しそうに舌打ちする。


 右ストレートをかいくぐった彼が迫る/フリをして足元からの蹴り上げ。

 顎を狙って蹴り上げられたつま先を、のけぞって回避。


 装填していた三節分を起動させて撃つ/のを拳で打ち払うように防がれる。

 防御用に突き出されようとした腕を叩き落す。アルトリウスさんが驚愕に目を見開きながら、三節分の弾丸を喉から吐き出した神秘で相殺する。えっ何それ? ドラゴンブレスじゃん。


 相手の猛攻をしのぎ、そして見切った動きに合わせて攻撃を叩き込む。

 未来は見えている。最善手を考えるのに3秒間の猶予があると言っていい。だから優勢を維持するのは容易かった。


「随分と使いこなしているじゃないか」

「学習能力が自慢なんです。おかげで学業も優秀でして」

「自慢するタイミングを逃さないな本当に」


 わたくしの視界では、アルトリウスさんの動きは常にブレて見えている。

 今この瞬間の彼と、3秒後の彼とがダブって見えるのだ。

 だから向こうの次の手が全部分かる。それに順次対応していくだけでいい。



〇みろっく いい勝負、になってるんだよな?

〇火星 おかしいおかしいおかしい! アルトリウスの魔眼、これ何!? どうなってる!?

〇宇宙の起源 明らかに原作の比じゃないな、

〇つっきー 新規表情差分じゃん。アルトリウス担の知り合いに送っておこ



 わたくしの顔の横でぶわっと流れていくコメント欄。

 言いぐさからして見えているのだろう、アルトリウスさんがそちらに目をやって、辟易したような表情を浮かべる。


「うるさい連中だな。何を言っているんだ?」

「アナタのファンがいるらしいですわよ」


 事実を告げると、彼は心底嫌そうに顔をゆがめた。


「……本当にそうなら、もう少し俺を真剣に愛してもらいたかったものだな。神の加護など感じたことがない」

「あら、仮にも退魔機関にいた方とは思えない発言ですわね」

「悪魔を祓うために必要なのは、やつらの存在とは波長を逆にする出力で、やつらの身体を砕く技術だけだ。信仰は関係ない」


 わたくしはちらっとユイさんを見た。次期聖女は首をブンブンと横に振っている。


「違います! その人がたまたまそれでうまくいっているだけで、正しいやり方ではありません!」

「だ、そうですが」


 権威性からしてユイさんの方が圧倒的に上だしわたくしの勝ちでいいか?

 そう思いながら顔をアルトリウスさんに向けて、背筋が凍った。


「──そうだ。その通りだよ」


 彼は嗤っていた。

 今にも破れてしまいそうなボロボロの笑顔なのに、目の光は一段と輝きを増していた。


「正しいやり方じゃない。俺は一度たりとも、生きていて、正しいやり方で何かを成し遂げたことなんてない」

「……羨ましいですか?」

「ああ、そうだ! 俺の方が効率がよく、結果がよいとしても! それでも正しさの方が尊いに決まっている、そんなことは分かっているんだよ!」


 直後、アルトリウスさんが加速する/のは見えていた。

 拳を大地に叩きつけてわたくしめがけて神秘の波濤を浴びせる/真横に転がりどいたわたくしに、先んじて待ち構えていた彼の拳が迫る。


 なるほど一発目は釣りか。

 わたくしは正面から迫る波濤を、思い切り地面を踏み砕いて、同様に流星の輝きをぶちまけて防いだ。

 神聖さしか取り柄のないカスみたいな光に、わたくしの流星の輝きが劣るはずもない。一方的に相手の攻撃が打ち消される。



「見えてるならそうするだろうな」



 直後。

 流星の光を、クロスさせた両腕で顔をかばいながら突き破り、アルトリウスさんがゼロ距離に踏み込んできた。


「な……!」


 未来が切り替わった!? いや違う……もしかしてこの3秒後の未来、確定した因果だけ映してくれるわけじゃないのか!? いやそうだよなだって見たわたくしが別の行動取れるわけだし!



