空気清浄機的な
開いた口が塞がらない。
正にそんな感じ。
目の前に広がる風景は殺伐とした荒れ地。
ゴツゴツとした大小の岩がそこら中に転がっていて、緑が一つもない。
遠くに高い岩山がいくつか見えるが、その頂上はモヤがかかってよく見えない。
空も暗いし、風もない。
更に不可解な事に、私の周りだけ青々とした草が茂っている。
ナンダコレ
どれくらい放心していたのか、ボーッとしているとフワリと風が吹いた。
『ハイハーイ!遅くなっちゃってごめんねー!』
「ひやぁぁぁ!!!?」
突然頭の中にテンションの高い声が響いてビックウウウッと飛び上がってしまった。
『あはは!ビックリしたよね、メンゴメンゴ!』
「はぁ?え?え、ぇえ?」
混乱しすぎて舌も頭も回らずパニックである。
『ちょっち待っててね、今そっち出るから』
「で、出る?」
目の前のゴツゴツした地面にボヤーっと召喚陣が浮かび上がったと思うとパッと光った。
「よっこいしょ!」
「っっ!!!」
召喚陣から腕が出てきた。
そのまま這い上がるように出てきたのはピンクの髪の少女だった。
唖然とする私に構わず少女は話続ける。
「初めまして、アタシはキトラ!今こっちの世界がちーっと不安定でね、救世主様探しに世界の窓覗いてたら小春ちゃんの呟き拾っちゃってさー、呟きに落ちに落ちてる思念まで乗ってたから、そっちの世界で上手くいってないなら貰っちゃえーって感じで連れてきちゃった。急にごめんね?」
世界の窓?
なんだそれ。
それに学校行きたくないなんて世の中の誰もが1度は呟くレベルのありふれたセリフじゃないですかやだー。
てか救世主??あたしの事?いやいやないない。
ないよね?
このピンク髪の少女、キトラの説明が不可解すぎて何から突っ込んでいいかわからない。
「待って、頭が追いつかない。私がここに居るのはアナタが連れてきたという事でオーケー?」
「オーケーオーケー」
「救世主ってのは?あたしになれとか無理ですよ?」
「ん。その辺は何をどうして欲しいとか無いから安心して!」
無いのか。
少しホッとした。
「じゃあ何で私を連れてきたんですか?」
「んー、詳しく説明するとかなりややこしいからなー。単純に言うとね、この世界での小春は浄化人間!居るだけで周りの淀んだ魔力が綺麗になってくのよ!」
「ナゼ」
いやほんとに訳が分からない。
「あ!小春の世界には魔力はなかったんだね。この世界はねー、何処にでも魔力があって、魔力を使って魔法も使えちゃうんだよー。でも、魔力を浄化したり新しく生み出す、魔力を司ってた神様が魔王に殺られちゃってから、魔力がどんどん淀んで来ちゃって。汚れた魔力を綺麗にできないまま使い回してたら色々とマズい事に...」
魔王とか居るの?!
んで異世界お決まりの魔法もあるのね!
「その魔力の神様に代われる人は居ないの?」
「お恥ずかしい事に...今後継者争いの真っ只中で...」
「あぁ...」
神様もそうゆう事あるんだ。
「あの馬鹿達の話が着くまで待ってたら何百年かかるか分かったもんじゃないし、このまま放って置く訳にもいかないし...これ以上魔力汚染が進まない様に小春ちゃんがこの世界で生活してくれるだけでいいの!お願いします!力を貸して!何かすっごい能力あげちゃうから~!」
パンっと手を合わせて頭を下げられた。
別に帰りたい!って訳でもないしな。
「んー、いいよ。何だかんだで異世界なんてワクワクするしね。」
「ホントに!?ありがとう!!良かったぁぁ!」
兄弟や親友も居ないし、両親はいつから会ってないかも覚えてない位放置されてたし。
ここに居て無条件に役に立てるなら第二の人生も悪くないんじゃないかな。
そう。第二の!!
「で、凄い能力なんだけど」
「なんでも言って!!」
「美少女に生まれ変わりたい!」
「無理です」
「へ?」
「生まれ変わったら浄化能力も消えちゃうんだよ~!」
「じゃあ美少女に外見を作り変えて下さい」
「それなら出来るけど物凄く痛いよ?皮膚やら何やら粘土みたいにグニャグニャ整形し直すし、中身の位置調節に血管も通し直したり...」
「やっぱいいです」
何それやだ怖い!
「ごめんねー小春ちゃん!能力とかなら無痛だし便利なのから凄いの迄~...」
「ん?」
話の途中でキトラがビクっとしてフリーズした。
何だ?
「ご、ごめん小春ちゃん、急いで帰らなきゃ...」
真っ青になって汗が滲むキトラ。
何かあったのかな?
......って!
「ちょ、ちょっと待ってよ!帰るの?私は?!ここからどうすればいいワケ?!ここ何処ですか!私手ブラ!!なんも持ってないよ!」
「ごめん、また時間みつけて会いに行くから!
ええっと、あ、んー、そうだ!」
慌てて考えて閃いたと思ったらガッと頭を掴まれた。
何この仕打ち。
「小春ちゃんの希望叶えられなかったのと、こんな所で置いてっちゃうお詫びに色々役に立ちそうな能力詰め込んどくから!」
「えっ!ちょっ...待っ!」
頭を掴むキトラの手と頭がカッと熱くなったと同時に、目を開けていられないくらいの光が瞼から直接光ったような感じで反射的に固く目を閉じた。
又軽く頭がグワングワンしている。
目を開けるとそこにはもうキトラの姿はなかった。
......あれ?
結局この世界の魔力に関してしか聞けてないような?
...てか美少女願望強すぎて忘れてたけど、髪質変えるだけなら出来たんじゃないかな?
体作り替えるのも激痛伴えば可能な訳だし...。
......混乱し過ぎてだめだ。
この世界に来て既に後悔と不安でいっぱいである。




