表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/115

【56】帰郷、そして・・・

書籍版・忌み子と呼ばれた召喚士は2019年3月9日発売予定です。

追加の情報につきましては、TOブックス様のHPを閲覧頂けますと幸いです。

オーマと約束した二週間が経過し、ヴィルム達は予定通りにファーレンを出立する事になった。


見送りにきているのはオーマのみだが、シャザール達には個人個人で挨拶を済ませている上、長期間いなくなるという訳でもないので不思議ではないだろう。


「なぁ・・・やっぱりオレもついて行っちゃダメか?」


オーマのバトルセンスは相当高いらしく、二週間という短期間の修練にも拘わらず、明らかに戦闘能力が高くなっていた。


故に、尚更ヴィルムに付いて鍛練を続けたい思いが強いのだろう。


「駄目だ。約束は果たしたし、戦闘時に置ける欠点とその鍛練方法も教えた。前にも言ったが俺達にも事情があるから連れていく事は出来ない」


「ダメかー・・・ま、そういう約束だったし仕方ないよな」


きっぱりと同行を断られて項垂れるオーマだったが、元々駄目元だったのか、思いの外、復活が早い。


「オーマくんはこれからどうするんですか?」


「特に決めてないけど・・・しばらくはこの街に留まる予定かな。ギルドマスターもかなり強そうだし、ヴィルムさんが戻ってくるまではこの街を拠点にして鍛える事にするよ」


「あんまり無茶したらダメよ? 今までの調子で怪我しても治してあげられないんだから」


この二週間で女性陣二人組とオーマの距離は割と縮まったらしい・・・とは言うものの、異性としてというよりはやんちゃな弟を見るような感じではある。


お互いに別れの挨拶を交わした後、ヴィルム達はハイシェラの背に乗り、ファーレンの街を飛び立った。






数時間の空の旅を終え、魔霧の森から少し離れた場所に着地するハイシェラ。


魔霧の森に直接向かわないのはハイシェラの巨体が他人の目に止まるのを防ぐ為である。


周囲に人の気配がない事を確認したヴィルムは、ハイシェラに指示を出して小型化を促した。


ハイシェラの身体が仄かに発光し、徐々に小さくなっていく。


「流石にそのままだと森の魔物にも狙われるだろうから、俺の懐に入ってろ。ハイシェラ」


『わかっター。ヌシ様の命令に従うヨー』


どうやらこの二週間の間に発声器官も安定したようである。


ヴィルムの言葉に従い、その懐に潜り込んだハイシェラが首元からひょっこりと顔を出した。


「わぁ! ハイシェラちゃん可愛いです!」


「話は聞いてたけど、実際目にするとびっくりするわね。フー様の御力らしいけど・・・一体どうなっているのかしら?」


『大きさは・・・ワタシと同じくらいね!』


三人にとっては初御披露目となるハイシェラの小型化だが、事前にヴィルムからの説明を受けている為、大した動揺もなく受け入れられている。


クーナリアは目を輝かせ、メルディナは興味深げに、ミゼリオにおいては謎の対抗心を燃やしながらその姿を眺めていた。


その後、魔霧の森へと足を踏み入れた一行は、迷いなく進んでいくヴィルムの後ろをついていく。


時折出現する魔物達はクーナリアが先陣を切って対峙し、メルディナがミゼリオと共にそのサポートをする事で多少苦戦しながらも問題なく倒していった。


まだ浅いエリアとはいえ、鍛練を始めて一年にも満たないクーナリアが、森の魔物と互角以上に渡り合えているのは外界の人々から見れば異常という他ないだろう。


なお、ヴィルムは三人の様子を見つつも、自生している薬草や山菜、果物等を採取している。






森に入ってから六日目。


奥に進むにつれ、三人の手に負えなくなってきてからはヴィルムが戦闘に加わり・・・というよりは彼一人で片付けてしまっていた。


森を出る時と同じく、気絶させるだけに留めていたが、ヴィルムの無双っぷりは健在である。


女性陣の三人も、今まで自分が戦ってきたからこそ、ヴィルムの戦闘力の高さを更に実感したようだ。


もうそろそろ里に到着するという時、凄まじい突風が吹き抜けた。


魔物の襲撃かと身構えて周囲を見回すクーナリアとメルディナだったが、その視線がヴィルムの頭上付近に向けられるのと同時に、緊張感が霧散する。


