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PART6 スレッジハンマー・グロリフィケイション

 世界なんて壊れてしまえと、本気で願った。

 婚約者の骸を抱きかかえ、枯れることのない涙を流しながら、少女は宝石のように輝いていた真紅眼を濁らせ、心の底からすべてを憎悪した。

 加護なんて要らない。未来なんて要らない。

 無辜の人々を破滅させようとも、すべてを破壊し、混沌に陥れ、この惑星を悪夢で覆い尽くしてしまえばいいと思った。

 だから、そんなことを考える少女は、もう悪役令嬢ではなくなっていたのだ。








 時下りの龍、ミクリルア。

 リンディの語った情報によれば、今わたくしたちと敵対する組織が支配下に置いているであろう、時を巻き戻す権能を持った龍ゼルドルガと対になる存在だ。

 つまり超絶強い上位存在なのだが。


『う、うまい……この黒色の液体はいったい何だ!?』

「醤油の失敗作ですわね。それ直接飲んでたら成人病になりますわよアナタ……」


 そいつは今、我がピースラウンド家キッチンで醤油の出来損ないを小皿でぺろぺろ舐めていた。

 醤油舐めドラゴン、神聖な存在というよりかは嫌な妖怪だな。



〇外から来ました ミクリルア、見る影もねえな……

〇日本代表 サイズがマジで15000分の1ぐらいになってますね……



 えっ? 今大体20センチぐらいだから、こいつ本当は全長3キロメートルぐらいあんの? 天空要塞ダモクレスかよ。


『こんなに食いもんがたくさんあるとは、嬢ちゃんは料理人か? 儂の知らないものばかりだしな』

「まあ知らなくて当然だとは思いますわ」


 基本的にはわたくししか生活していない屋敷なので、広々としたキッチンは、わたくしが記憶を頼りに前世の料理や調味料を再現する実験ラボと化している。

 醤油っぽいものを何パターンも作っているが完成度はゴミと言うほかない。

 マヨネーズは、まあ作れはしたんだけど、卵が高くて全然ペイできないのでやめた。こういうところはもっとハードル下げてほしい。せっかくの異世界なんだからさあ。


「……で、その、お話を伺いたいのですが」

『む、ちっと待ってくれ』


 ミクリルアは翼をはためかせると、小皿を離れ、傍に置いてあったナプキンにぐりぐりと頭を押し付けた。どうやら醤油をふき取っているらしい。

 可愛い光景だな。15秒ぐらいの動画でTwitterに上げたらバズりそう。


『待たせたな。で、嬢ちゃんはどこまで知ってる? 儂とゼルドルガのことは? 現状は? どこから話すべきかを確認したい』

「助かります。どっかの大悪魔とは大違いですわね」


 わたくしは瞬時に、脳内で把握しているデータを確認する。


「アナタがた……ミクリルアさんとゼルドルガさんは、世界の運営する神々を補佐するためのプログラムであること」

『っ!? そ、それを知ってるのは一番の想定外だぜ!? ちょっくら驚かせてやろうと思ってたんだが!?』

「なんかすみません……本人? 本神? たちから聞いてまして」

『あー、なるほど。嬢ちゃんは巫女の権能まで持ってるのか』

「…………ま、まあそんな感じですわ」


 話がややこしくなりそうな気配を感じたので、転生云々はカットすることにした。


「そしてこの世界において、アナタがたは時の流れを司る龍として、一部地域の神話に名を遺しています。なんでも生き物が若く生まれ、老いて死ぬのは、時間の流れを決める儀式でアナタが勝利したからだと」

『ほお。そういう風に伝わってるんだな』

「実情は違う、と?」


 ミクリルアは小さく頷く。


『儀式なんかじゃねえよ。ゼルドルガは本気で世界を乗っ取ろうとしたし、儂はそれを止めるためヤツと本気で殺し合った』

「はあ?」



〇第三の性別 はあ!?

〇苦行むり ちょっ待って待って待って待って



 聞いた話と全然違うじゃん。

 ていうかあくまで神話として残しただけで、本来は、世界の運営を補佐するプログラム、だったんじゃないのかよ。



〇無敵 運用補佐プログラムが独立稼働してる!? ああそうか俺たちと違ってまだ本体込みで権能が生きてるから……!?

〇日本代表 いや分かる、スタンドアローンしてるとこまでは分かるけど、なんでゼルドルガが世界支配なんてやりたがるんだよ!?



