1話 ラミヤ
ー十年前ー
謎の宇宙人襲来により、とあるチームが政府より結成された。
その名は特別怪奇捜査チーム、通称チーム特怪である。
結成から十年後、唐島優は、体が霧に覆われていた怪獣に追われていた。
チーム特怪の一員である優は、肩幅くらいある長方形型銃を担ぎ、追われながら住宅街を走る。
走る道路の先の壁には隊長の鈴来卓と、優と同じく一員の葉田光輝と赤地洋が待機していた。
「優!!」
隊長の叫びとともに優は180度回り、4人同時に怪獣に向けて銃を発射した。
だが、発射した光線は雲一つない空彼方に進んだ。
なぜか?
そう、それは光線が怪獣を通り過ぎたからである。
「奴の体は霧そのものなんです」
「なんだと、よし総員移動するぞ」
洋の解説を聞き、隊長の鈴来卓の命令で100メートル先まで移動し、振り返った。
振り返った瞬間、怪獣の姿はなかった。
怪獣の姿が見えなくなって1時間、チーム特怪は懸命に機械を使いながら辺りを探し続けた。
だが、どこにも見当たらない。途方に暮れたチーム特怪は一旦集合し、この後どうするかの立ち話会議に入った。
その時洋の機械に反応音が鳴り響きふと機械に目をやった。
「隊長、大変です。地下から別の怪獣反応が、迫ってきます」
「な」
にを言おうとした瞬間、鈴来の後ろ下から地底怪獣が姿を現したと同時にチーム特怪に向かって火の玉を吐き出したではないか。
誰もがここまでかと頭によぎり、目を伏せた瞬間、巨大な手がチーム特怪を守った。
何が起こったのか。恐る恐る優は目を開け、目の前に起こった事実に驚愕した。
なぜか?それは巨大な手が、しかも明らかに人の手がチーム特怪を守ってるではないか。
それだけだけではない。目線を上に向けると緑色の上着を着、少しおしゃれなブーツをはいている金髪の巨大な人間がチーム特怪を守ったのだ。
「これはなんということだ」
「そんな馬鹿な!」
「チッ」
「すごい」
チーム特怪の面々が驚きを隠しきれずにいるのもつかの間、巨人が口を開く。
「よう、大丈夫か」
巨人の問いかけにも答えきれない面々の中で一人だけ答えた。優だ。
「はい、大丈夫です」
「そっか、よし。おい怪獣。オレァあんま戦った経験値が少ねぇからそこんとこよろしく」
首長竜に怪獣の足がつき、手には貝殻の貝が1枚ずつつき、貝には爪が3つついてるなど明らかに人工的に作られた怪獣に巨人は、立ち向かっていた。
数分の攻防戦が続き、巨人は右足を天高く上げ、上げた瞬間、かの文字が浮かび怪獣の頭頂部にめかけて下ろす勢いで
かかおとし
の文字のしが巨人の足にくっつき怪獣の頭頂部にクリーンヒットした。
さっしの通り怪獣は気絶し倒れた。
「よっシャー」
ガッツポーズをとる巨人の右肩に光線が当たった。振り向くと、一人の姿がある。光輝だ。
「チッ」
当たり損じた光輝と巨人は少し睨み合い、その時、巨人の後ろで気絶した怪獣が目を覚ました。
「ウソーン」
目が覚めた怪獣は、手の貝をそれぞれ3等分にし、首に2枚、足に1枚とくっつき、さらに尻尾がさけ、貝がくっついていた部分にくっついた。先からみぎにチーム特怪の銃に類似した銃、左にはスタンガンが現れた。
「進化しやがった」
少し驚いた巨人は怪獣めかけて走り出したが、怪獣は急いで地下に潜り住宅街に穴をこじ開けた。
「クソ」
徐々に小さくなる巨人は等身大になり、静かに倒れた。
とある部屋にて目覚めた巨大化できる人物は、こちらを透明な壁越しからじっと見つめている優に気づいた。
「目覚めましたか?」
「あぁ、あんたは?」
「私は優、唐島優です」
「俺はラミヤだ」
ラミヤと名乗る男は優をじっと見つめている。
一方その頃
チーム特怪のラボでは、光輝と隊長の卓が口論していた。
「どういうことっすか隊長!何であいつをチームに加えようとしてんすか」
「いいじゃないか。彼の力を借りればチーム特怪は怪獣と対等に戦えるンだぞ。それがどうして分からないんだ光輝。君なら分かってもらえるはずだが」
「しかし」
少し不服そうな顔になりかけている光輝を無視し、別室にいる優に連絡をとった。
別室にいる優は隊長からの連絡を受け、ラミヤにラボへの同行を促した。
「いいよ」
軽い返事をしたラミヤはベットに座り込んだまま緑色の上着を手に取り、腰を上げ透明な壁の前へ立った。
優は壁を開け、ラミヤとともにラボへと向かった。
ラボに入ると、チーム特怪の面々が1人除く満面の笑顔でラミヤを待ち構えていた。
「やぁ、待ってたよ。私はこのチーム特怪の隊長鈴来卓だ。よろしく」
「どうも、ラミヤです」
隊長と固い握手を交わすラミヤに優は他の隊員たちを紹介した。
「こちらの2人は赤地洋隊員と葉田光輝隊員です」
「どうも、よろしく」
「チッ、俺はお前の事を認めてないからな。そこんとこよろしく」
かっこつけたあいさつに他の者は無視し、少し沈黙した空気を隊長である卓が吸い込み言葉を発した。
「よし、では早速だがあの地底怪獣のことについて話そう。では洋、頼んだ」
「はい、奴はおそらく人工的に作られた怪獣でしょう。それで・・・」
とその時、レーダーに反応があり、ラボの中は反応音でいっぱいになった。
「隊長大変です。例の地底怪獣がものすごいスピードで出現しようとしています」
「何!!全員出動」
昼時の住宅街に突如現れた地底怪獣はやはり先ほど現れた進化する怪獣であった。
チーム特怪はラミヤと共に現場に向かい、怪獣のいる住宅街で戦いを始めようとした。
「よし、行くぞ」
ラミヤは緑の上着に袖を通して巨大化した。
数分の戦闘が続く。
チーム特怪の面々はまず怪獣の右手の銃を卓、洋、光輝の3人はせーのと光線弾で破壊した。
優は左手のスタンガンを破壊するため、銃のモードをノーマルから土ドロドロモードにチェンジし、土ネットを放ちスタンガンに絡まらせ感電させ、その隙にラミヤは手には空気の念で作ったボールを作った。
作り終えたと同時に構えた。その構え方はまるでボーリングのそれにそっくりだった。
「いくぜ!ラミヤボーリング!!」
ボーリングの玉を投げる感覚で投げたボールは地を削り、まっすぐ怪獣の方向に向かい当たって爆発した。
ドカーン!!
爆発音はまるで怪獣の叫びに聞こえたのはラミヤだけかもしれない。
力を使い、等身大に戻ったラミヤは上着を脱ぎ、チーム特怪と合流した。
「大丈夫ですか?ラミヤさん」
「あぁ、大丈夫だ。行こう」
チーム特怪は夕陽の沈む方向へと帰って行った