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【16】クーナリアの武器選び

今回は、チラッと出てきたあのキャラが出てきます。

まぁ武器選びってだけで誰が出てくるかはわかると思いますが・・・w

クーナリアの訓練を終えて、ファーレンに戻ってきたヴィルム達。


彼らは先日の散策で見掛けた武器・防具屋の建ち並ぶ一角に来ていた


なお、ミゼリオは例の如く姿と気配を消している。


「ん~、なかなかこれといった物がないな」


クーナリアの武器を選びに来ていたヴィルム達だが、思いのほか、目に留まる物がなくあちらこちらへと見て回っていた。


「そうなんですか?さっきの武器屋さんにあったのとか、良さそうだと思いましたけど・・・?」


「あれは刃の部分に難有りだ。(とぎ)が甘くて刃が均一になってない。すぐ刃こぼれするのが目に見えてる」


「・・・ヴィルのお眼鏡に叶う武器なんてあるのかしら?」


そんな会話をしながら歩くヴィルム達。


「おや、ヴィルム殿ではないか」


声のした方を向けば、背は低いながらも鎧のような筋肉を持ったドワーフがいた。


「確か・・・アッセム、だったか?」


先日、冒険者ギルドでの会合にいた事を思い出したヴィルム。


「おぉ、覚えておったか。ワシの知る限り、この街に黒目黒髪の人間はヴィルム殿しかおらんからな。この辺を散策しとるっちゅう事は、武器か防具をお探しかな?」


「そう言えば、生産系ギルドの総括だって話だったな。この子の武器を探しているんだが、良い武器が見つからなくてね。いい店があったら紹介してくれないか?」


ヴィルムの言葉を聞いて少し驚いて目を見開いたアッセムだったが、スッと目を細めると感心した様な声を出した。


「ほぉ・・・、この辺の店にある武器で満足出来んとは、ヴィルム殿の目は相当利くようだな。面白い。ワシの店に案内しよう。品質はこの街一番、いや、この国で一番だと自負しておるよ」


「助かる。別の街に行く事も考え始めていた所だ」


「あ、ありがとうございます!アッセムさん!」


ドワーフである彼が国内一だと豪語する店。


三人は期待を胸に、アッセムの後に付いて歩き出した。






入り組んだ裏路地を、迷う事なく進んでいくアッセム。


「随分と奥まで行くんだな?国一番なら表通りに店を構えた方が儲かるんじゃないか?」


「がっはっはっ!ワシをそこらの儲ける事しか頭にねぇ連中と同じにすんじゃねぇよ!ワシは、ワシが認めた奴にしか武器は売らねぇ。変に目立つ表通りより、こういった目立たねぇ場所の方が都合がいいんだよ」


「その理屈だと俺は認めてもらってるのか?自分で言うのも何だが、印象は相当悪かったと思うんだが・・・?」


訝しげな表情をするヴィルムを見て、アッセムはニヤリと笑みを浮かべる。


「ワシらドワーフ族にとって、炎を司る精霊様は信仰すべき対象だ。その頂点に立たれる精霊獣様と契約を交わしておるヴィルム殿に、敬意を示すのは当然の事だ。まぁ、確かにバゼラードの首を締めた時はぶん殴ってやろうかと思ったがな」