「時を戻す龍、時上りのゼルドルガ──彼だか彼女だか知りませんが、なぜそのような凶行に?」

『あいつは儂と同じ雄だぜ。んでまあ狙いは単純だ』


 キッチンのテーブルに降り立ち、翼を休めながらミクリルアは言う。


『儂と違って、あいつはやろうと思えば創世神の立場になれる。実情としちゃいろんな神様方が協力して一つの世界を創り上げてるらしいが……要素はそのままで、スタート地点まで巻き戻して、自分が見守ってあげますよってツラをしとけば、そりゃ誰だってそいつが唯一神だと思うだろ?』


 ああ、成程な。

 そういうことのできる存在だというのなら、わたくしの推測はいよいよ裏付けられる。


「奴ら――わたくしが追っている、軍神(イクサ)の覚醒者並びに神殿残党たちは、ゼルドルガを利用して、世界を始点まで巻き戻し自分が支配者として統治しようとしている。これがわたくしの予測です」

『ハッ、大正解だぜ嬢ちゃん。いつの時代になっても、同じようなことを考える連中はいるもんだぜ、まったく』


 大筋は理解できた。今回の騒乱、相手の思惑がほとんど読めないという深刻なディスアドバンテージを抱えていたが、ミクリルアのおかげでほとんど明かされつつある。

 唯一気になる点があるとすれば。


「競合しますわね」

『ん?』

「いえ……唯一神になるというのが、ゼルドルガの目的だった。しかし、わたくしが追っている軍神もまた同様の目的だということなら、そこ同士で何故、手を取り合えるのでしょう。いや、もしかして手を取り合ってはいない?」


 話しながらふと思い至った可能性。それを口にすると、ミクリルアが目をしばたかせる。


『ああ、すまん、伝え損ねてたか。えーっとだな、結論としては手は組んでねえ』

「っ……やはりそうですか」


 コメント欄の情報によれば、軍神はゼルドルガを完全に取り込むことこそできないが、弱体化させたなら権能を支配下に置くことは可能だろうと言っていた。


『経緯はこうだ。奴らは未覚醒状態の儂らを、ある程度強力に拘束した状態で半覚醒状態にまで目覚めさせた。それから権能を行使するために、いろんな実験をしてきたんだ』

「アナタも神殿残党の管理下に置かれていたと?」

『ああ。もっとも、あのいけ好かない野郎……軍神って野郎だよな。儂が聞いてる限りじゃ不沈卿と呼ばれていたが、奴はゼルドルガの権能を使って、何度も時を巻き戻した。そのたびに儂は相反する権能をぶつけ、巻き戻しの規模を最小限に削り続けた』


 なるほど、ここまで消耗したのはそれか。

 いや普通にめっちゃデカイ仕事やってくれてるな! え? 下手したらこの龍いなかったら、何にも気づけないまま詰まされてたのか?


「……ありがとうございます」

『気にすんな。儂は儂の願いに基づいて行動を起こしてただけだ。最終的にはここまで弱体化されて、ほとんど奴らの為すがままになっちまった。おそらく狙い通りさ。儂とゼルドルガを何度もぶつけ合い、どちらも弱らせたかったんだろう』


