【28】アクティブ姫と暴走くっころ女騎士
何とか毎日の更新に間に合っている状態です。
今月末までは毎日更新でいきたいけど厳しそうかなぁ(汗)
山賊団を討伐してから二週間程経った。
Cランクとなったヴィルム達だが、特に受注する仕事を変える訳でもなく、今まで通りに高クオリティな仕事っぷりを発揮していた。
強いて言えば、より強い魔物が出てくる討伐系依頼を選ぶようになったくらいである。
さて、いつもの様に冒険者ギルドへと向かうヴィルム達だったが、道中の裏路地から言い争うような声が聞こえてきた。
「ちょっと、離しなさいよ! こっちは急いでるのよ!」
「そう邪険にすんなよ。この辺は危険だから、案内してやるって言ってるんだぜ?」
「そうそう。別に下心なんてないって。ただの親切心さ」
「必要ないわ。いいからさっさと離しなさい!」
どうやら男が三人程、女性に絡んでいるらしい。
気の強い女性らしく、手首を掴まれていても気丈に睨み付けている。
「助けないと━━━ってヴィル!?」
「お師様!?」
メルディナとクーナリアが目にしたのは、物語の主人公のように颯爽と女性の救出に向かうヴィルム━━━
「ちょっと!どこ行く気なの!?」
━━━ではなく、我関せずと冒険者ギルドに向けてスタスタと歩を進める彼の姿だった。
二人に呼び止められた事で振り向くヴィルム。
「どこって・・・早くギルドに行かないと良い仕事がなくなるって教えてくれたのはメルディナだろう?」
「あの娘を見捨てるつもり!?」
「見捨てる、と言われてもな・・・。あの女は知り合いなのか?」
「いやそれは・・・知らない娘、だけど・・・」
「だったら、助ける必要はないんじゃないか?」
「・・・あぁもう! 私達が助けたいから助けるの! ちょっとだけ付き合って!クーナ、行くわよ!」
「は、はいです!」
不思議そうに首を傾げるヴィルムの手を、片方ずつ掴んで引っ張っていく二人。
ヴィルムは二人の意図がわからず、とりあえずなすがままの状態だ。
近付いてくる気配に気が付いたのか、男達が顔を向ける。
「なんだぁ? 今イイ所なんだから邪魔すんじゃ・・・って、おいおい、こっちの女達も可愛いじゃねぇか」
「なになに? キミ達も一緒に遊びたいの?」
「これで丁度三対三になった・・・うげっ!?」
最初はメルディナとクーナリアしか目に入ってなかった男達だったが、ヴィルムを視界に捉えた瞬間、その表情が恐怖に歪む。
「や、やべぇ! こいつ、カバッカ達をボコボコにした忌み子だ!」
「って事はこの三人、“山賊殺し”か!?」
「あ、あんた達に逆らうつもりはねぇ。大人しく引き下がるから、許してくれ!」
カバッカ達との喧嘩騒ぎと、三十人の山賊達をほぼ皆殺しにしたヴィルム達の噂は、今やファーレンに住まう人々の中で知らない者はいない程に広まっていた。
先程までの態度が嘘のように逃げ出す男達。
あまりに見事な逃げっぷりに、メルディナとクーナリアは行動に移るきっかけをなくしてしまった。
ヴィルムに至っては、元から手を出すつもりもなかったので、傍観の一手である。
珍妙な静寂を打ち破ったのは、絡まれていた女性だった。
「えーっと、とりあえず、助けてくれてありがとう」
年の頃は十四~五歳といった所だろうか。
桃色の髪を纏め上げてポニーテールにしているせいで、若干幼く見えているかもしれない。
活発そうな顔付きに合った動きやすい服装は、彼女の雰囲気をより明るいモノに感じさせる。
男達に乱暴な掴まれ方をされたせいか、袖口が少々破れてしまってはいるが。
「いえ、そんな。すぐ逃げ出しちゃったから何もしてないし・・・」
「私達、というより、お師様を見て逃げ出してましたです・・・」
三人の視線がヴィルムへと向けられる。
「黒目で黒髪・・・。そう、貴方がヴィ━━━」
「ひぃぃめぇぇぇさぁぁぁぁまぁぁぁぁぁっ!!!」
観察するかのようにヴィルムを見つめる女性が話かけようとした時、地鳴りがする勢いでこちらへと駆けてくる女騎士の姿。
「むむ! 姫様の服の破れ! そこに居合わせた目付きの悪い男! 判決!私的に死刑だ貴様ァ!!!」
砂煙を巻き上げる速度でやってきた女騎士は、その勢いのまま跳躍・抜剣し、盛大な勘違いと共にヴィルムへと襲い掛かかる。
「ん?」
降り下ろされる剣を半身だけずらして避けるヴィルムだが、女騎士の技量もかなり高い様で次々と剣撃を繰り出していく。
「ちょっとリスティ!? やめなさい! その人は━━━」
「御安心下さい姫様! このリスティアーネ、姫様を拐かそうとしたこの賊をすぐにでも討ち取ってみせます! 死ねオラァ!!」
姫と呼ばれた女性が必死で説得しようとするが、勘違いの極致に至った女騎士の耳には届いていないようだ。
雄叫びをあげながら、間断なく鋭い剣撃を放ち続ける彼女の猛攻を、剣筋全てを視認しながら軽々と避けていくヴィルム。
あまりにも自身の攻撃が当たらない事に、リスティアーネは業を煮やしていった。
「くっ! 賊の分際で! 生意気な! 大人しく! 私に! 斬られてしまえ!!」
疲労からか、苛立ちからか、剣撃から徐々に精細さが抜け落ちけていく。
(何か勘違いをしているようだが、話し合うつもりはないらしいな。殺気を感じるんだが、これでも殺しちゃダメなんだろうか?)