〇第三の性別 なんで未来視能力込みで読み負けてんだこいつ……



【こいつ! わたくしが3秒後の未来を見ているのを逆手にとってきやがりましたわ!】



〇みろっく できんの? そんなこと

〇鷲アンチ あ~……因果律まで見れてない、ってところなんじゃないのかなこれ

〇火星 単純にシークバー動かしてるだけなんだけど、世界は動画みたいに収録され切ったものじゃなくてあくまで生配信だから、3秒後の未来を視てつけたコメントを見て、配信者が違う発言をした……みたいな感じだな



 大慌てで迎撃しようとするわたくしの左腕がビキリと止まる。

 しまった! 魔眼を切られた!


「ピースラウンド! ここで!」

「たかが片腕ぐらいでッ!」


 昏倒させられた時より出力を増した拳が迫る。

 聖なる光如きに負けられねえんだよ! 


浄焔装填(セカンド・トリガー)!」

裁きの極光を(vengeance)今ここに(is mine)!」


 弾幕用に展開していた出力を全て右の拳に集約させる。

 殴り合いの距離。一発もらったら終わりの聖属性パンチをかいくぐりながらなんとか糸口を探す。

 だけど……追いつけない! 根本のスピード感が違うのか!?


濁濤装填(サード・トリガー)──砕け散れッ!」


 アルトリウスさんが大きく腕を振りかぶった。

 腕を覆うように現れた歪んだ焔が、瞬時に凝縮され、そして拡散する。


「全員防御!!」


 ユイさんたちが巻き込まれる!

 とっさに叫ぶと、みんなの前に飛び出したジークフリートさんが加護を全開に、剣の腹で焔の余波を受け止めてくれた。


 大技の隙を狙うことも許されない。来ると分かっていたのだが、対応策が出てこない。全方位にバラまくぞちなみに隙はありませんって3秒後の未来に宣言されてしまった。


「ぐう……ッ!」


 ちなみにわたくしはモロに直撃した。

 気が遠くなる。ノー溜めで範囲攻撃はダメだろ。ナーフだナーフ。

 倒れ伏す寸前に、ギリギリで膝をつく。

 視界が揺れる。聖属性の光──悪魔とは波長を逆にする出力、と言っていたか。ルシファー、今だけわたくしの中から出ていってくんねえかなあ。


 え? 全然勝てるビジョン見えねーんだけど。


 もしかして負けイベなの?



【……これ勝てると思います?】



〇苦行むり ……これヤバくないか?

〇第三の性別 さっきの言い方からしてリンディだけ避難させればなんとかなるはず!

〇日本代表 いや……これ……オーロラ出てるってことは、時空のひずみがあって、終焉をって……あ!? え!? リンディそういうこと!? ちょっと待ってマジでそれはヤバい待ってヤバい!!

〇無敵 あ!?!?!?!? これエンディング呼び出しバグやられそうになってんのか!?!?!?!

〇日本代表 なんでこんな完璧に条件揃ってんだ!? ええ!? ちょっ待っお嬢今すぐ



「邪魔だ」


 表示されていたコメント欄を、アルトリウスさんが乱暴に踏み砕いた。

 彼を見上げて何か言おうとして、言葉が出ない。

 ドッと体温が抜け落ちていく感覚。まずい、さっきのサード・トリガーで残ってた体力ほぼ持ってかれた。


「あっ……う、ぐ」

「大人しくなってくれたな。だが、こんなに骨が折れるとは……演算能力の低下に目をつむってでも、君を完全な支配下に置いた方がよさそうだ」


 ぱっぱっと手を振って、アルトリウスさんがしゃがみこむ。


「今ばかりは天地を逆さにさせてもらう。俺は地の果てに輝く石ころ(ほし)で、君は空の底を這う(石ころ)に過ぎない」


 飛び出そうとするユイさんたちより早い。わたくしと彼の視線が重なる。


「我に従え」








 こいつ今なんつった?