 悔しさをにじませるミクリルア。

 彼から得られた情報は多い。多すぎる。


『あいつ……ゼルドルガは、今もうほとんど自我を失っている状態だ。たとえかつて過ちを犯した存在だとしても、いくらなんでもあんまりだ。儂はあいつを助けたい』

「ええ。戦いましょう。戦って、奴らの野望を阻止しなければ」


 この世界に悪はいくつもいらない。

 ルシファーでさえ不要だ。わたくしが唯一無二でいい。

 主人公パーティに打倒されるという栄誉を、ぽっと出のシャバ僧に譲ってやるなんてはらわたが煮えくり返る。


『……だが、今の儂はこのありさまだ。到底戦力になれるとは思えねえ』

「まあ、随分とかわいらしい姿ですものね」

『存在の格自体は落ちちゃいない……というかまあ、落ちようがないだけなんだがな。これじゃあハリボテと変わらん』


 見ててかわいそうになるぐらいしょげている。

 慰めた方がいいのかな……とか考えているときだった。


「あっ」

『?』


 格は落ちてないって言ったな。

 へえ、なるほど。

 思考がギュインギュインと高速で回転する。プランが構築され、ノイズを排除し、結果までの最適なルートを模索する。


「アナタ」

『どうした。やっぱり眠いんじゃないのか?』

「使えますわね」

『……は?』








 それから数日後――ハインツァラトゥス王国領内、旧神殿跡地付近。


「強力な上位存在の気配があるだと?」

「ああ。もしかしたら、空白になっているのをいいことに、神秘の残滓を利用して降りてきたのかもしれない」


 ヤハト率いる神殿残党は、かつて自分たちが根城としていた神殿を遠方から監視していた。

 ハインツァラトゥスの機械化兵たちが見張っているのは把握していた。だからこそ、次の一手を模索していたのだが。


「ううむ……我々を釣ろうとしているな。これは罠だろう。分かりやすすぎる」

「挑発も兼ねていると考えられますな。ここで出ていけば、一網打尽とされるでしょう」


 ヤハトを代表とする幹部たちは、対応を協議する。

 一方の不沈卿は、腕を組んで黙り込んでいた。


(……解せない。気づいてないフリをしても良かったはずだ。何を考えてこの手を打った? 向こうの指揮官は何を狙っている?)


 あまりにぶしつけな行動だった。

 こちらの最終目標地点が読まれているだけでも予定外だが、それならそれで待ち伏せを続けていればよかった。

 こうも分かりやすく動かれては、かえって行動を抑制する。ただ逃げ続けるだけを選ぶ。そうしてまた、なんとか神秘をため込み、巻き戻しを行ってまた次の周回に賭けることになる。


『あー、あー。マイクテスマイクテス。ジークフリートさん、拡張音声はちゃんと響いていますか?』


 その時、ヤハトや軍神たちが潜む場所まで響くほどの大きな声が、辺りの空気を震わせた。


『マリアンヌ嬢、マイクテスとはどういう意味だ?』

『どうかお気になさらず。えー聞こえているでしょうか、軍神(イクサ)の覚醒者こと不沈卿殿、並びにヤハト殿率いる神殿残党の方々』


 名を呼ばれ、顔を上げる。

 聞き覚えのある声だった。この声の主に、何度も辛酸をなめさせられてきた。完璧に整えたはずの布陣を、彼女の暴力的な覚醒によって食い破られてきた。戦略を戦術によって凌駕されるなど、奥歯が砕けるほどの屈辱だった。

 思わず立ち上がり、不沈卿は神殿の跡地へと目を凝らす。強化した視力が、周囲を見渡しながら、魔法によって声量を拡張し喋っている少女の姿を捉える。


『御覧の通り、アナタがたが必要とする場所は既に制圧済み。尻尾を巻いて逃げるなら今のうちです』


 挑発する少女に、周囲の騎士や戦士たちが訝し気なまなざしを向けている。

 本当に逃げられたらどうするつもりなのか、と懸念しているのだ。

 事実不沈卿も、この状況においては逃げ以外ありえないと踏んだ。にもかかわらず悪寒が止まらない。


『ですが今逃げたら、死ぬまで後悔しますわよ。特に不沈卿。アナタなら意味が分かるはずです』


 そして、彼の予感は最悪の形で的中する。



『アナタは、わたくしと同じ力を持っているのですから!』



 数多の激戦を潜り抜けてきた彼の思考が、そのセリフを聞いて最大音量で警鐘を鳴らした。


(まさか)


 その可能性に思い至り、ぞわりと全身を悪寒が駆け抜ける。


「どうする、不沈卿。私もやはり、罠だと思う。一度撤退し距離を取り……いや。もう今回も諦めて、一か月分の神秘をなんとか補填し、次は即座に襲撃が来ることを前提にもう一度やってもらうしか……」


 敗北宣言に近い言葉だった。幹部陣の消沈した表情も、打つ手がないことを意味している。

 だが不沈卿だけが、その『次』すら危ういことに気づいていた。

 ヤハトの問いかけに、不沈卿は唇を震わせながら、声を絞り出す。


「相当に強力な上位存在……ミクリルアではないのか?」

「え?」

「私と同じ力。ゼルドルガを取り込むとはいかずとも、支配下に置ける権能だ。我々の手で徹底的に弱体化させ、復活は不可能なように厳重に権能を封印した。しかし……」


 そこで言葉を切り、不沈卿はぐっと腹に力をこめ、最悪の予測を口にする。


「彼女が私と同様、権能を制御下に置き、自在に扱えるようにできるのだとしたら……神殿の土地を使い、ミクリルアの権能だけを回復させ支配下に置くつもりなら。それを見過ごせば、我々は未来永劫、局所的な巻き戻しすら行えなくなる」


