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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:04 理解
28/32

Episode:28

 ケーキは大成功だった。間のシフォンはまったくつぶれていないし、ムースもいい具合だ。

 なんだか嬉しくなって、仕上げのクリームをぬる手が弾む。

 スライスした果実も乗せて、銀色の小さな砂糖菓子を星のように振って、完成だ。

「……よし」


 これを作ったのは初めてだが、我ながらよく出来たと思う。

――そういえば、味見をしてもらっていないな。

 新作のケーキは、タシュアに食べさせて味を訊くのがいつもだ。けれど今からもうひとつ作るわけにはいかないし、これをタシュアに食べさせたら、お見舞いに行く時期を逃してしまいそうだった。

 仕方ない、と自分を納得させる。


 だが用意しておいた箱に入れようとしたところで、タシュアが入ってきた。

 もしかして、考えていたことがばれてしまったのかと慌てる。こういうことはなぜか、彼はカンが鋭かった。

「新作ですか?」

 言いながらケーキを見た彼が、不思議そうな表情になる。どうやら単純にここへ来ただけで、私の考えていることを察知したわけではないようだ。

 それに考えようによっては、かえっていいかもしれない。


「いつもとずいぶん、趣向の違うケーキですね」

「ああ。少し、変えてみた」

 なにしろ年下の女の子向けだ。見た目もそういうふうに作ってある。だがふだんはタシュアにあわせて、シンプルに作ることが多いから、彼にしてみれば珍しいのだろう。

「では、味見でも」

「ダメだ!」


 とっさにケーキとの間に入って食べられないように防ぐと、タシュアがまた、怪訝そうな顔になった。

「どうしたのです? 毒が入ってるわけでもないでしょうに」

「その、これはだから、人にあげるんだ」

「おや、それはまた珍しいこと」

 私にあまりそういう相手が居ないことを、タシュアはよく知っている。


「今これを箱に入れるから……ちょっと持って、くれないか?」

「まぁ持つくらいかまいませんが、どこへ行く気なのです」

 こんども不思議そうな彼に、「ちょっと」と答えながら、クッキーも詰める。加えて本も何冊か持って、私は立ち上がった。

「ずいぶん大荷物ですね。本は持ちますよ」


――そう。

 タシュアはけして冷たくない。ただ、それを周りが知ることはないだろう。

 私の後ろを、彼がついてくる。

「……なるほど、そういうわけですか」

 寮を出たところで、タシュアは行き先を察したようだ。




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