アッセムは、話を区切ったタイミングで歩を止めた。


ただの行き止まりである。


「ここだ」


「え?行き止まりですよ?」


メルディナとクーナリアは、自分が見落としているのかもとキョロキョロ周囲を見渡している。


「・・・地下、か?」


「おぉ、よくわかったな。地上に店があると断っても押し掛けてくる馬鹿が多くてな。元々、ワシらドワーフは地下に拠点を置く事が多いのもあって━━━」


店が地下にある理由を説明しながら、石で出来た壁の一部を押し込む。


〝ガコンッ〟


〝ズズズズズッ・・・〟


何かが外れた音がした後、石同士が擦れる音を響かせて地下への扉が開かれた。


「こうやって地下に店を構えとる訳だ」


アッセムは、現れた地下への階段を降りながら、指で降りてこいと三人を促す。


指示に従い、三人が階段を降りると、一目で一級品とわかる武器の数々が出迎えてくれた。


「ようこそ、ワシの店へ。シャレた名前なんぞ考えられんし、名付けようとも思わんから、店名がないのは勘弁してくれ」


両手を腰に置き、胸を張っている様から、アッセムがこの店の品々に絶対の自信を持っている事がわかる。


「凄いな。表通りにあった店とは明らかにレベルが違う」


入り口の側に展示してあった長剣や槍を見ながら、感嘆の声を洩らすヴィルム。


「これは・・・、断っても客が押し掛けてくるのも頷けるわね」


メルディナは店全体を見渡し、武器や防具が発する重厚な輝きに目を奪われている。


「は~・・・」


クーナリアに至っては声が出ないようだ。


「がっはっはっ!気に入ってもらえたようで何よりだ。ここに並べてあるのはどれも渾身の力作だからな。まぁ、じっくり見ていってくれ」


三人の様子に満足したのか、気分が良さそうに笑うアッセム。


その笑い声を皮切りに、三人は店内を回り始めた。


ヴィルムはクーナリアと一緒に回り、各品の長所と短所を説明している。


メルディナは短剣を中心に見て回っているようだ。


ざっと一周し、いくつかの候補から選ぼうかという時、ふと顔をあげたヴィルムの視界にまだ見てない武器の姿が入ってきた。


目立たないように、店内の隅に置かれた大樽に乱雑に差し込まれた数点の武器。


吸い寄せられるかのように近付いていくヴィルムを見て、アッセムの目がピクリと動く。


ヴィルムは差し込まれている一本の大斧を引き抜き、じっくりと観察した。


くすんだ、黒みがかった銀色のそれは、見る者に地味な印象を与える。


十人が見て、十人が素通りするであろう大斧に、ヴィルムの視線は釘付けになっていた。


「お、お師様・・・?」


黙って大斧を見つめ続けるヴィルムを見て心配になったのか、恐る恐る声をかけるクーナリア。


「クーナリア、これにしよう」


クーナリアの声に、反射的に振り向いたヴィルムは、自身が持っていた大斧を見せる。


「こ、これ、ですか?」


差し出された大斧を見たクーナリアの反応は鈍いが、これが当然の反応だろう。


「あぁ、間違いない。これが、この店で最も性能が良い武器だ。どういった加工を施したのかはわからないが、魔力伝導率の良さから見て、ミスリルが含まれている。それでいて斧としての破壊力を損なれない様に重量もしっかりある。正直、ここまでの逸品があるとは思ってなかった」


ミスリル鉱石は魔力伝導率が高く、金属としては軽いので、剣や槍の素材としては優秀である。


しかしその反面、大斧や大槌のような重量を必要とする武器への素材としては使えないというのが一般論だった。


感心と興奮が入り交じった口調で選んだ理由を話すヴィルムを見て、黙って成り行きを見ていたアッセムが笑いだした。


「がっはっはっ!参った参った!初見でこいつを見抜いたのは、ヴィルム殿が初めてだ」


心底愉快といった表情で笑った後、大斧についての説明を始めるアッセム。


「こいつに使ったのは、ミスリルと玉鋼を混ぜ合わせた特殊な金属でな。性能は折り紙つきなんだが、こんなくすんだ色合いになるもんで、大概の奴は失敗作だと思って見向きもせん。だが、ヴィルム殿は見た目に騙されず、見事にこいつを選んだ。流石は精霊獣様と契約を結んだ男だ。感心したよ」


自分の言葉に頷くアッセムの表情は嬉しそうだ。


「アッセム、こいつに決めた。値段が書いてないようだが、いくらだ?」


「金はいらねぇよ。元々、そいつを選んだ奴から金をとる気はなかったんだ。そいつの価値がわかる奴、の弟子に使ってもらえるなら、そいつも本望だろうよ」


「ありがたい話だが、やはり無償でというのは気持ち良くないな。確か・・・」


ヴィルムは少し考えた後、懐に手を入れて財布として使っていた布袋を取り出し、中身を漁る。


「あぁ、あったあった」


「金はいらねぇって言ってるだろ?遠慮するもんじゃ━━━」


ヴィルムが取り出した物を見た瞬間、アッセムが固まる。


取り出した物は、子供の手のひらに収まる程度の小さな紅い石。


ただ紅いだけではなく、穏やかに発光している事から、ただの石ではないだろう。


「ま、まさか・・・、魔石、か?」


「炎の、な。アンタなら使いこなせるだろ?」


悪戯が成功したような笑みを浮かべたヴィルムは、手に持った魔石をアッセムに投げ渡す。


「おわっ!?ととと・・・っ!ば、馬鹿野郎!こんな貴重なモンを投げるんじゃねぇ!もっと丁寧に扱えよ!!」


アッセムの言う通り、魔石は希少性が高い。


高位の魔物などが体内に宿している為、入手するのが難しいのだ。


無論、ジュエルツリーの果実よりは市場に流れるが、それでも高額の値段がつけられる事がほとんどである。


貴重な素材を投げられた事で、落とすまいと反射的に受け取るアッセム。


「受け取ったな?これでそいつはアンタの物だ。飾っておくなり、武器に埋め込むなり、好きにしてくれ」


無茶なヴィルムの行動に溜息を吐くアッセム。


「・・・わかった。ありがたく受け取っておく。だが、これだとワシの方が貰いすぎだ。そっちの嬢ちゃんに一品選んでもらってくれ。ワシからのプレゼントだ」


「いいの!?」


アッセムからの思わぬ提案に、メルディナは目を輝かせる。


すでに決めてあったのか、迷う事なくミスリル製の短剣を持ってきた。


「アッセム、メルディナの分まですまないな」


「なぁに、気にするな。これでもまだワシの方が貰いすぎとるくらいだ。それよりヴィルム殿は何もいらないのか?」


「俺は武器より(こいつ)の方が性に合ってる。どうしてもって言うなら、次に来た時にでもサービスしてくれ」


「そうさせてもらおう。またいつでも来い。ヴィルム殿達なら大歓迎だ」


大斧を持ち上げようとしてフラつくクーナリアを、笑いながら支えるメルディナ。


ヴィルムはクーナリアから大斧を受け取ると軽々と肩に担ぎ、メルディナ、クーナリアと共に、アッセムの店を後にした。

武器選ぶだけで一話使ってしまった・・・。

文章力と表現力が欲しい今日この頃です。


なお、ミスリル+玉鋼という合成金属がフィクション内にも存在するかも、本当にくすんだ銀色になるかも知りません。

適当に考え付いてそのまま書き記しただけなので、信用しないで下さいね(笑)


次回の更新は5/10予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ミスリル自体が創作物なので実際どうなるかはわかりませんね ただ原作者の著作権管理団体が厳格にルール化しているそうなので、ルールから逸脱してたら名称変更を求められるかも
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