『おかえり、ヴィー兄様。くんくん、スー、ハー、スー、ハー・・・あと皆も、いらっしゃい』


「ただいま、フー。迎えにきてくれたのか?」


『ん。姉様達も、一緒』


フーミルが指差す方向に目を向けると、丁度ヒノリとラディアが歩いてくる所だった。


『あ、いたいた。おかえり、ヴィルム。クーちゃん、メルちゃん、それにミオちゃんも、よく来たわね』


『久しいのぉ。ヒノリやフーから話は聞いておったが・・・なるほど、更に良い顔付きになっておるわ。メルディナとクーナリアも随分と成長したようで何よりじゃ』


「お久しぶりです。再び精霊様の御里にお招き頂き、ありがとうございます」


「お、お久しぶりです。えと、あの・・・今日からお世話になります!」


気楽に話し掛けるヒノリとラディアに対し、メルディナとクーナリアの二人には緊張が見られる。


ヒノリとは外界でかなり打ち解けていたが、ラディアについては彼女が長身な事や里を出て以降付き合いがなかった事で、若干の圧迫感を感じているのだろう。


『ん。ところで、ハイシェラは?』


ヴィルムに背負われる形となったフーミルは、この場にいるはずなのに姿の見えない自分の眷族の姿を探してキョロキョロと辺りを見回す。


『フー様、ここにいるヨ』


ヴィルムの懐で大人しくしていたハイシェラがひょこんと顔を出し、肩に頭を乗せているフーミルを見上げる。


その声でハイシェラと目があったフーミルは、一瞬の沈黙後、小さく震え始めた。


『小さくなって、ヴィー兄様の懐に、潜り込む、だと・・・? ハイシェラ・・・もしかして、天才?』


フーミルが驚愕に満ちた視線をハイシェラに向けていると、それに気付いたヒノリやラディアも近付いてきた。


『ほぉ? このちっこいのがフーに本気を出させたという飛竜かの?』


『あらま、随分と小さくなったわね~・・・ホレホレ』


『やめテー』


ヒノリ達が指で撫で回すと、ハイシェラはくすぐったそうに身体を捩らせる。


和気藹々(わきあいあい)とした時間が流れ、そろそろ里に入ろうかという時━━━、


「!?」


突如、何かの気配に感付いたヴィルムは自身に身体強化を施し、ギリギリ視界に入るくらいに離れた場所にある大木に向かって大地を蹴った。


「シッ━━━!!」


一瞬にして大木の裏側に回り込むと同時に、全力の蹴りを放つ。


しかしその蹴りは、特に何を捉える訳でもなく、大木の表面に触れるかどうかの位置で止められていた。


(誰もいない? 森の魔物とは違う何かに見られていた感じがしたんだが・・・久しぶりに帰ってきたから、神経が高ぶってるのか・・・?)


しばらくの間、注意深く周囲を探るヴィルムだったが、いつもと変わらない森が広がっているだけであった。






* * * * * * * * * * * * * * *






警戒を解いたヴィルム達が里に入ってからしばらく。


ヴィルムが何かの気配を感じ取った大木の根本で空間に揺らめきが発生する。


その揺らめきから現れたのは、所々が破れたフードを目深に被った黒目黒髪の青年、ユリウスと、ウェーブのかかった黒に近い紫色の髪をツインテールにまとめている少女、ヨミであった。


「あー、びっくりした。あの距離で気付かれるなんて思わなかったよ」


『・・・ゆだんした。ごめんね? ゆーり』


「気にしなくていいさ。結局バレなかったんだし、スリルもあって面白かったしね」


しょぼくれるヨミの頭を優しく撫でて慰めるユリウス。


その手つきからユリウスの言ってる事が本心だとわかったのか、ヨミはほっとした表情で受け入れている。


「でも、魔霧の森に精霊達の棲み処があるなんてね。これはまた、楽しい事になりそうだな~」


ヴィルム達が来た方向とは別の方向に歩き始めたユリウスは、肩を震わせながら、静かに、そして楽しそうに笑っていた・・・。

書籍化にあたっての作業に忙殺されております(笑)

週一更新でさえギリギリだというのに他の作家様方はどんな生活サイクルを送っておられるのか全くの謎ですね(汗)


ヒュマニオン王国の一件以来、ようやく物語が進行した感じがします。

ハイシェラも喋れるようになったので、キャラの把握が大変になる事は間違いなさそうです。


お時間がありましたら、感想や評価を頂けますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