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【03】精霊の里

『忌み子と呼ばれた召喚士』連載開始記念第三話!

まだまだ続くぜ!

『ヴィルム。残りの死体も燃やしといたわよ』


「あぁ、ありがとう。ヒノリ姉さん」


黒目黒髪の青年ヴィルムと、炎を司る精霊であるヒノリは、冒険者ギルドのAランクパーティ〈遺志無き魔剣〉の痕跡を探し、消して回っていた。


特にジュエルツリーとの戦闘があった場所は念入りに擬装した。


彼らの住む場所を悟られない為にも必要な措置である。


しかし、その全てを消し去ってしまっては、逆に不審に思われる可能性が高くなってしまうので、擬装や隠滅は一定の範囲内だけに留める。


「うん。取り敢えずこんなものかな。じゃあ、ヒノリ姉さんは先に帰ってて。送還(おく)るからさ」


『んふふ~♪い・や♪』


召喚したヒノリを先に(かえ)そうと魔力を集中し始めるヴィルムだったが、ヒノリ自身から断られてしまう。


「・・・何で?」


『最近、ヴィルムと二人きりになれなかったじゃない?ゆっくり歩きながら帰ろうよ。お姉ちゃんはヴィルムとのデートを希望します』


「わかった。しっかりエスコートさせてもらいますよ、お姉様」


やや芝居がかった言い回しをするヒノリとヴィルム。


先程の戦闘時の冷酷な様子は一切感じられず、まるで別人の様に思える二人。


『やった♪ヴィルムならそう言ってくれると思ってたよ』


嬉しそうにヴィルムの腕に抱き付くヒノリ。


必然、女性の象徴であるふくよかな(それ)が押し付けられる形になる訳だが、彼は照れたり慌てたりする素振りを見せない。


「じゃあ、帰ろうか」


優しい微笑みをヒノリに向けて、歩き出す。


大事な家族達が住む場所へと。






* * * * * * * * * * * * * * * *






青々と生い茂った木々。


枝葉の間から、暖かな陽射しが周囲(あたり)を包み込む。


頬を撫でる風が心地好く、爽やかな草花の香りを運んでくる。


元気に飛び交う小さな妖精達。


木々の枝や岩に腰掛け、楽しそうに談笑する精霊達。


ヴィルム達の住む、精霊の里。


『あ、ヴィルムくんとヒノリが帰ってきたよ』


『ホントだ。ヴィルムくーん、ヒノリー、おかえりー!』


『うー、ヴィルムくんと帰り道デートなんて羨ましい。ヒノリずるいよぉ』


談笑していた精霊達はヴィルム達に気が付くと笑顔で出迎える。


「皆、ただいま」


『ふふ~ん。喚ばれた精霊(もの)の特典ね。ヴィルムの逞しい(もの)(これ)で挟んであげたり、ゆっくりリードして貰ったり。久しぶりにヴィルムを堪能したわ』


実際は腕を組んで歩いて帰って来ただけなのだが、ヒノリの勘違いを増長する言い回しにキャーキャー騒ぎ出す精霊達。


ヒノリは嬉々として話しているが、ヴィルムの方は「しょうがない姉さんだな」と苦笑いだ。


「あー、ヒノリ姉さん?俺は母さんに報告して来るから、先に行くよ」


『おっけー!私は里の皆に、今日のヴィルムの勇姿を熱く語っておくからね!あとデートの自慢話も!』


「・・・程々にね」


先の戦闘を芝居の様に演じ始めるヒノリと、それを楽しむ精霊達に別れを告げ、精霊達の、そして自分の母たる存在の元に向かうヴィルム。


その途中、飛び回って遊んでいた小さな妖精達に囲まれる。


『ア、オカエリ、ヴィルム。マリョク!マリョクチョウダイ!』


『ワタシモ!ワタシモ!』


『ワタシハアソビタイ。アソンデ!アソンデ!』


「あぁ、今から母さんに報告しに行くから、その後でね」


この世界の妖精は、精霊になる前の幼体である。


子供であるが故、遠慮する事なく要求を突き付けてくる妖精達に、柔らかな笑顔を向けて約束するヴィルム。


『ワカッタ!ヤクソク!』


『ヤクソク!ヤクソク!』


『マリョク!アソブ!ヤクソク!』


要求が通った事に満足したのか、満面の笑みでブンブンと手を振りながらヴィルムを見送る妖精達。


ヴィルムも笑いながら手を振り返し、妖精達と別れた。


その後も精霊や妖精達に出会う度に声を掛けられ、その度に笑顔で応えるヴィルム。


その様子から、ヴィルムと精霊や妖精達が、互いに家族の様に思い合ってる事がよくわかった。






さて、多くの精霊や妖精達と言葉を交わしたヴィルムだったが、ようやく目的の場所に辿り着いた。