「・・・組み伏せるか」
襲撃者に対する対応の難しさに悩むヴィルムは、とりあえず彼女を無力化する事に決めたようだ。
「はんっ! さっきから避けてばかりの貴様が私を組み伏せるだと?」
対するリスティアーネはその呟きが聞こえた様だが、今まで一切反撃がなかったヴィルムの言葉に嘲笑で返━━━
「面白い冗談だな! やれるものならやってみのぉわぁぁぁあっ!?」
━━━した途端、物理的に引っくり返された。
仰向けの状態に組み敷かれたリスティアーネは、慌てて拘束を解こうと暴れるがビクともしない。
どうしようもない事を悟ったのか、暴れる事を諦めたリスティアーネは、せめてもの抵抗とばかりにヴィルムを睨み付ける。
「くっ、殺せ! 騎士として、屈辱を受けるくらいなら死んだ方がマシだ!」
はい、“くっころ”発言頂きました。
これが普通の物語や十八禁作品であれば、この状態から予想される結果は大体決まっているのだが、そこは我らが非常識さん。
「わかった」
リスティアーネの言葉に頷いた彼は、即座に拳を振り上げる。
「「「「へ・・・?」」」」
あまりにも淡々としたヴィルムの返事に間の抜けた表情になるリスティアーネ。
メルディナやクーナリア、姫と呼ばれた女性も呆気にとられた表情を浮かべている。
「おわぁぁあぁあっ!?」
その振り上げられた拳の意味を理解した瞬間、リスティアーネは全身全霊を越えた、これまでの人生で最高だと言える力を込めて、自身の上半身を出来うる限り横へと逸らす。
〝ボゴゴォッ!〟
ヴィルムの拳が、地面にめり込む。
頭に当たっていれば確実に潰れたトマトになっていただろう事は想像に難くない。
めり込んだ拳を見て、青ざめつつ金魚のように口をぱくぱくさせるリスティアーネ。
〝ギギギギッ〟と錆びた機械がかろうじて動く様な音をたててヴィルムへと視線を移す彼女が見たものは、不思議そうな表情を浮かべてる彼の顔だった。
「ん? 何故避ける?」
「よ、避けるに決まってるだろ! 危ないじゃないか! 死んだらどうしてくれる!?」
「いや、殺せと言ったのはお前だろうに・・・」
猛抗議をするリスティアーネだったが、当のヴィルムは何故自分が責められているのかよくわかっていない様子だ。
「様式美というものを知らんのか!? 普通、女騎士が「くっ!殺せ」と言ったら「簡単には殺さん。貴様の身体で楽しませてもらおう」という感じで私を犯して楽しむ所だろう!?」
「知らん。何で俺が会って間もないお前と子作りせにゃならんのだ」
(あ、今のお師様の台詞、モノスゴく聞いた事あるです)
シチュエーションこそ違うものの、以前に全く同じ台詞を言われたクーナリアは、その時の光景を思い出して赤面する。
我に返ったメルディナがヴィルムを説得して引き剥がし、姫と呼ばれた女性はリスティアーネを正座させて勘違いで襲い掛かった事を叱責している。
叱責されているリスティアーネの表情が恍惚としたものに見えたのは多分きっと勘違いだったに違いない。
今回のヴィルムとくっころ女騎士のやりとりはこの作品を書き始めた当初からやりたかったネタでした。
ちなみに最初は姫騎士の予定だったのですが、絡みの都合上、分離してリスティアーネが誕生した形になりますね。
次回は5/21投稿予定です。




