1/25
1
妙な気分だった。
それは例えるなら………。
例えるなら。
それを見つけようとして脳内を探索してみると、ふっと「ずっと前見た夢の続きを突然見た気分」というのが出てきた。
そう、そんな気分かもしれない。でもそれは見かけが似ているだけの話であって、本質的には全く別のものだと思う。
今日の妙な気分というのは、これは夢を見たからだとか、そういう明確な発端というものは存在しないのだ。
「妙な気分になったから妙な気分になったと感じた」というような、完全に内発して起こり得る感情なのである。
だから僕はこの気持ちを抑える方法や、また抑えることができたとして、それがどうなのか、なんてことは分からないわけだ。
自転車にまたがってぶらぶらと行く。
強くペダルを踏んだ。
僕は今、この瞬間には、自動車に会いたくないと思った。
だから速くに走って、帰ってしまおう。
口笛は風にかすれた。
そして心掛けていても、やっぱり数台の車は脇をすり抜けていった。
やつら、抜き去るときにちょっとスピードを上げて行きやがる。