勇者の贈り物
木製の見慣れない天井。
カーテンの無い窓から暗い曇り空。
あー、そう言えばここ異世界だっけね。
自慢じゃないが寝起きはあまり宜しくない。
異世界に来てもそれは変わらないようで、まだ頭がボーッとしてるし体も動きたがってない。
でも……
「お風呂入ってないし昨日の服のままじゃん……気持ち悪ぅ……。」
お風呂とか無いかな……無いよな……。
水浴びする?
いやいや…太陽出てればアリかもだけど雲分厚いしやだなぁ。
そんなことを考えていると、昨日預かった部屋の鍵に付いた水晶から声が聞こえた。
『おはようございます小春様。勇者様からお届け物が届いております。宜しければお部屋までお運びします。』
勇者から?何だろ?
昨日言われた通り、魔力を手から水晶に流すイメージで……
「お願いします。」
……声届いたか?
出来てないのかと心配したのも束の間、すぐに
『かしこまりました。』
と返答が来て間もなく、コンコンと部屋がノックされた。
「おはようございます!よく眠れましたか?」
両手に茶色い大きめの荷物を持って、カールさんが部屋を訪ねてきた。
「お陰様で。わざわざすいません。」
「いえいえ、では、確かにお渡ししましたので。冒険者試験頑張って下さいね!」
「ありがとうございます。」
ニッコリ笑顔でお辞儀をして、「それではー」と去っていくカールさん。
今日も良く揺れるピンクのツインテだなぁ。
「さて。」
勇者様は何を届けてくれたのか。
茶色い包みを開くと、水色と黄緑が混ざったような拳大の水晶が5つ、硬そうなパンが2つにミルクが2瓶、駆け出し冒険者っぽい着替えが3セット入っていた。
着替えーー!朝ごはんまで有難い!
勇者は神だった!!
この水晶は何だろ?
このセット内容的に危ない物では無さそうだよね…?
水晶を持ち上げて観察してみると……
ユラっと出た!!
説明文!!
夢にまで見たウィンドウ画面!!
ふぁぁぁぁぁぁぁぁあきたぁぁぁぁあ!!!!
おっと取り乱してしまった。
キトラのくれた能力なのか水晶の機能なのかわからんけどナイスだ!
えーと、何何?
「ウォッシュ…身体の隅々までを瞬時に清潔な状態にする魔法の込められた魔石」
勇者、ホント神だよ。
変な髪色とか思ってごめん。
神色だよ。
てかこれ魔石なんだね。
魔力を流すと身体がジワッと暖かくなった感じがして、シュッと風を切る感じがして魔石が砕けて粉が散るように消えた。
うおおおお!
すんご!
凄い!
魔法っぽい!
身体の不快感もちゃんと消えてる!
ちょっと不安だったけど、服着ててもちゃんと発動するんだ。良かった!
勇者が送ってくれた服に有難く袖を通す。
……
………
…………
サイズピッタリなんだけど……
………勇者様怖い。