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過去編【01】拾われた赤子

今回はプロローグから続く過去編になります。

※二話同時投稿しています。


朝霧に包まれた精霊の里。


穏やかな雰囲気の里、いつもの様に目を覚ましたサティアの元に、とある報せが入る。


『サティア様、御休みの所申し訳ございません。至急、お知らせしたい件がござますので御容赦願います』


少し慌てた様子で駆け込んできたのは側近の一人、ジェニーである。


『いえ、構いません。今起きた所ですよ。それで、何があったのですか?』


手早く身仕度を整えたサティアの表情は、既に女王の表情(それ)に変わっている。


『はっ!先程、巡回に出ていた精霊が、その・・・』


いつもハッキリと話すジェニーにしては珍しく言い淀んでいた。


『その、人間の赤子を拾って来ました・・・』


若干、冷や汗を流しながら告げたその報告に、サティアの表情が曇る。


『人間の赤子、ですか』


妖精や精霊達は、基本的に人間と関わらない様にしている。


別に人間が嫌いという訳ではなく、他種族との関わりを避けていると言った方が正しい。


気に入った生物に対し、契約という形で関わっている以外の接触は控えているのだ。


『はい、拾って来た者が言うには、巡回中に森の入り口で話している冒険者夫婦らしき人間を発見。姿を隠して様子を伺った所、自分達の子供を捨てに来たと話していたとの事。探索に来た者であれば追い返すなり殺してしまうなりするのですが、流石に何も知らない、捨てられた赤子を殺すのは忍びなく、サティア様の御判断を頂きたく里に連れ帰ったとの事です』


『なるほど。わかりました、すぐに向かいましょう』


サティアとジェニーは、部屋の前で待機していたミーニを連れて、拾われた赤子の元へと向かった。






『きゃー!今笑ったわよ!?』


『やだぁ、手ぇちっちゃすぎぃ。私の指掴んで離さないわよ!可愛すぎない!?』


『ちょっと!早く替わりなさいよ!次は私が抱っこするんだから!』


『あ、ずるいよ!次は私って言ったじゃない!』


赤子の周囲は賑やかだった。


常に誰かに抱っこされ、頬をツンツンされ、撫で回されている。


赤子の一挙一動に大騒ぎする精霊達。


ちなみに妖精がいないのは、早朝なのでまだ寝ているだけである。


『お前達!サティア様が来られるまで大人しくしておく様に言っただろう!何だこの馬鹿騒ぎは!』


大騒ぎしている精霊達を一喝するジェニー。


『え~?ジェニーだって触りたいでしょ?こんなに可愛いのに。ほら』


抱っこしていた精霊がジェニーに向けて赤子を差し出す。


赤子は親指を口に入れながらジェニーの目を見つめる。


「きゃお~」


何が嬉しいのか、赤子はにっこりと笑って喜びの声をあげる。


『ッ!///』


ジェニーもまた、その笑顔にあてられた様で手で口元を隠しながら勢いよく顔を背けた後、プルプル震えだした。


『あ~、ホントだぁ。かぁわいぃ~♪』


ミーニの方は感情を隠さずに、嬉々として赤子を愛でている。


さて、そんな中、精霊の女王はと言えば━━━


『━━━━━━━━━(///∇///)』


━━━幸せそうな顔で気絶していた。


『なっ!?ちょっ!サティア様!?どうされたのですか!?』


正気に戻ったジェニーが慌てて駆け寄る。


必死にサティアを揺すりながら声を掛けると、うわ言の様に何かを呟きだした。


『天使よ・・・天使がいるわ・・・この子は天使に違いないわ・・・』


『サ、サティア様!?た、確かに可愛いですがこの赤子は人間ですよ!?』


『うふふふ、何を言ってるの?こんなに可愛い子が人間な訳ないじゃない。例え人間だったとしても人間という名の天使よ』


『サティア様こそ何言ってるんですか!?』


もしステータス表記があれば、確実に魅了の状態異常になっているだろう。


現状、辛うじて魅了状態になってないのは側近のジェニーだけかもしれない。






たっぷり三十分程経過した後、ようやく赤子についての話し合いが始まった。


とは言うものの、すでに里で保護する事は確定しており、誰が引き取って育てるかで議論していた。


『やっぱりこの子を見つけて、拾って来た私が育てるべきだと思う!』


『いや、この子は私に一番なついてます。ここは━━━』


『おい待て。それは聞き捨てならんぞ?この子はさっきまで私から離れなかったんだから、一番なつかれているのは私だろう』


『その子が離れなかったんじゃなくて、アンタが離さなかったの間違いでしょ!』


『まだ赤ちゃんなのですし~、おっぱいが大きい人の方が~、安心すると思うの~』


精霊達は全員自分が育てるのだと一歩も退かない。


ちなみに気絶する程までに魅了されていたサティアは、精霊達から『女王としての仕事があるからダメです』と声を揃えて言われ、拗ねて隅っこの方で座り込んでいる。


・・・その両腕にはちゃっかり赤子を抱きかかえてあやしているのだが。


━━━━━ドンッ!


全く進む気配のない話し合いに業を煮やしたジェニーが机(代わりの木株)を殴る。


『そんなに自分が育てたいなら、全員で育てればいいだろう!赤子は、命はお前達の玩具じゃないんだ!もっと真面目にやれっ!』


ジェニーの叫びに静かになる精霊達━━━


『『『『『それだぁっ!!』』』』』


━━━ではなかった。


『そうだよな。何も一人で育てる必要はないんだ』


『色んな精霊達ひとたちが育てる事で柔軟な考え方が出来る様になるかもしれんな』


『私、魔法も教えてあげたいなぁ』


『う~ん、里ここには武器がないからなぁ。教えるとすれば格闘技術か?』


『それなら多対一の戦闘技術も教えてあげなきゃね!』


『これだから脳筋共は・・・。アンタ達だけに任せておいたら野蛮な人間になるだけじゃないの。この私が、算術から戦術までキッチリ教え込んでやるわ!』


『種族毎の考え方や生き方とか教えると良い。どんな種族に出会っても平等に接する事が出来る様になる』


流石、悠久の刻を生きる精霊達。


その知識は膨大、賢者達の知識(それ)は足元にも及ばないだろう。


その経験は絶大、英雄達が積み上げた経験(それ)を軽く凌駕するだろう。


まさに最高の師匠達に愛され、育てられる事が確定した赤子は、何も知らずにサティアの腕の中でスヤスヤと眠るのだった。

今回はストックからの放出です。

普通はここまで早く書き上げるは無理ですw

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『色んな精霊達ひとたちが育てる事で柔軟な考え方が出来る様になるかもしれんな』 の『精霊達ひとたち』って誤字じゃないですか? 自分の読み方が間違ってたらすみません
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