 事実上の、完全な敗北。それを聞いて一同は絶句する。

 最初に口火を切ったのは、勢い良く立ち上がったヤハトだった。


「ば、馬鹿を言うな! ありえない! 君の権能はオンリーワンのはずだ! それにアレは禁呪『流星(メテオ)』の保有者なのだろう!? そんな力は――」


 そこまで言って、ヤハトもまた、自分がその可能性を捨てられないことに気づき言葉を失う。

 当たり前だ。あの少女こそが最大の障害だった。何度も奇跡を起こされてきた。何度も盤面をひっくり返されてきた。

 何度も、『あり得ない』を起こされ続けてきたのだ。


「……不沈卿」

「なんだ」

「戦力差をどう見る。正面衝突で、どこまで戦える」

「……出し惜しみはしない。私も全力を尽くす。だが、仮に我々が勝利できたとしても、少なく見積もって8割は……」

「……分かった。君に賭けよう」


 意思決定は迅速に行われた。

 神殿残党メンバーは素早く準備を終え、神殿跡地へと出撃する。

 暗闇に紛れ進み、警邏中の機械化兵たちを静かに無力化し突き進む。


(いいや……そうだ、ここを決戦場と定め、決死の覚悟で戦うほかにはない。こちらはたった一枚、巻き戻しのカードさえ切ることができれば勝てる。犠牲を惜しむ必要はない。なぜなら──)

「どうせすべてなかったことになるのだから、とか考えているのでしょうね」


 ガバリと顔を上げた。

 神殿の残骸である柱の上に、星空を背負って、一人の少女が佇んでいる。


「素敵な星空ですわね。自分勝手なゲームに幕を引かれるアナタがたには、いささか美しすぎるかもしれませんが」


 スーツ姿――ロンデンビアにてある職人に依頼し、一週間かけて仕上げられたのち郵送されたバトルジャケットだ――の少女だった。

 彼女は釣竿を持ち、釣り糸の先に銀色の龍を垂れ下げていた。


「ほら釣れましたわ」

『本当に釣りスタイルにする必要はあったか!?』


 流星の禁呪保有者と時下りの龍が揃った光景に、不沈卿はギリと歯を食いしばる。


「マリアンヌ・ピースラウンド……! 貴様がこの絵を描いたのか!」

「ごきげんよう、不沈卿殿。こちらは初対面ですが、アナタにとっては何度目でしょうか」


 優雅に挨拶をすると、彼女はミクリルアから糸を外し解放した後、神殿残党たちを見下ろし嘲笑を浮かべた。

 彼女の隣に、黒髪セミロングヘアの少女と、金髪に白マントの貴公子が姿を現す。


「ミクリルアを復活させる儀式の可能性を、あなたたちは捨てきれない。マリアンヌさんはそう読んでいました。罠だと分かっていても来るしかない」

「ああ。何故ならあなた方は、手をこまねいていては、本当の本当に詰んでしまうかもしれないからだ。だからこれは正しい判断です。正しい判断を、強制した」


 ユイとロイはそう言いながら、普段底抜けに馬鹿なことをしている馬鹿が描いた戦略とは思えず、微かに身震いする。

 二人に挟まれるマリアンヌは、真正面から不沈卿を見据えて唇をつり上げた。


「アナタなら! 何度もわたくしを出し抜きあと一歩のところまで進んだであろうアナタなら! 正しい判断をしてくれると信じていましたわ!」


 すべて向こうの思惑通りなのだと告げられ、不沈卿は屈辱に震える。


「では、これは……!」

「当然ブラフです! アナタ如きとこのわたくしが同じ力? 馬鹿も休み休みに言ってほしいですわね! 聞いただけで反吐が出ますわ! へそでちゃんこ鍋が作れましてよ!」

『いや、言ったのは嬢ちゃんなんだが……』


 見事に釣り出された軍神たちを、アーサーの王国とハインツァラトゥス王国の騎士たちが包囲する。


(ピースラウンドは戦略面でも指揮を執れるのか……! この私が、行動を強制されるとは!)

「一応言っておきます。その大事に大事に抱えてる切り札を捨てて、降伏してはいかがですか? まあ、しないでしょうけど。玉砕覚悟であっても、アナタがたは一人でも生き残り、ゼルドルガの権能を発動できれば勝ちなのですし」


 マリアンヌの言葉は真理を突いていた。


「ですが、この布陣を突破できますか? 正面にわたくしですわよ、わたくし。まあ左右後ろにも騎士がワラワラいますけど、正面にわたくしですからね?」

「突破口は、ある」

「へえ?」


 星空の下、少女の真紅眼が、銃口のように向けられる。


「その貧弱な残存戦力で、まさか神殿を一時的に制圧し、時上りの儀式を執り行えると?」

「力押しは私の流儀ではないが。今回ばかりは別だ」


 出し惜しみはしない。軍神はそう言った。

 彼は嘘をついたりしない。ここが決戦場。ここですべてが決まる。

 だから──積み重ねを全部吐き出す。


「認めよう。君だ。君こそが禁呪保有者の中で、最も脅威となる最悪の存在だ。最初に君に対処しなければならなかったんだ。この局面を作ったのは紛れもなく君だ。故に私は、この局面において勝利してみせる!」

