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【06】襲撃作戦・後編

第六話です。

「<アクアバインド>!」


唐突に響く女性の声。


それと同時に水の鎖が現れ、精霊(ラディア)に目を奪われていた傭兵達を次々に拘束していく。


「こ、これはっ!?あの(アマ)!いつの間に拘束を解きやがった!?」


水の鎖が飛んで来た方に目を向ければ、そこにいたのはレイド達が捕らえたエルフの少女。


隙を突かれて拘束されたレイド達は、苦々しい表情を浮かべる。


水の鎖はヴィルムにも向かってくるが、間に入ったラディアが全てを払い落としていく。


(精霊魔法か。魔力の密度が高い。それなりに精霊との関係が良好な証だな)


ラディアを信頼しているヴィルムは、向かってくる水の鎖にも動揺せず、平然と相手を分析する。


拘束魔法を全て無効化されたエルフは、憎々しげにヴィルムを睨み付け、その苛立ちを隠そうともせずにぶつける。


「ちょっとアンタ!精霊様の御里の場所を人間に教えるなんてどういうつもり!そんな事したらどうなるか、わからない訳じゃないでしょ!?」


(はぁ・・・。もう少し大人しくしてくれてれば面倒もなく終わってたのに。まぁ、仕方ないな)


「他人の考えがわかる筈もない」と思考を切り替えたヴィルムはエルフに対峙する。


「私の契約さえ完了してしまえば、後の事なんて知った事ではありませんね。要は私の利益になるかならないか、それだけです」


「なん・・・ッ!?」


傍若無人なヴィルムの発言に、怒りのあまり言葉を失うエルフの女性。


「まぁ、価値観の違う他人(ひと)と話しても無駄ですね」


「ヴィ、ヴィルム、さん!出来るなら無傷で捕らえてくれ!あれは今回の目玉商品なんだ。報酬は弾む!」


淡々と構えるヴィルムを見たレイドは焦った様子で懇願する。


稀少なエルフの奴隷を売って出る利益は相当な物なのだから当然だろう。


「いえ、報酬は必要ありませんよ。ただ、そうですね。今後、私が契約したい精霊を見つけた時は、今回と同じ様に協力して頂く、と言うのはどうでしょう?」


ヴィルムの提案に目を見開くレイド。


「か、可能なのか!?わかった!協力する!だから、頼む!」


「約束ですよ?」


ヴィルムはレイドにニッコリと笑いかけ、視線をエルフの少女に戻す。


「さて、そんな訳で貴女を拘束させて頂きますね。まぁ、抵抗するならお好きにどうぞ」


「嘗めるなっ!精霊様、私に力をお貸し下さい。〈アク━━━」


「ラディア」


『承知した。〈グラウンドプリズン〉』


エルフの少女が魔法を放つ前に、周囲の地面が隆起し、反応出来ない程の速度で彼女を閉じ込める。


彼女を捕らえた土は、獣を閉じ込めておく様な檻の形へと瞬時に変化した。


「嘘ッ!?魔力の伝達速度が早すぎる!」


あっさりと捕まった事に狼狽するエルフ。


召喚された精霊が指示に従った魔法を行使する為には、召喚士から精霊へ魔力を譲渡する必要がある。


対して精霊魔法は自身が放つ魔法に精霊が魔力を上乗せするだけでいい。


故に魔法を放つ速度は、基本的に精霊魔法の方が早い。


にも関わらず、精霊魔法よりも早い速度で魔法を放ったラディアは、エルフの目から見れば驚くに値する出来事だった。


「ラディア、連れて行くんだから閉じ込めるだけじゃダメだろう。手足だけ拘束して馬車に転がしておいて」


『む・・・そうじゃったの。〈アースバインド〉』


ヴィルムに問題点を指摘されたラディアが別の魔法を唱えると、新たに隆起した土がエルフの手足を拘束する。


手足の拘束を確認した後、グラウンドプリズンを解除したラディアは、エルフを担ぎ上げ、馬車に押し込んだ。


ジタバタともがきながら「精霊様!正気に戻って下さい!」だの、「アンタ!精霊様に何をしたのよ!」等と喚き散らしてうるさかったので、猿轡(さるぐつわ)のオマケも付けておいた。


その間に、アクアバインドで拘束されたレイド達を開放していくヴィルム。


「いやぁヴィルムさん、助かりました。まさか自力で拘束を解けるとは思わず油断してましたよ」


助けられた事で警戒が解けたのか、レイドは親しげにヴィルムに話しかける。


「いえ、彼女は精霊術士の様ですから、契約している精霊が拘束を解除したのでしょう。ラディアは彼女が契約している精霊より上位の存在なので、今回の拘束は解けませんよ。それよりも、約束の方、よろしくお願いしますね」


「もちろんですとも。“自分の利益になるかならないか”でしたか。全くもって同感です。まだ会って間もないですが、今後はビジネスパートナーとしてお願いしたいくらいですよ!」


レイドは自分達が苦労の末捉えたエルフをあっさりと無傷で無力化させたヴィルムと繋がりを持てた事に上機嫌だ。


「まぁ、その話は今回の契約がうまくいってからという事で」


意味深な笑みを浮かべて返答するヴィルム。


その表情と言葉に「今回の契約がうまくいけばビジネスパートナーとなっても良い」という意味を感じたレイドは更に機嫌をよくする。


「おぉ、これはこれは。少々気が早かったですね。お前達!今後ヴィルムさんに対して失礼な事はするなよ!まずは先の契約をきっちりこなし、是非とも俺達の仲間になってもらおうじゃないか!」