 ◇◇◇




「マリアンヌさん!?」


 彼女の指示に従い、リンディをかばう形で戦闘の余波に耐えていたユイたち。

 だが今や、マリアンヌには魔眼の効力が発動している。


「……三騎士の方は、大隊長殿を連れて退避してもらえますか」

「冗談じゃねえぞ小童(ワッパ)。ここまで舐められたのは人生初だ、黙って引き下がれるかよ」


 ユイの隣まで出るロイや、息をまく三騎士も、いずれも満身創痍。

 はっきりってユイとジークフリート以外は戦力にカウントできない有様。

 それもまた、終焉へと手を伸ばす青年の計算の結果だ。

 そして。


「さて────そっちの二人が残りそうなのは分かっていた」

『!!』


 そこでユイとジークフリートは、以前彼と遭遇した時のことを思い出す。


「いいよ。俺と、ピースラウンド相手に戦うといい。だがあの時送った祝福は、この時のためでもある」

「貴様……! やはりあれは精神操作系統の!」

「俺は嘘は言っていない。祝福だと言ったろ? もっとも、俺にとってのものだが」


 せせら笑うアルトリウスは、脱力したマリアンヌの身体を抱きかかえそっと起き上がらせる。


「あまり、そんな血濡れの手で彼女に触ってほしくないですね」

「怖いな、婚約者君。だが自分の非力さを怒りに転換してほしくない。君が三騎士如き相手に死力を尽くし、この決戦の場で何の役にも立たないのは、君の責任だ」


 ロイの頭の奥がカッと白熱する。

 屈辱のあまり唇を噛みちぎりそうになった。


「まあそういうわけだ。大人しく、そちらの少女を引き渡してもらえば……」


 そこでアルトリウスは言葉を切った。

 眉根を寄せ、訝し気に己の腕の中へ視線を落とす。




 砂にまみれたマリアンヌの白い指先が、アルトリウスの胸先に突きつけられていた。




堕ちろ(ばん)

「ッ!?!?」



 ゼロ距離での砲撃を受けて、アルトリウスは吹き飛ばされた。

 ごろごろと屋上の床に転がされる彼を見つめながら、宵髪の令嬢が、静かに立ち上がる。


「さっき……なんて言いました?」

「何をしているんだ!? 効果は、通った! 今だって君は、確かに俺の完全な制御下にあるぞ!? え!? なんで命令を受諾した上で全然別の行動してんだ!? あれぇっ!?」

