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【17】準備完了

これを執筆時点で連載開始二週間前です。

もうちょっとストック書き溜めておきたいですね。

冒険者ギルド初心者講習会。


冒険者ギルドに登録した初心者達が必ず受ける事になる講習会である。


主に冒険者としての最低限のルールやマナー、魔物への対処法や薬草の知識等、冒険者として最低限知っておかねばならない事を教えている。


初心者達が無茶な行動をして命を粗末にさせない為に行われている講習会で、これに参加しなければギルドからの仕事を受領出来ないようになっている。


なお、この講習会も仕事として処理される為、報酬として銀貨一枚と、軽い傷薬代わりになるルオナ草五束が報酬として出される為、意地でも受けないといった輩は滅多に存在しない。


その講義を終えて、冒険者ギルドの待合室に出てきたのはヴィルム達だ。


カバッカ達との一件以来、シャザール達ファーレン上層部の協力もあって、ヴィルム達に絡んでくる者はいなくなった。


陰口を叩いたり、奇異の視線を向けてくる者はいるものの、それは人間族ばかりであり、他種族の住人や冒険者達からはある程度受け入れられ始めている。


カバッカ達は“冒険者ギルドに登録しに来た初心者に数人がかりで喧嘩を売ったにも関わらず、あっさり返り討ちにあった“という噂が流れ始めると同時に、ファーレンの街から姿を消していた。


クーナリアの育成方針も決まり、武器の準備も出来た。


そろそろ本格的に動き始めようかという事で、仕事を受注する為に必要な講習会を受けに来た訳だ。


クーナリアは待合室で待っていたメルディナに、今しがた受けた講習の話をしていたが、ヴィルムは何かを考えている様子。


「お師様?何を考えているんですか?」


「ヴィル?どうしたの?」


そんなヴィルムの様子に気が付いた二人が声をかける。


「あぁ、さっきの講義なんだが━━━」


「やぁ、ヴィルムくん。講習会は終わったようだね。わからなかった事はなかったかな?」


柔らかい口調で近付いて来たのは、この冒険者ギルドのギルドマスターであるシャザールだった。


先日の会合以来、シャザールはヴィルム達の事を気にかけていた。


下手をすれば精霊獣(ヒノリ)が敵に回るので、当然の事だろう。


しかし、過剰にご機嫌取り等はする事なく、あくまで他の冒険者達と同じように接していた。


「シャザ・・・ギルドマスター、質問があるんだが」


冒険者ギルドに所属する以上、ギルドマスターを呼び捨てにするのは良くないとメルディナに教わったヴィルムは、彼女の言葉に従う事にしたらしい。


まだ呼び慣れず、つい口に出してしまってはいるが。


「うん、何だい?」


「講義にあった薬草学についてだ。ルオナ草とクシケドの実の成分抽出方法が中途半端だったんだが、わざとそう教えているのか?」


「「「えっ?」」」


シャザールを筆頭に、メルディナとクーナリアの表情が固まる。


「ルオナ草は一度乾燥させて粉末状にした後、イーバの木から取れる樹液と混ぜ合わせた方が治癒効果が高くなる。クシケドの実は下手に手を加えるより、塩茹でにしてそのまま摂取する方がより多くの毒に対応出来るぞ?」


何でもないように語るヴィルムだが、薬草学の通説を覆す内容である。


ヴィルムの非常識さはわかってきたつもりになっていたシャザールだったが、まだ甘かったと考えを改める事になった。


「すぐに調べてみよう。貴重な情報をありがとう、ヴィルムくん」


手をひらひらさせて応えるヴィルム。


ヴィルムにとっては当たり前の知識であり、特に出し惜しみする事でもなかったようだ。


「セリカくん、私は今から実験に入ります。今日の予定は全てキャンセルして、先方の皆さんには後日御詫びに伺うと伝えて下さい。頼みましたよ?」


「え?ちょっ、ギルドマスター!?」


いつもの柔和な笑みを引っ込めたシャザールは、セリカに有無を言わせず用件を伝えると、ギルドの実験室にこもってしまった。


「え、えぇ~?わ、私が、断るんですかぁ~?」


シャザールの無茶振りに涙目になるセリカ。


他の職員達は同情的な視線は向けるものの、それを手伝う者はいなかった。






* * * * * * * * * * * * * * *






時刻は昼を過ぎていたので、仕事の受注は明日からという事にして、先日訓練を行った場所までやってきたヴィルム達。


今日の訓練は、アッセムの店で購入した大斧での戦闘訓練だ。


「せぇぇぇやぁぁあっ!!」


最初は身体強化を使っても、持ち上げるのがやっとなクーナリアだったが、二時間程経過した現状では、型こそ覚束(おぼつか)ないものの、振り回す程度は出来るようになっていた。


当然、ヴィルムからの助言があったからではあるが、クーナリアは今までのヴィルムの言葉を疑う事なく、真面目に取り組んでいた為、習得の早さは目を見張るものがあった。


今回、ヴィルムが教えた事は、“武器と身体の一体化“である。


身体強化を施すと同時に、その循環ラインに武器を組み込む事によって、武器を己の身体と変わらないレベルで操る事の出来る技である。


武身一体(ぶしんいったい)


この技を習得している者は少ない。


通常の身体強化であれば、漠然とした認識であっても発動する事が可能であるが故に、細かい魔力循環経路を意識する者は極端に少ないからである。


更に、例え魔力循環経路を認識出来ていたとしても、物質に魔力を流し込む事は難しい。


ミスリルや魔石等の特殊な物質にのみ、魔力を流し込む事が比較的容易になのである。


クーナリアは、ヴィルムの治療を受ける度に、少しでも時間が空く度に、自身の正確な魔力循環経路を認識してきた事と、魔力伝導率の高いミスリル+玉鋼で作られたアッセム渾身の大斧を使っている為、粗削りながらも習得出来た訳だ。


一度感覚を掴んでしまえば、後は慣れるだけである。


今後のクーナリアには注目せざるを得ないだろう。


「よし、ここまで。残ってる魔力を循環させて体力を回復させておくように」


「はぁ、はぁ・・・、はい!わかり、ました!」


数日前、初めて訓練した日には立つ事すら出来なかったクーナリアだが、呼吸は乱れているものの、しっかりと自身の足で立っている。


「凄いわね。クーナってば日に日に強くなってるわ」


「正直、最初はすぐ諦めるんじゃないかって思ってたよ。クーナリアの根性には驚かされた」


「あら、ヴィルでも驚く事があるのね?」


珍しい一面を知ったと、クスクス笑うメルディナ。


メルディナは今までの経験や固定概念が邪魔をして、ヴィルム式の身体強化や武身一体を習得する事が出来なかった。


しかし彼女はその事に腐る事なく、地道に習得する為の鍛練(どりょく)を行っている。


クーナリアの成長を心から喜び、僅かに湧き出る焦りや悔しさは努力の糧へと変えていた。


「この数日間で基本は叩き込んだ。後は実戦の中で鍛えていく事にするよ」


「いよいよ、この三人での冒険者活動が始まるのね。クーナは強くなったし、ヴィルもいる。とても心強いわ」


「スゴく楽しみです!お師様やメルちゃんの足を引っ張らないように頑張ります!」


これから始まる、未知の物語に思いを馳せるヴィルム達であった。

外界での冒険準備が完了しました。

次回から冒険開始・・・といきたい所ですが、短めの茶番回と過去編を挟んでからにしようと思います。


次回更新は5/11投稿予定です。

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