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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:04 理解
29/32

Episode:29

「お見舞いとは、ずいぶん甘いですね、シルファは。そんなに甘やかして、どうするのです」

 案の定、彼の毒舌が始まる。

「あのままじゃ、可哀想だろう」

「元を正せば、ルーフェイアのほうが悪いのですよ」

「だからお見舞いが、ダメなのか?」

「そうは言っていないでしょう」


 まだタシュアの毒舌は続いていたが、どうせ言い合いではかなわないから、口をつぐむ。だいいち彼も口では言うが、ここでケーキを放り出して帰ったりはしない。

 それよりも、ムアカ先生が入れてくれるかどうかが、よほど心配だった。

 そっと診療所のドアを開ける。


「あの……」

「どうしたの? ケガでもした?」

 言いながら顔を出した先生が、驚いた。

 何をしに来たのかは、私たちの様子を見てすぐに分かっただろう。けれどそれをさせていいのか、考えているふうだった。


「困ったわね、気持ちは分かるのだけど……」

 先生が言いたいことは、私にも分かる。

 確かに上手くいけばいいが、かえって事態が悪くなる可能性も高い。かといって、このままにも出来ない。


「そうですか、では私はこれで」

「ダメだ!」

 先生の様子を見て、さっさと帰ろうとしたタシュアを、強引に引き止める。何とかしなければならないし、それをやれるのは、今だけでたぶん私だけだ。

 上手く言葉が出てこなくて、それでも言いたくて、ムアカ先生のほうを見る。


「――分かった。シルファ、あなたに任せるわ」

「すみません」

 どうにか許可をもらって、おそるおそる奥の病室へ入る。

 気配を感じたのだろう、あの金髪の子がこちらを向いた。だが私のことは覚えていないようで、誰だろう、という表情を見せる。


「具合は……どうだ?」

 声をかけながら近づくと、この子の顔に怯えが走った。私の後ろのタシュアに、気づいたのだろう。

「心配しなくていい、大丈夫だ」

 あの時と同じ表情に、思わず走りよって抱きよせた。


「大丈夫だから……」

 小さく震える少女を、強く抱きしめて頭を撫でる。

 こんなこと、あってほしくない。

 ここは、安全でなければいけない場所だ。

 だから……。



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