「さっき、なんて言ったか、って聞いてるんです」


 目を白黒させながら、アルトリウスは恐る恐る口を開く。


「わ、我に従え、だったと思う。あ、言い方キツ過ぎた?」

「その前です」

「覚えてない……」


 マリアンヌはユイに振り返った。


「え、え~っと……『今ばかりは天地を逆さにさせてもらう。俺は地の果てに輝く石ころ(ほし)で、君は空の底を這う(石ころ)に過ぎない』……だったと思います」


 その言葉を聞いて。

 マリアンヌはキッとまなじりをつり上げた。



「ハァ~~~~~~~~~~!? ブチ殺しますわ!!」

「なんで!?」



 よくわからないところにキレられ、アルトリウスは悲鳴を上げた。


「断じて違います! この馬鹿!」

「ばっ……馬鹿!? 計画通りに君たちを操った俺に対して馬鹿って言ったのか!?」

「言いました! アナタは何も分かっていない!」


 その瞳に輝きを宿し、マリアンヌは自分の胸を叩く。


「アナタは燃え尽きることも許されず、どこにも行けない哀れな星の王子様! ですがわたくしは、燃え尽きるまでなら、どこにでも行ける流れ星!」


 マリアンヌ・ピースラウンドと、アルトリウス・シュテルトライン。

 ずっと星を追って走り続ける者。

 ずっと星に導かれて走らされ続けてきた者。

 両者は明確に同じだったし、明確に違っていた。


「クソッ、もう人格の完全破壊しかないのか!? 自我が強すぎるだろこの女!」


 悪態をつきながら身体を起こすアルトリウス。

 そして改めて正面から、マリアンヌを見据えて。



 その背中を起点とした、空間そのものに広がるヒビを見て、言葉を失った。



「……待て。ピースラウンド、何をしているんだ」



 空間に走る亀裂は、漆黒のライン。

 ジグザグに広がっていくそれは、彼女の背に生えた翼のようだった。



 全員が。

 ロイやユート、ジークフリート、三騎士にゴルドリーフ。

 そしてアルトリウスですら、その有様にただ一つの感情を抱いた。



 怖い。

 恐ろしい。

 今、自分たちを最大限に脅かす何かが、起きている。



 各人が生まれ持った生存本能。

 アルトリウスですら幼少期に存在し、自らの意思でねじ伏せた意思。

 即ち、世界を正常な形で運営し、維持していこうという、生物が持つ生存への欲求。



 その領域が叫んでいる。

 今、マリアンヌ・ピースラウンドという存在は羽化しようとしている。




 その先にたどり着くのは──まさしく、世界を滅ぼす悪性権能に他ならない。




「……そう、だ」


 一番最初に立ち直ったのは、皮肉なことにこの場で唯一の敵であるアルトリウスだった。


「そうだ、それでいいんだよ、ピースラウンド」


 笑みを深めるアルトリウス。

 世界そのものにヒビを入れていくマリアンヌの姿こそ、彼が求めていたものだった。



「始点にも終点にも手が届く、お前という特異点。だからこそ必要だった」



 ヒビが広がる。



「世界の始まりに存在する十二、いや隠されたものを含めれば十三の至高の座。そこに至るためには、後付けの『七聖使』ではなくお前という禁呪保有者が必要だった」



 視界いっぱいを埋め尽くすように、空までも届く亀裂が広がり、そして。


 最後には砕け散り、向こう側へとつながる。



 ヒビの向こう側から、それは現れた。



 銀河を無理に変形させた身体に、星々をちりばめた鎧を纏いし異形共。


 こちら側へ踏み込まれた途端、世界が過負荷に耐え切れず自壊し始めるであろう、姿を現してはならない存在。


 ヒビの向こう側に存する彼らは──原初の十三領域を司るモノたち。



「はははははははははははははははははははっっ!!」


 アルトリウスは喉を枯らして笑った。


「最高だ、最高だよお前は!! 予想以上だ……!」


 やはり、アルトリウスの予想は正しかった。

 こんなものたちのいる領域へアクセスしているのだ。どれほどの負担か。どれほどの規模か。どれほどの──演算能力が必要か。


「まさに宇宙といったところだな、ええ!? 最高だ、宇宙を演算できるのなら、それより上はない! お前だ、お前こそが終焉へ至る道筋を計算し、顕現させる装置としてオンリーワンの性能を誇っている!」


 むしろアルトリウスにとっては、暴走じみたこの現象は僥倖だった。

 今のマリアンヌは、無自覚に回し続けていた計算を表に出している状態。

 ならば自分が何かせずとも、演算装置として最高の働きをしてくれる。


 事実だった。

 言葉こそ吐き出せれど、マリアンヌは自覚的に計算できていない。

 今、ただアルトリウスからデータを入力されれば、結果を吐き出していただろう。



 だけど。


 アルトリウスの最大の誤算は、マリアンヌが立ちはだかったことではない。


 もっと単純な話。



 すべてをひっくり返せる存在は、彼の視界の外にいる。



 原初の演算装置が行く先を委ねる、唯一無二の存在が。



「マリアンヌさん!!」



 髪を振り乱して叫んだ。

 彼女だけがずっと、怯えることなく、その姿を見つめていた。

 アルトリウスが何かするよりも、その少女の言葉が届く方が早い。






「もっと輝いて!!」






 一同がギョッとした。

 ユイの言葉を聞いて、マリアンヌは顔を上げる。



「────」



 フッ、と。

 彼女の唇が笑みを浮かべた。






 ◇◇◇






 無理に決まってんだろ馬鹿か。もう最大限輝いとるがな。

 何言ってんだ? マジで。ここからもっと頑張んないとだめなの?


 しょ~じきマジでしんどい。

 店じまいもいいところだ。

 これ以上を要求してくるやつはマジでアホ。ふざけんな。クライアントの言うこと全部聞くと思ってんじゃねーぞ!!



