【21】初仕事:夜の部
ぶっちゃけ三部にする必要なかった気がします。
ただのまとめ回みたいな感じなので、めっちゃ短いです。
「それでは、ヴィルとクーナの初仕事成功を祝って━━━」
「「かんぱ~い!」」
「えーっと・・・、かんぱい?」
三件の依頼を完了させた日の夜、三人は〈飛竜の止まり木〉一階にある食堂で初仕事の成功を祝い合っていた。
ヴィルムはよくわかっておらず、メルディナとクーナリアに倣って杯を掲げている。
「失敗するとは思ってなかったけど、やっぱり成功した後の一杯は美味しいわね~」
「アルベルトちゃんのお散歩が終わった後、シルベルトちゃんとも遊んでくれたお礼だって、報酬を大幅に上乗せしてくれましたもんね!」
「帰り際にシルベルトがヴィルから離れたがらなかったのには困ったけどね。ソノッタ夫人の「また指名で依頼を出すから」って説得で納得してくれたみたいで助かったわ。シルベルトってば人の言葉が理解出来てるのね」
クーナリアが言った通りだが、ソノッタ夫人はヴィルム達の仕事を大いに評価し、報酬を金貨一枚から金貨六枚まで引き上げてくれていた。
特にヴィルムには、ソノッタ男爵と夫人以外になつかなかったグレーターウルフから気に入られ、ストレス解消に付き合ってくれた謝礼として別途に金貨五枚が支払われている。
決して、シルベルトと遊ぶ為に檻に入っていたヴィルムの存在を忘れ、そのままアルベルトの元に向かおうとした事に罪悪感を覚えたからではない。
・・・多分。
なお、アルベルトは魔物ではなく、ちょっと人見知りするだけの犬だった。
「ビーラビットのステーキセットと旬野菜のサラダ、ソルトポークのシチューです。お待たせしました~」
小さな身体を目一杯使って料理を運んできたのは、〈飛竜の止まり木〉の一人娘、ルルだ。
最初は五日間の予定で宿をとったヴィルム達だが、思っていた以上に食事が美味であり、サービスも充実していた事で宿泊期間を延長していた。
宿泊費はヴィルム持ちである。
とは言え、メルディナもクーナリアもあくまで借りていると思っているらしく、しっかり返済するつもりでヴィルムから出してもらった金額を記録している。
ヴィルム自身は、魔霧の森で襲撃した冒険者達から奪い取った金なので、別に返さなくていいと思っているのだが。
「お~、きたきた。ありがと、ルルちゃん」
「ルルちゃんのお父さんは本当に料理上手ですよね~」
「特にビーラビットのステーキは凄いわね。下処理が難しくて、失敗すると毒化する肉を見事に調理しているわ。味付けも濃すぎず薄すぎず、ビーラビット独特のほんのり感じられる蜂蜜の香りを殺す事のない絶妙なバランスで仕上げられている。まさに料理人の技よね」
「俺はメルディナみたいに料理の事はわからんが、親父さんの作る飯は旨いと思う」
「えへへ~、そう言ってくれるとわたしも嬉しいです。お父さんの料理はわたしも大好きなので」
自分が褒められたかの様に嬉しそうなルルは、耳をピコピコ、尻尾をふ~りふ~りしながら喜んでいる。
「ルル~、二番テーブルの料理が出来たから運んでくれ~」
「あ、はーい!それじゃあ皆さん、ごゆっくりどうぞ」
厨房から呼ばれたルルは、いそいそと料理の配膳作業に戻っていった。
出された料理に舌鼓を打ちながら、雑談に花を咲かせる三人。
「それで?次に受ける依頼は決めてるの?」
「特に拘りはないが、出来るだけ討伐系の依頼を優先して受注したいとは思っている。もう少し、クーナリアには戦闘経験を積ませておきたいからな」
「むぐむぐ。おふぃはま?」
「ほらクーナ、口に物を入れたまま喋らないの」
今が旬の新鮮な野菜を頬張りながら首を傾げるクーナリアを、メルディナが注意する。
「クーナリアは今が一番伸びる時期だ。訓練は毎日続けているが、訓練は訓練でしかない。実戦経験を積んでおくに越した事はない」
「そうは言うけど、今のクーナリアだとEランクで受注出来る討伐系の依頼に出てくる魔物くらいじゃ練習相手にもならないわよ?それよりも手早く達成出来る依頼を沢山こなして、ランクアップを目指すのもありじゃないかしら?」
「それもそうだな・・・。メルディナ、良さそうな依頼があったら教えてくれ。クーナリアはもうしばらく俺が訓練相手を努める。実戦さながらに殺気も混ぜていくから、そのつもりでいるように」
「んっくん━━━。はいっ!わかりました!」
口元にドレッシングをつけたクーナリアが、元気に返事する。
メルディナが呆れながらもクーナリアの口元を拭ってやっている光景が微笑ましく感じる。
その後も雑談を交えながら食事を続ける三人。
彼らの初仕事は、大成功の内に終わった。
最初は午前の部、午後の部と二話編成だったのですが、昼の部であの終わり方にしたかったので無理矢理三部編成にしました。
次回は5/14投稿予定です。




