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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:03 恐慌
24/32

Episode:24

「またお会いしましたね」

 何気なく――タシュアにとって先日の出来事は日常風景の一つでしかない――言ったのだが、少女の表情にあきらかな怯えが走った。

「い、いや……」

 様子がおかしい。


「タシュア、なにか変じゃないか?」

「そうですね。

――ルーフェイア?」

 さすがのタシュアも声のトーンを、小さい子に話しかけるような、そういうものに変える。

 だが少女は、さらに怯えただけだった。


「いや……来ないで……」

 わずかにあとずさる。

 どうみても、普通の精神状態とは思えなかった。このまま放っておくのは危険だと判断して、タシュアは少女に近づく。

「ルーフェイア、どうかしたのですか?」


 それは普段のタシュアからは考えられないほど、穏やかな調子の声だったのだが、少女の反応はあまりにも唐突だった。

「いやぁっ!!」

 叫ぶといきなり、踵を返して駆け出す。

 だが、その先に足場はない。

 華奢な少女の身体は宙に投げ出され――水面へと落ちた。



◇Rufeir

 立ちあがって振りかえった先、あたしの視線が捉えたのは――タシュア先輩。

 とたんに恐怖に襲われる。

「またお会いしましたね」

 あの、冷たい声。

――怖い。


「ルーフェイア?」

――来ないで。

 思わずあとずさる。

「ルーフェイア、どうかしたのですか?」

 先輩が近づく。


「いやぁっ!!」

 思わず逃げ出した。

 後ろへ。


「あ……」

 いきなり足元が途切れる。

 身体が宙に浮いた。

――落ちる?


 次の瞬間、あたしの身体は海中に沈んでいた。

 水底から見上げる水面が、奇妙なくらい綺麗だ。

――そうか、これで死ぬんだ。


 不思議なくらい冷静だった。

 でも考えてみれば、今までだって、生きてこれたのが不思議なくらいだ。だからいつ終わったって、おかしくない。

 それが今だってだけなんだろう。

 息が詰まる。

 そこで、あたしの意識は途絶えた。




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