「……ッ! 星を纏え(rain fall)!」


 マリアンヌの先制攻撃を腕の一振りで霧散させ、不沈卿は全身全霊での戦いを開始する。








【接続者第漆號を確認】


【主権者からの認可を待機……エラー。処理の不具合を確認】


【必要条件を確認。緊急性を確認。擬似認可を許諾】


【第四天との接続安定化を確認】


【迎撃権限を譲渡】


【適切な処置を行い、対象の未確認プログラムを排除せよ】


【そのために】



【────汝に軍神(イクサ)の加護を与えよう】








「隆興せよ、正義の鉦──軍神(イクサ)の号令を打ち鳴らそう」






 空が潰された。

 余りに迅速だった。

 瞬きした刹那に夜空が無数の魔法陣に覆われ、数秒で軍勢が這い出て来て、天空を埋め尽くす。


「は?」


 ノータイムでの軍勢召喚。

 個人での大戦力顕現は、あの混沌でさえ順次生成していたはずだった。だからこそマリアンヌは完全包囲してから投降を促していたのだ。


 ここに唯一の誤算がある。

 軍神(イクサ)の名は、戦略や、戦術に本質を置かない。

 それ単独で刹那に戦争行為を起こせるからこそだ。


「なん、です、か、これは」


 上空に現れたのは、細長い翼を持つ蛇竜の大軍団。

 それは蛇竜種(リザード)をベースとし、翼竜種(ワイバーン)の飛行能力を付与し、暗中蠢虫(ワームシャドウ)の恐怖を食らう特性を簡易的に組み込んだ存在。


「ちょっ、待って、待って、本当に待ってください」


 それらに守護されるように、夜空にて異様な存在感を示しているのが、純白の空中戦艦だった。

 それは雲海涅槃(クラウン)という上位存在に炎精種(サラマンダー)の攻撃性を加えた、実体を持たないにもかかわらず一方的に地上を砲撃してくる、虚構にして高火力の浮遊城。


「あっこれ読み間違えました? え? 全然違うじゃないですか!! 単独で個性バリバリ複製して戦って来るAFOタイプだと思ってたんですけど!? もうメタ読み止めます!!」


 地上にて騎士たちを見下ろすは、半身に炎を宿し、半身から極低温の冷気を放つ巨人。

 それは古代巨神(ティターン)をベースに氷結領域(ロストエデン)炎精種(サラマンダー)を混ぜ合わせた、氷炎の巨神兵。


 騎士たちが愕然とする。

 神秘にして荘厳。強大にして多勢。

 質も数も、たった一人でひっくり返す。


 それこそが──いつか世界を救う存在、【七聖使(ウルスラグナ)】が一人、軍神(イクサ)なのだ。




開幕(はじまり)を告げよう────万雷鳴らすは(ジェノサイドマーズ)軍神の凱旋(・グローリーヘヴン)



 その銘を静かに宣言した後。


「さあ本番だ。決戦といこう、マリアンヌ・ピースラウンド!」


 自らも抜刀し、不沈卿が叫ぶ。

 それを合図として、暴力的なまでの神秘たちが、人類に牙を剥いた。








「いくらなんでも権能が強力過ぎません!? タイム! テクニカルタイムアウトッッ!! ナーフ……ッ!! ナーフを求めますわ……ッ!! ちょ、ちょっとわたくしご意見・ご要望フォームに行ってきますので!!」



〇宇宙の起源 やあ。ご意見・ご要望フォームだよ

〇無敵 A.調整中です。

〇日本代表 知らん……何これ……怖……

〇火星 ほんとごめん

〇みろっく 軍神ってこんなことできるんだね

〇火星 できねーーーーよ! 何これ? 違法改造じゃん! 離縁した娘のオフパコ募集エロ自撮り裏垢見つけたみたいな気分なんですけどおおおおおおおおおおおおおおおお!!



「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」






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― 新着の感想 ―
[良い点] 【朗報】マリアンヌ、遂にわからせられる!
[一言] ノータイム軍勢召喚に上位存在の権能までオプションつけられるのはさすがにバグでしょ ナーフだナーフ!
[良い点] このイキった後にどんでん返しされるマリアンヌが見たかった。
感想一覧
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