Episode:07
お手並みを、しばらく拝見する。
(……?)
見ているうちにタシュアは、手口に微妙な違和感を覚えた。
方法そのものは学院内にいる、ある一人のそれと、非常に似通っている。だがその割に、スピードを含め技術が幼いのだ。
だいいちタシュアが思い描いている人物なら、こんな風にあっさり見つかったりはしないだろう。
(気になりますね)
少し調べてみることにする。
高スペックの自作機で、通信のパターンを解析して同期させると、内容と宛て先とが映しだされた。早い話が盗み読みだ。
いっぽうでタシュアはもう一台の魔視鏡で、学内を統括する思考石に潜りこむ。
読み取った宛て先がどの端末なのかは、すぐに割り出せた。手口から予想したとおりの部屋だ。
だがどう考えても納得がいかない。当人にしては、あまりにも技術が幼すぎる。
(そういえば、彼女には同居人がいましたか?)
同室の下級生がどうこうという話をしているのを、耳にした気がする。
(生徒の個別情報がある場所は、と……)
学院内の職員と生徒、全員の顔と名前を暗記しているタシュアだが、さすがに各人の寮の部屋までは覚えていない。というよりも、覚える必要がないと判断していた。
操作盤の上を踊るかのように、滑らかにかつ素早く指が動いていく。片方の魔視鏡で傍受と追跡を続けながら、もう片方で学院内の思考石に再度潜りこむ。
(しかし、二年前から全くセキュリティを変えない人間が、生徒にそういうことを教えてもいいのですかね)
最初から諦めているのか、それともタカを括っているのか、学院内の通信網のセキュリティはおざなりだ。
たしかに防護壁は何重にもかけられているのだが……その変更や更新がされない。だからいちど解析してしまえば、入り放題だった。
(っと、これですね……)
目的の記録を見つけ、部屋のから生徒を割り出す。
名前を見た瞬間、思い出した。ルーフェイア=グレイス、昼間の少女だ。
あの外見や態度から、まさかこんなことをするとは思っていなかったが、まぁ教師に恵まれたということなのだろう。手口がよく似ているのもうなずけた。
なにしろ同居人は、この手のことなら学内でも五本の指に入るかという、ロアだ。
(どうりで技術が幼いわけですね)
納得しながらも、さてどうしようかと考えあぐねる。
傍受して中身を見ているのだが、大した情報は得られそうにもなかった。まだ練習段階なのだろう、このぐらいなら自分で探した方がよほど早い。
(これ以上見ていても仕方ありませんか……おや?)
タシュアの表情がわずかに変わる。