「おおっ!ヴィルムさん、これからよろしく頼むぜ!」


「ヴィルムさんと精霊がいるなら、これからの仕事も怖いもんなしだな!」


「あぁ・・・ラディアさん。美しい・・・」


自分達を助けてくれた事と、レイドの態度の変化につられたのか、傭兵達もヴィルムに対しての警戒心が薄れているようだ。


「さて・・・」


レイドはヴィルムに背を向けて馬車の中を覗くと、先程までとは別人の様な表情でエルフを睨み付ける。


「さっきはよくもやってくれたな?覚悟しておけ。この仕事が終わったら、この場にいる全員で壊れるまで犯してやる。恨むなら、浅はかな行動をとった自分を恨むんだな」


レイドは、ヴィルムからの依頼料とヴィルム自身への繋がりを持てた事で、エルフの少女以上の利益を得たと確信した。


故に、本来であればエルフの少女に手を出すつもりはなかったが、自身の命を(おび)かした彼女への報復を決めたのだ。


猿轡をされている為に喋れないエルフの少女は、気丈にも睨み返す。


が、やはりその瞳には若干の恐怖が宿っていた。


その表情を見たレイドは満足そうに笑うと、馬車の幕を閉じてヴィルムの側へ戻っていった。






* * * * * * * * * * * * * * * *






森の深部へと進むヴィルム達。


傭兵達の表情に不安や焦りはなく、むしろ悠々とした雰囲気が漂っている。


大地を司る精霊、ラディアを警戒しているのか、森の魔物達が寄り付かない為、浅いエリアを進んでいた時よりも順調だからだ。


「さて、この辺りですね」


流石、浅いエリアとはいえ、魔霧の森を通り抜ける実力を持つ傭兵達である。


到着を告げるヴィルムの言葉に、瞬時に緊張感を取り戻す。


依頼主であるヴィルムが精霊との契約を済ませる間、彼を魔物の驚異から守らなければならないからだ。


しかし、この依頼がうまくいけば、ヴィルムに協力してもらう事で、自分達はもっと安全に、もっと多くの利益を得る事が出来るようになる。


そう考える彼らの表情には、何としてもこの依頼を達成してみせるといった意気込みが見えた。


「では全員が配置につき次第、ラディアを送還し、精霊との契約を始めます。皆さん、よろしくお願いしますね」


ヴィルムに背を向けて、周囲の警戒を始める傭兵達。


レイドも馬車の近くに行き、ヴィルムや傭兵達の邪魔にならないようにしている。


全員の配置を確認したヴィルム。


「ラディア━━━、殺れ」


『〈グラウンドヴァイパー〉』


隆起した大地が瞬時に大蛇の(アギト)を形成し、ヴィルムを信用していた為に、ほんの一瞬だけ反応が遅れた傭兵達を全て呑み込む。


蛇が獲物を丸呑みにするように。


文字通り、全てを。


傭兵達を呑み込んだ大蛇は、地面に潜る様に溶け込んでいく。


大蛇は彼らが死ぬまでその拘束を緩めない。


例え拘束を抜け出したとしても、その場所は深い、深い地中。


窒息する前に抜け出す事は、不可能だ。


呑み込まれた傭兵達は、魔霧の森に生い茂る木々の養分になる事だろう。


一方、馬車の近くにいた為に難を逃れた、否、見逃されていたレイドは、状況が飲み込めずに混乱していた。


(な、何だ今のは!?何が、どうなっている!)


一瞬にして大蛇に呑み込まれ、地面に引き摺り込まれた傭兵達。


森の魔物相手でも引けをとらない実力者達が、何も出来ずに消されたのだ。


如何に肝が据わっているレイドであっても冷静でいられる訳がない。


そこに、傭兵達の討ち漏らしがないかを確認しながら歩いてくるヴィルムが目に入る。


あの時聞こえたのは、間違いなく彼の「殺れ」という声。


(あれは、こいつが!?)


混乱と恐怖で、身体が動かない。


動悸は激しく、息苦しいのに、氷の様に冷たい汗が滝の如く流れ落ちる。


立っていられなくなったレイドは、その場に跪く様に倒れこむ。


苦しむ胸を抑え、決死の思いで見上げた瞳に映るのは、冷徹で、冷酷な眼。


レイドの生存を許さない眼。


命乞いは通用しないと確信させる眼。


それを理解した瞬間、レイドの身体は生存を拒絶するがの如く痙攣する。


肺は空気を取り入れる事を拒み、心臓は身体の痙攣とは真逆にその活動を止める。


レイドの身体が痙攣を止めた時、彼の生命活動は終わりを迎えた。


自身で死を選んだレイド。


ヴィルムの手によって無残に殺されなかっただけ、まだ良かったのかもしれない。

話の構成が苦手なのと語呂が貧困なせいで、話の進むスピードにムラがありますねー。

他の作者様方の頭の中がどうなってるのか見てみたい。


頭が悪いクセに勿体ぶった言い回しをしたがるからこんな目に会う典型的な作者であるw


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