PART43 狂乱万雷ラストアタック(前編)
あーもう今回は完全に無理だ。
痛くないところがないし禁呪解除されちゃったから出血エグいし。いやこれ自分で腹切っただけか。
〇トンボハンター ん!? ファフニールが再生してない……!?
〇無敵 え? ああ再生限界になったのかな
〇つっきー あるんだ、限界
〇無敵 普通はないけどまあジークフリートさん相手だからな
〇外から来ました やけに冷静だと思ったけどお前もしかして『推しがかっこいいからいいや』みたいに投げやりになってない?
〇無敵 ヘヘッ
意識が混濁する中でも、なんとか立ち上がる。
流石にもう帰りたい。
「カサンドラ! 脚本変更だ! ファフニールがやられた、間に合わせるしかない! 聞こえてるか!?」
いやマジ、もー今回ばっかりは頑張った。
頑張りすぎたかもしれない。
だから、あとひと踏ん張りだ。
「アナタを、倒す!」
天を指さして叫んだ。
「アナタは間違っていると証明する! アナタはわたくし以下なのだと思い知らせる!」
「……ッ。いいえ。勝つのは私よ!」
カチリと、お互いの戦闘用思考回路が起動する音。
同時に飛び退き、即座に詠唱をスタートさせた。
────星を纏い、天を焦がし、地に満ちよ
────射貫け、暴け、照らせ、光来せよ
────正義、白、断罪、聖母
────悪行は砕けた塵へと、秩序はあるべき姿へと
選択するのは当然十三節。
今の自分にできること、全部やんなきゃ、勝てない。
────星は眠り、天は静まり、地は安らぐ
────再建し、覆い、落とし、沈殿せよ
────正義、虹、許容、神父
────悪行すらも抱きしめて、新たな秩序を祝福せよ
向こうも当然完全解号を行使してくる。
そうこなくっちゃなあ。
全力のアナタを越えなきゃ意味ないからなあ!
────極光よ、この心臓を満たせ
────赦しの明星を、今ここに
お互いしか見えない。
お互いの詠唱と息遣いしか聞こえない。
「完全解号──虚弓軍勢・流星、ツッパリフォームッッ!」
「完全解号──虚弦絶圏・禍浪!!」
だから。
このラストアタックで、勝負だ。
当然それを、周囲が黙って見るわけがない。
「いかん! お守りしろ!」
憲兵たちがマリアンヌの進路に割って入ろうとするのを見た。
ロイ・ミリオンアークがその光景を見た。
カチリと。
彼の頭の中で、スイッチが切り替わる。
(ふざけるな)
そこは彼女の舞台だ。
そこは彼女の進む道だ。
そこは──彼女が切り裂く宇宙だ。
【新規接続者を確認】
【主権者からの認可を待機……エラー。処理の不具合を確認】
【必要条件の確認に失敗。緊急性の確認に失敗。擬似認可を不許可】
誰にも踏み入れない領域だ。
誰にも穢させはしない彼女だけの場所だ。
【新規接続者を確認】
【主権者からの認可を待機……エラー。処理の不具合を確認】
【必要条件の確認に失敗。緊急性の確認に失敗。擬似認可を不許可】
冗談じゃない。
それは、それだけは絶対にさせない。
それだけは。
彼女の進む道に彼女以外に立っていいのは──おれだけだ。
【新規接続者を確認】
【主権者からの認可を待機……エラー。処理の不具合を確認】
【必要条件の確認に失敗。緊急性の確認に失敗。擬似認可を不許可】
『ロイ! ご覧なさい!』
『えぇ……何がだよ……』
『あれですわ! あれ!』
『いやアレって、その……宙を裂く星のこと、かな?』
『流れ星ですわよ、な・が・れ・ぼ・し!』
『ああ、そういう呼び方もあるんだね。あの光は……一瞬だろう? 刹那に消えてしまう光に過ぎないじゃないかな』
『んもう! ロマンの足りない男ですわね、なんとつまらないのでしょう!』
『な、な……ッ!? 君なあ! ぼくはお父様の言いつけで君についてきただけなんだ! 天星学なんて不要だろう!』
『いいえ!』
『あの流星のように、わたくしは輝いてみせますわ!』
『アナタが見て驚くような……誰もが目が離せなくなるような』
『そんな流星に、いつか────!!』
美しいと思った。
その願いを、叶えて欲しいと思った。
だから邪魔させない。
彼女の進む道を、邪魔なんてさせない。
【新規接続者を確認】
【主権者からの認可を待機……エラー。処理の不具合を確認】
【必要条件の確認に失敗。緊急性の確認に失敗】
【擬似認可の許諾に必要な条件はクリアできていません】
【それでも】
【遙かな旅路の終着点に待つ光を、今でなければ意味がないというのなら】
【あなたへの祝福と、同時に呪いとして贈りましょう】
【限定的擬似認可を許諾】
【第六天との限定接続安定化を確認】
【迎撃権限を一部譲渡】
【術式指定:『天装雷槍・幼凪』】
【適切な処置を行い、対象の未確認プログラムを排除せよ】
【────汝、天空の覚醒者なりて、世界の終末を覆せ】
「マリアンヌが進む邪魔をするなァァァ────ッ!!」
無数の雷撃が戦場を塗りつぶした。
わたくしとカサンドラさんを囲むようにして、蒼い雷撃が展開された。
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