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PART19 凶報伝播サイレントシャドウ

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【悪竜退治は】TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA PART3【お手のもの?】

『981,988 柱が視聴中』


【配信中です】


〇日本代表    お前が気をつけるべきは2つ

〇日本代表    1つはゼールの悪役令嬢。まあこいつは今のお前なら楽勝だと思う

〇火星      原作だと王国を滅ぼそうとしてくるんだけど、正直お嬢とアーサーに勝てる見込みはないわな

〇外から来ました てか現状悪役令嬢にリソース割く余裕がないよね

〇無敵      それな

〇日本代表    じゃあもう1つの脅威について、担当者

〇無敵      はい……

〇無敵      え、ああうん、そうね担当者よ俺

〇無敵      うるさいなあ真面目な話ぐらいできるっつーの

〇無敵      で、脅威っていうのは大邪竜ファフニールね

〇無敵      ……いや違うの。本当にいるの

〇宇宙の起源   お嬢ドン引きで草

〇日本代表    前にジークフリートさんと一緒に討伐した個体とは比べものにならないぐらい強力だから、気をつけて欲しい

〇無敵      7つぐらい先のCHAPTERの特殊イベント挟まないと勝てないから、もし遭遇したら逃げ一択な

〇無敵      え?なんで俺がファフニールの担当者?……色々あるんだよ

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 ──王都にて。

 夜の帳が降りた空を、煌々と赤い炎が照らし上げていた。

 あちこちに上がった火の手が、瓦礫の山の中を駆け抜けている。

 破壊された家屋群。あちこちに倒れている騎士や市民。

 王都の一区画は今、地獄と化していた。


「ぐ、ぶ」


 喉元からせり上がってきたのは、真っ赤な血の塊だった。

 路上に吐き捨てて、男はぼやけた視界の中で必死に顔を上げる。


(これほど、までとは)


 目の前に女が立っていた。

 美しい銀髪。

 こちらを見下ろす、温度のない碧眼。

 身に纏うは流麗な水のヴェール。あらゆる攻撃をいなし、転じては鋭く練り上げられこちらを切り裂く、攻防一体のそれ。


(万能という言葉では生ぬるい……全能と呼ばざるを得ないほど、やれることが多い。いいや、やれないことがないのでは、とすら思ってしまう)


 身体がいうことを聞かない。

 当然だ。内臓は弾け飛び、身体各部の筋も断ち切られている。そもそも生きているのが不思議なぐらい、全身をズタズタに裂かれているのだ。

 半死半生の男に歩み寄り、その女は冷たい声で問う。


(わたくし)の勝ちね……言い残すことはあるかしら」


 彼女の周囲を漂う水のヴェールが姿を変え、鋭い刃となって男の喉に突き付けられた。

 男は周囲を一瞥した。傷ついた騎士たち、逃げ惑う市民たち。

 だが女や、女の後ろで退屈そうにしている少年は、それらには目もくれない。


(なるほど。これは……私を誘い出すための罠だったということか)


 嘆息し、自分の命運が尽きたことを自覚する。

 顔を上げて、男は最後の意地として、女の目を真正面から睨み付けた。


「君たちは最後には敗北する。私を超えた自慢の娘が、必ずお前に勝つ」

「そう。覚えておくわ」


 銀色が迸る。

 一閃が狙い過たず、人体を両断する。



「さようなら──マクラーレン・ピースラウンド」



 その日。

 王都にて逃げ惑っていた衆目の目の前で、男の首が宙を舞った。








 臨海学校二日目の朝。

 午前のレクリエーションを終えて昼の自由時間に入るも、生徒たちの様子は微妙に不自然だった。

 ユイさんたちと一緒に、旅館近くの観光地をぶらぶらと歩く。

 制服姿の生徒もちらほら見えるが、やはり覇気はなかった。


「……大丈夫かしら」


 リンディの心配そうな声が指すのは、特定の個人ではない。


「王都襲撃……しかも下手人は逃げおおせたとなると、対外的な印象も悪いね」


 沈痛な声色でロイが告げたのは、今朝一番に飛び込んできた衝撃のニュースだった。

 王都にて正体不明の軍勢が突如として出現、火を放ち都市部を破壊し始めたのだ。

 幸いにも市民の避難は迅速に済んだが、犠牲は少なくない。応戦に打って出た騎士にも死者が出た。被害は都市の極一部に留まったものの、人的被害は深刻だ。



〇みろっく こんなイベントあるの?

〇日本代表 もっと先ならって感じだけど……わっかんねー



「ジークフリート、大丈夫か?」

「あ、ああ……訓練兵時代の知り合いが負傷したり……亡くなった、とも聞いていてな……」


 ユートの護衛に来ている騎士たちの方が、意気消沈っぷりはひどかった。

 特にジークフリートさんは、ユートの気遣うような声にもうまく反応できていない。


「騎士団に被害が出た以上、教会も黙っているわけにはいきません。犯行グループを突き止めるために働いてもらっていますけど……既に王都は脱出した後のようで、足取りは不明です」


 ユイさんの補足を聞くと、改めて感心すらしてしまう。すっごい手際いいな。

 話を聞く感じ、王都にそこまでダメージを与えるのが目的って感じじゃないよなあ。

 まあ当事者でもないし、真剣に考えるだけ無駄なんだけど。


「どうにも情報がまだ錯綜している様子だからね。僕たちの知り合いが巻き込まれた、とは聞いていないけれど」

「臨海学校の短縮も検討されてるわよ、どーするんでしょうね」

「えぇ……短縮して何か意味があるのですか……? 休校措置にするにしても、むしろ王都から離れたこちらの方が安全な気もしますけれど」

「あんたこういう時凄い勢いで頭回るのね」


 リンディが呆れたような表情になっているが、事実だろう。

 王都を襲撃した、という行為は余りにも重大だ。重大であるが故に、成功したとしても下手人の意図が不明瞭になる。

 極端な話──成功失敗を問わず、はっきりいって襲撃先の選択が短慮に過ぎるのだ。


「本気で王国に戦争を仕掛けるのなら、王都ではなく王城を襲撃するべきでしょう。市民を虐殺したところで国家システムへのダメージは発生しませんわ。では王国の防衛力が低下していることを露呈させたかった? いいえ、それこそ国境を適当に破るだけで済みます。王都へ侵入、敵地で孤立する行為は、結果として成功していても恐らく相当のコストを支払ったはず……もっと費用対効果の良い選択肢があったでしょうに」

「……つまり、何が言いたいんだ?」

「この襲撃を計画した人間は、あまり頭がよろしくありませんわね」


 ジークフリートさんの問いに答えると、全員なんとも言えなさそうな表情になった。

 おい、顔に書いてあんぞ。『お前が人の頭の心配をするのか……』って極太油性ペンで書いてあんぞ。


「言い草に思うところはあるが、確かにマリアンヌの言う通りではあるな」

「あら、ハインツァラトスがまだ王国への干渉を諦めていなかった、という筋もありましてよ?」

「ハッ……もしそうなら俺が親父をぶっ飛ばすさ」


 しれっと怖いこと言ったなこの第三王子。

 ただまあ、それだけのことを言えるようになったってのは、いいことなんだろうな。



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[一言] なんで急にこんな重い展開をぶち込んでしまうんや……
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