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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:01 遭遇
6/32

Episode:06

◇Tasha said

「さて、どうしましょうかね?」

 ふと、独り言がこぼれた。まだ消灯時間には早いが、今日は珍しく時間が空いている。

 この春、上級傭兵に最年少で昇級したタシュアは、何かと忙しかった。こき使おうということなのか、些細な魔獣退治などを命じられることが多い。


(別になりたくてなったわけでも、ないのですがね)

 なにしろあの性格だ。学院の課題など必要ないと思えば平然と無視するし、教官にも言い返すので減点もされている。

 そもそもこの学院に腰を落ち着けているのも、ここに居れば暮らすに困らないというだけの理由だ。追い出されてもかまわないと思っているから、御しようがない。

 しかもそれでもなお、学年トップクラスなのだから、タチが悪いとしか言いようがなかった。


 教官たちもそうとうモメたようだが、能力だけは文句なしに優秀なタシュアを、使わない手はない。けっきょく協議のすえ仰々しい任命書が手渡され、単独で出来る仕事をする、ということになった。

――もっとも他の生徒なら数人がかりのことでも、彼の場合ほとんど独りで出来てしまうのだが。

 ともかくそのせいか、タシュアから見れば雑用のようなことが、回されることが多かった。


 それでも大人しく――あくまでも彼の基準だが――引き受けているのは、この立場なら給料が出ることと、個室に入れることが大きい。

 タシュアがいまいちばん興味を惹かれているのは、魔視鏡とその向こうに広がる世界だ。煩わしい人間関係などお構いなしに、自分の技量ひとつで可能性が広がっていくこの世界は、純粋に面白かった。


 だがそれをするにしても、同居人がいては制限が大きい。

 これといって苦労せず暮らせ、好きなものを買える程度のお金も手に入り、あとは個室で好きにしていられる。

 この辺が、タシュアが昇格と派遣任務とを受け入れた理由だった。


 二台ある魔視鏡を起動させる。

 片方は、三年ほど前に卒業した先輩から譲り受けたもの。ただ年数が経っているためにいまいち能力が低く、いろいろと無茶な改造をしてはみたものの、満足のいく性能にはなっていない。


 残る一台は先日わざわざ部品を購入し、魔令譜も物によっては改造や自作をして、自分で組み上げたものだ。さすがに先輩のお古ではやれることが限られてしまうため、貯金と初めての給料とをつぎ込んで、納得の行く性能のものを作り上げた。

 いまはこの二台を、学院内用と学院外用として使い分け、やりたいことをやっている。


「ふむ……」

 いつものように何気なく、学内の通信網全体の状態を調べてみる。

 と、その結果に対してタシュアは、変わったものを見つけた。


(企業に……交信要求?)

 別にそれ自体がおかしいのではない。そこにたどり着くまでに使われている方法が、通常使われていないものなのだ。

 もう少し正確に言えば、使われはするものの知っている者しかできない特殊な方法――つまり不正交信だった。




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