〇〇は夢の中で
―――暗い。暗くて周りが見えない。
世界は辺り一面暗闇で覆われていた。その中に揺らめく小さな光。唯一の灯である、ロウソクの火が照らすのは一つの祭壇。その前には黒く、大きなローブを纏った一人の人間?いや、人間以外の何か。暗いのではっきりとはわからないが、それでもロウソクの火に照らされた、ローブから覗く顔や手は、人間のそれとは大きくかけ離れている。ゴツゴツした皮膚で、口には尖った牙、手には鋭い爪。よくホラー映画やSFなどで出てきそうな、爬虫類の怪物みたいな造形をしている。
そんな化け物が、祭壇の前に怪しく手をかざし、一心に何かをつぶやいていた。
どのくらいそうしていただろうか。やがて、つぶやきは大きな念仏の様なものに変わり、最後に一際大きな声で叫んだ。
「《アルヴォーク・マルサーマン・モーンドン》!」
しばらく静寂に包まれる。そして、化け物は頭のフードを取り払って顔を出して笑い声をあげた。
「成功だ。これで世界は私のものだ!異世界の存在とルールにより、勇者どもなど取るに足らん存在に成り下がる!」
しかし、そのあとその化け物の顔が真っ青になる。もとから青黒く、顔色など関係なさそうだが、そのくらい表情が変化した。
「な、バカな!?」
大きな揺れが起こり、祭壇を中心に亀裂が広がる。激しい揺れに化け物も立ち続けることができず、膝をついてしまう。
「成功したのではないのか?何がおきた?」
揺れはどんどん激しくなり、崩れゆく祭壇に化け物は飲まれていった・・・。