 ……だけど。



 他の誰かだったらシカトしたかもしんねーけど。



 あの子が。

 ユイ・タガハラが輝けって言うのなら。



 だったら──逃げることはできない。諦めることも、何より負けることもできない。


 アナタの手で断罪されるまで、わたくしは誰が相手でも負けない、そう誓ったから。



 だから。



 わたくしは奇妙な浮遊感の中にいた。

 自分が自分ではないような感覚だった。

 現実に帰るぞクソが! シンジ君の後に続くんだよ!!


「これ、は……」


 拳を握る。頭の中をすごい勢いで血が巡っているのが分かる。

 気を抜くと鼻血が出そうだ。いやもう鼻血ぐらいいい!


 何故なら!



「これは!! わたくしのものです!!」

「…………は?」



 背後になんかいる連中もそうだそうだと言っている。

 つーかお前ら誰だよ。いきなり現れて好き勝手カッコつけてんじゃねーぞ。


「十三領域、じゃ、ない……? 何、だ? 待て、違うのだとしたら、それは何だ!? 系統の振り分けは副産物に過ぎず、世界の原初に存在する十三領域にアクセスするのが、君のフォームチェンジの本質のはずだ! いいや何でもいい、いったん止まれ!」


 ハッとしたアルトリウスさんが、慌てて魔眼を発動させて止めようとする。

 だがそれより早く、後ろにいる連中のうち一体がその魔眼の力を叩き潰した。

 えっつっよ!! 何その力?

 ちらりと後ろを振り向くと、宇宙がヒトガタになったみたいなデザインの一体が、ぐっと親指を立てていた。

 え……あ、ありがとうございます?


「何なんだそれはッ!? それは、世界を運営するために生み出されたはずの……」

「ただ使命を実行するためだけに生まれた存在なんてこの世界にありませんわよ!」

「────────」



 吹き荒れる魔力に髪をはためかせながら、わたくしは天を指さし叫ぶ!



「わたくしは、流れ星にして、宇宙そのもの!」

「なんて??」



 流れ星でもあり、その流星が光る宇宙でもある。

 全ッ然矛盾してないね! Q! E! D! というわけで詠唱開始ィ!




 ──星の煌きを纏い(rain all)偽天を焼き焦がし(sky done)大地を芽吹で満たそう(glory true)



 さっきやれた、宇宙の展開。あれで感覚はおおよそつかめた。

 あとはわたくしの、覚悟と技量の問題。つまりは無問題だ!



 ──宣せよ(shouting)暴け(exposing)照らせ(shining)光来せよ(coming)



 自分の中に宇宙を仮定する、なんていう曖昧な言い方は今日でおしまい。

 今日この日をもって、わたくしとわたくしの力は、新生する。



 ──正義(justice)純白(white)執行(execution)聖母(Panagia)



 アルトリウスさんが魔眼を潰され、踏み込もうとすると宇宙人間連中の砲撃に阻まれる。

 今ちらっと見えたのサジタリウスの砲撃だったな。なるほど日頃力を貸してくれてるのか……あざーす。



 ──悪行は砕け(sin break)た塵へと(down)秩序はある(judgement)べき姿へと(goes down)



 ゴルドリーフさんとの戦いで学んだ。

 宇宙は、ああやって広げればいい。


 あの時のように一定のフィールドで維持するのもいいけれど。

 今戦うために必要なのは、更なる圧縮!




 ──さだめの極光は(vengeance)唯ここに(is mine)




 詠唱改変完了。

 背後の裂け目が閉じていき、元の黒いヒビへ戻り、それもわたくしの体内へと引き戻される。

 展開された宇宙が、体内で正常な運営を開始する。



「これは、ツッパリフォームを超えた新たなる形態」



 絶句するアルトリウスさんの前で、二本の足で地面を踏みしめる。




「マリアンヌ・ピースラウンド──ワザマエフォーム!!」




 ブレザーをはためかせ、輝きが収束する。

 密度を増した輝きが髪を伝い、光の線となって伸びていく。



「またの名を────」



 銀河の輝きを込めた拳を突き上げ。

 わたくしは腰を入れて爆裂最高に見得を切る!