精霊の里、その中央に位置する、空まで届くかと錯覚する程の巨大な大樹。


大樹の根元に繋がる様に存在する、木製の玉座。


両隣には、二人の上位精霊が控えている。


薄紫色の長い髪に、精霊達が皆、そうなのであろう整った顔立ち。


二人の容姿は酷似している。


おそらく双子だろう。


・・・胸部にだけは明確な違いが出ているが。


そして、玉座に鎮座するは里の女王。


絹糸の様に滑らかで輝かんばかりの美しい金髪。


切れ長の眼、スッとした鼻筋、ふっくらした唇、ゆったりとした上品さを感じさせるシルクの服に包まれたプロポーション、全てが完成された美術品の様だ。


老若男女関係なく見惚れてしまうであろう美貌である。


しかし、その存在感は明らかに別次元のものである。


もし、先程の〈遺志無き魔剣〉のメンバーがこの場にいたとすれば、意識を保つのがやっとといった所か。


ヴィルムは玉座の十数歩手前で立ち止まり、跪いた。


「ヴィルム=サーヴァンティル、帰還致しました。今回の侵入者達の件について御報告させて頂き━━━」


『ヴィルくぅぅぅん!!』


女王の威厳は一瞬で霧散しました。


玉座から踊る様に跳躍した女王は、そのままヴィルムに抱きつき、押し倒す。


『ヴィルくん大丈夫?どこか怪我してない?痛い所はない?身体に違和感とかあったら我慢せずにちゃんと言うのよ?』


「問題ありません。侵入者の方も全員倒し、痕跡も里に近い物は全て擬装又は隠滅してあります」


突然押し倒されたにも関わらず、ヴィルムの表情に驚きや焦りはない。


淡々と報告しているが、女王に押し倒されている格好なので、かなりシュールな状態である。


『あぁもうヴィルくんが無事で良かったわ。ヴィルくんが怪我でもしたらお母さん発狂しちゃうんだからね!大体、侵入者なんて里の皆でやっつけちゃえばいいのよ。そうすればわざわざヴィルくんが危ない事をして怪我する心配もないわ。それに━━━』


『サ、サティア様?ヴィルム殿が御心配だったのはわかりますが、(おおやけ)の場ですので御自重なさって頂けないでしょうか?』


『そ、その通りです。ほ、ほら、ヴィルム殿はしっかり御報告に来られたのですから』


ヒノリ以上にヴィルムへの愛情を暴走させる女王(サティア)を何とか宥めようとする二人の上位精霊。


今のやり取りを見ただけで、この二人の気苦労が伺える様だ。


『むぅ、二人に言われちゃ仕方ないわね』


二人の言葉に渋々といった感じで玉座に戻り、先程の威厳と存在感に溢れた女王になる。


何かもう全部色々台無しであるが・・・。


『ヴィルム、ご苦労様でした。この場所に我々の里がある事が知られれば、人間達は大挙して押し寄せて来るでしょう。負けるつもりはありませんが、彼らは狡猾で数が多い。我が子達にも多くの犠牲が出る事は想像に固くはありません。貴方はその被害を未然に防いだのです。胸を張り、誇りなさい』


「はっ!身に余る光栄にございます」


ヴィルムに労いの言葉をかける女王(サティア)は、先程のやり取りをしていた人物とは思えない。


『ヴィルム殿。(くだん)の詳細は後日お聞きしますので、本日はゆっくり身体を休めて下さい』


「はい、ありがとうございます」


ゆっくりと立ち上がり、両手を前に組み、深く拝礼をするヴィルム。


『これにて、女王(サティア)様との謁見を終了致します』


その声に合わせて顔を上げるヴィルム。


先程の凛々しい表情ではなく、優しく柔和な笑みを浮かべていた。


女王(サティア)や側近の二人も表情を崩し、見惚れる様な笑顔でヴィルムを見つめる。


「ただいま、母さん」


『おかえりなさい、ヴィルくん』


まずは家族の長である、(サティア)に。


「ただいま、ジェニー、ミーニ」


『『おかえりなさいませ、ヴィルム様』』


そして家族(じぶん)達に仕えてくれている、双子の姉妹に。


ヴィルムは想う。


この家族を、仲間を、この幸せに包まれた里を、誰にも壊させはしないと。

あらすじにもありますが、ヴィルムは家族や仲間にデレ甘です。

家族や仲間を害する者には一切容赦しません。


ヒノリはヴィルムくん大好きなお姉ちゃん。

サティアはヴィルムくん命なお母さんです。

ジェニーやミーニは側近兼世話役といった所でしょうか。

精霊の里にいる妖精や精霊は皆ヴィルムくんが大好きです。


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