INTERMISSION11 めっちゃ帰りたい
屋敷の中で、来客用の寝室を二部屋割り当てられた。男部屋と女部屋だ。
わたくしは自分の荷物を寝室に置くと、ロイとユートが待つ男部屋に来ていた。
「お待たせしました」
部屋に入ると、挙動不審な二人が出迎えてくれた。
「む。どうかしましたか」
「いやなんか……お前が男部屋に来るの、落ち着かねえなって」
「臨海学校の時は、こういう風に部屋に来るとかなかっただろう? ユートは緊張しているんだよ」
「そういうアナタの両足は残像が見えるぐらい震えていますが……」
わたくしが指摘すると、ロイはさっと視線を逸らした。
思わず嘆息する。深刻に考えるのか旅行気分になるのか、どっちかにしとけ。
「悠長なことを考えている場合ではないでしょうに」
これから先どうするのか、三人で話し合わなければならないのだ。
「それではお二人の意見をお伺いしましょう。まずはロイ、どう思います」
「考えが浅すぎる」
「……同意見ですわね」
こいつ一発で核心突いてきたな。
あの二人、上位存在の研究をしていた一族の当主とその妹にしては、いくらなんでも考えが浅はかすぎるだろ。
「正直帰りたいですわ」
「……俺も同意見だ。つーか、上位存在の内1体が恐怖を餌に強くなるつったって、流石に援軍がいた方がいいに決まってるだろ……」
不満も露わに、ユートはベッドに腰掛けた姿勢で息を吐いた。
「ただ……少し、僕なりに考えてみた。それで思ったんだけど。今回の件、僕たちが考えているよりも複雑なのかもしれない」
深刻な表情でロイが告げる。
「と、言いますと?」
「上位存在五体相手に、僕らだけ呼ぶなんて馬鹿げてる。数を増やせないとしても……特急選抜試合のことを知っているのなら、絶対に呼ぶはずの人がいる」
「──ジークフリートか! 確かにあいつを呼ばない理由はないな」
ああ、確かに。
あの人現状、超王道の最低系主人公やってるもんな。呼んだら普通に一瞬で解決してそう。
「話に聞いたところ、ジークフリート殿はファフニールとの戦いを経て、対悪性存在に対して絶対的な防御を獲得したそうだね」
「ええ。意味はよく分かりませんでしたが、そういう加護を得た……得た? 組み合わせて作ったそうです」
何度聞いても意味分からん。
加護でミキシングビルドするなよ。
「なら、なぜ呼ばないのか。悪性でない存在が相手だから? それはデメリットじゃない、彼は守護がなかったとしても十分に強い」
「そうですね」
「答えは明瞭だ。強すぎると困る。そう考えると自然じゃないかな?」
一瞬思考が止まった。
強くて困る? なんで? 倒して欲しいのに?
「……! つまりこういうことか? ──単純に倒されては困るって?」
「僕はそう考えている」
ユートの言葉を聞いて、やっと得心がいった。
「負けたいわけでもない。最後には倒して欲しい。だが圧殺されては困るんだろう。上位存在相手に、それなりの激戦を展開して欲しいんだ」
「それは……制御下から外れそうという話も嘘だと?」
「そこまでは判断が付かない。しっかり制御はできていると考えても筋は通るし、本当に制御できていないにしては悠長な真似をしている。だが、彼らがその気になればすぐ制圧できると考えれば頷ける」
あ~……話がこんがらがってきたぞ。
ちょっと頭の中で要約するか。
大前提。
リーンラード家は上位存在5体を顕現させた後、これとわたくしたちを戦わせたいと思っている。
理由は不明だが、推測するにはデータ取りの面が強いか。
パターン1。
彼らは上位存在を確実に制御できており、すべての予定は仕組まれている。
だから余裕を持ってデータ取りができる。
パターン2。
彼らは上位存在の制御に失敗しているが、何か停止スイッチのようなものを保持しており、いざとなれば確実に上位存在の排除は可能である。
この場合も結局、ある程度の余裕は持ってデータ取りができる。
「どのみち当て馬では?」
「うん、そうなる」
クソが!!!!
全然気が乗らない。超絶気が乗らない。
めっちゃ帰りたい……
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