「────超悪役令嬢マリアンヌ・ピースラウンド(ツヴァイ)ッッ!! ですわッ!!」








「なんて??」「なんて??」「なんて??」

「なんて??」「なんて??」「なんて??」

「なんて??」「なんて??」「なんて??」

「なんて??」「なんて??」「なんて??」

「なんて??」「なんて??」「なんて??」

「なんて??」「なんて??」「なんて??」




〇一狩り行くわよ なんて??

〇火星 なんて??

〇遠矢あてお なんて??

〇つっきー なんて??

〇苦行むり なんて??

〇外から来ました なんて??

〇無敵 なんて??

〇日本代表 なんて??




 学校全体に響き渡った声に。

 ロイたちだけでなく、生徒みんなが応援を返してくれた。

 みんなありがとう! 


「…………なんて???」


 アルトリウスさんに至ってはぽかんと口をあけっぱなしにしている。


「アナタを倒すのは、このわたくしです!」

「……!! チィッ……!」


 アルトリウスさんの両眼が蒼く輝いた瞬間、わたくしの両腕へ何かしらの干渉を感じた。

 多分石化系の効果だろう。しかし甘いな!



「ライフで受けますわ!」



 無視! そのままアルトリウスさんに突っ込む。


「は?」

「でりゃああ────っ!!」


 思いっきり引き絞った右の拳を、そのまま彼の鼻っ面に叩きつける。

 派手な破砕音が響き、彼は吹っ飛んで校舎の落下防止用柵に激突。あまりの勢いに柵だけが宙へと吹っ飛んでいった。


「う、うぐお……っ!?」


 顔を押さえて立ち上がる彼に対して、わたくしは唇をつり上げる。


「さあ、終焉バトルですわ!」

「…………ぇ?」


 天を指さし、新たなる力を手に入れたわたくしは高らかに謳う。




「アナタの終焉エンドとわたくしの終焉(ついほう)エンド、どちらが強いか勝負しましょう! 当然──拳でッッ!!」




 筋書なんぞ知らねえ! こっからはわたくしの単独公演だッ!






 ◇◇◇






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【これがツヴァイ】TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA CHAPTER4【ちゃんですか】

『9,332,912 柱が視聴中』


【配信中です。】


上位チャット▼

〇一狩り行くわよ 何!? 何!? 何!? 何!? 何!? 何!? 何!?

〇遠矢あてお   おいこれどうなってんの!? 説明しろよお前ら常連だろ!?

〇火星      全然分からん!! 何これ!?

〇つっきー    自分で自分をナンバリングするな

〇第三の性別   ツッパリフォームより、確実に悪質になっているのは分かる

〇木の根     Ⅱは基本的に名作

〇火星      十三領域って呼ばれてるの、もしかしてこの世界を構成するために俺たちが貸し出した権能か……?

〇外から来ました ん!? それは七聖使じゃないの!?

〇つっきー    ……違う。十三領域は私たち側から出てる力じゃない。つまり……

〇宇宙の起源   つ、つまり……?

〇つっきー    分からん……!

〇トンボハンター もう黙ってろ

〇みろっく    こっちから出てないってことはお嬢が出してる力じゃないの?

〇つっきー    んなんわけねーーだろーーーーがよお!!人間の形維持できねえよそんなの!!ていうかこっち側に格が上がってきたのかと思ったけど反応が計測できなくなってんなあこれ!マジで何!?

〇無敵      どっちかっていうとクソコテモードだな

〇日本代表    そうだ これは夢なんだ 私は今夢を見ているんだ 目が覚めた時、このチャンネルは私の管轄じゃなくて 立派な走者が壁抜きとかを駆使して スコア更新にみんなで喝采を上げているんだ

〇つっきー    起きろ

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― 新着の感想 ―
[一言] アルトリウスさんはゲーム内からメタ的にソースコードを認識干渉してるイメージで納得できるけどマリアンヌのそれは何???
[良い点] ここにきて今更RTA要素くる?!
[良い点] なんて? なんて? なんて? [一言] エンディングムービー呼び出しvsチートプログラムをゲーム内入力でコードぶちこみ で前者が敵後者が味方のRTAある??
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