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【10】外界への旅立ち

ちょっと短いですが十話目です。

「それじゃあ皆、行ってくるよ」


まだ夜明け前という早い時間にも関わらず、里の境界には多くの精霊達が集まっていた。


無論、その中にはヴィルムやメルディナ達の姿も見える。


ヴィルムは動きやすさを重視した、紺色の服。


目立った装飾のない地味な服装であるが、魔霧の森に生息するラバーモスの繭を紡いだ糸で編まれた軽く、高い耐久性と柔軟性を兼ね備えた服だ。


メルディナは緑のインナーに、魔物の皮をなめして作られた皮鎧姿で、腰には短剣を差している。


クーナリアの着ていた服はボロボロだった為、ヴィルムの幼い頃に着ていた、同じ素材を使用した服を着ている。


外界へ旅立つ事が決まったヴィルムは、メルディナ達に聞きながら旅に必要な物を準備したり、精霊(かぞく)達に挨拶して回っていった。


応援する者、寂しさから涙を流す者、一緒に連れて行けと駄々をこねる者。


多種多様な反応を見せる精霊達だったが、いつもとあまり変わらないヴィルムの様子に、最終的には笑顔で納得してくれた。


『困った事があったらすぐに喚ぶんだよ?』


『いつでも帰って来ていいからね~!』


『里の守りは私達に任せとけ。ヴィルムがいない時は私達がやってたんだ。心配すんな』


ヴィルム達の姿が見えなくなっても、精霊達は手を振るのを止めなかった。






* * * * * * * * * * * * * * *






「よっと」


〝ズズーン〟


気の入ってない声と共に、中型の魔物が宙を舞い、大木に衝突して気絶する。


魔霧の森を外界へ向かって進むヴィルム達は、多くの魔物に襲われていた。


尤も、この森の中で育ってきたヴィルムである。


襲い来る魔物を難なくあしらい、淡々と進んでいた。


「も、森の魔物がこんなにもあっさり・・・」


「ヴィルムさんて本当に強いんですね。強いってレベルじゃない気もしますが・・・」


それを見て呆気にとられているメルディナとクーナリア。


『へ~、ヴィルムってばスゴイのね。あいつらは全員でかかって撃退してたのに』


ミゼリオは感心しているようだ。


彼女の言う“あいつら”とは、レイド達の事だろう。


「まぁ、森の魔物とは子供の頃からやりあってるからな。対処法は充分知ってるよ」


「対処法を知ってた所でどうにかなるものではない気がするけどね・・・。でも一切止めを指してないのは何故?あの連中は誰一人逃がさなかったのに」


これまで何度も襲ってきた森の魔物達だが、ヴィルムは全て気絶させただけで命を奪ってはいなかった。


レイド達に容赦の欠片もしなかった所を見ていたメルディナには不思議に感じたのだろう。


「こいつらは精霊(かぞく)を害する存在じゃないからな。むしろ森の奥へ進入してくる冒険者(やつら)への障害になる。あの奴隷商人達は、あのまま通せば、間接的に里の存在が外界に知られる可能性が高かったから全滅させたまでだ」


本心なのだろう。


ヴィルムは表情を変える事なく言い放つ。


ヴィルムにとっての判断基準は、自身の家族や仲間を害するか否か。


害になるようであれば全力で排除し、そうでないなら興味を示さない。


メルディナ達を助けたのも、里の存在を知られないように動いた結果だった。






「あぅぅ。身体がむずむずしますぅ・・・」


仰向けに寝転びながら身を(よじ)っているのはクーナリアだ。


「我慢しろ。これから完治するまでは毎日やるんだから。我慢ついでに俺から流れ込む魔力が自分のどこをどう通って循環しているのか感じてみろ。自分の魔力循環経路が理解出来ていれば身体強化の効率も格段に高くなるし、応用も利く」


里で治療した時と同様に、クーナリアの額と腹部に手を当てて魔力を流し込み、魔力循環経路の再生治療を施すヴィルム。


「メルディナと一緒に旅をするんだろ? それなら身体強化を覚えておいて損はないぞ」


「は、はい。わかりました」


ヴィルム達は、比較的魔物の気配が少ない場所で小休止をとっていた。


当然というか何というか、魔物の気配を探っているのもヴィルムである。


・・・本当に何でも出来るなコイツ。


なお、メルディナとミゼリオは軽食の用意をしている。


「クーナリア。お前にその気があるならだが、身体強化と戦闘の基本くらいは教えてやれるぞ? 流石にいきなりこの森の魔物と戦わせる訳にはいかないから、もう少し後にはなるが・・・」


「え?あ、は、はい!ヴィルムさんが迷惑でなければ是非お願いします!」


メルディナについて行くと決めたクーナリアだったが、自身が足を引っ張っている事について頭を悩ませていた。


事実、レイド達に捕まった原因もメルディナがクーナリアを守りながら戦っていた為である。


クーナリアにとって、ヴィルムの提案は渡りに船だった。


「教えを乞うなら呼び方も変えないといけませんね!えーっと・・・、んーっと・・・」


唸りながらヴィルムの呼び方を考えるクーナリア。


感じていた身体の違和感の事は飛んでいったようだ。


しばらく唸っていたクーナリアだったが、しっくりくる呼び方を思い付いたのか、「あっ!」と声をあげる。


「お師様!お師様なんてどうでしょう!?」


「・・・好きに呼べばいい。ほれ、今日の治療は終わりだ」


若干、呆れの混ざった声で答えながら、クーナリアから離れるヴィルム。


「お師様!ありがとうございました!」


クーナリアは、軽く伸びをした後、メルディナ達を手伝いに向かっていった。


「お師様、ねぇ・・・」


クーナリアの後ろ姿を見ながら、頬をかいて呟くヴィルムだった。

視覚情報のない小説って名前の呼び方が重要になりますよね。

メインキャラの口調も色々考えているのですが、よくごっちゃになって誰だお前状態になる事が多々ありますw


とりあえず初回投稿分はここまでです。

(次は【10】までの登場人物紹介になります。)

次回は5/3投稿予定で、過去編(二話)となっています。


現状、ストックを切らさず定期的に更新出来る様に心掛けていますが、ストックが尽きたら、週一更新を目標に、早く書き上がればその都度更新するスタイルを目指して頑張れたらいいなぁと思っております。



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