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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:03 恐慌
23/32

Episode:23

◇Tasha & Sylpha side

「すまない、つき合わせてしまって」

「別に構いませんよ。私も用がありましたし」

 ケンディクの街を、2人の男女が歩いていた。

 ひとりはつややかな長い黒髪に、紫水晶の瞳をした女性。

 もうひとりは三つ編みにした長い銀髪と、紅の瞳をした青年。

 どちらも長身で、しかも美男美女だ。通行人も、かなりの人数が立ち止まっては振り返っている。


 だがこの2人、もし学院の生徒が見たなら避けて通るだろう。

 女性の方はまだ「可愛げがない」程度で通っているが、この青年となると「学内で並ぶもののない毒舌家」との評価なのだ。

――言わずと知れた、タシュアとシルファだった。

 そうしょっちゅうではないが、街でしか手に入らないものを買いに、こうして2人でケンディクの街へ来ることはある。


「そういえば……」

 言いかけて、シルファは口をつぐんだ。自分としては気になる噂を聞いたのだが、それをタシュアに言っても意味がないような気がしたのだ。

「なんですか? 途中で止めたりして」

「いや、たいした話じゃないんだが……この間タシュアが野外訓練で一緒になったルーフェイアという子、倒れたそうだ」

「それは初耳ですね」


 一瞬、タシュアは不審に思う。

 訓練が祟って生徒が倒れることは時々あるが、去年の夏に中途入学した彼女――ルーフェイア=グレイスに限っては、まずそんなことはないだろう。なにしろあのシュマー家が誇る、最強の戦士なのだ。

 とはいえまだ、彼女が11歳でしかないのも事実だ。身体が出来あがっているとは言い難い。


「単に疲れでも溜まったのではないですか?

 それよりシルファ、早くしないと日が暮れますよ。今日は買うものが多いのでしょう?」

「そうだな」

 もう何年も歩いて慣れた街を、手早く回って行く。ひととおり揃え終わった頃には、それなりの包みを、シルファはタシュアに持たせていた。


「これでぜんぶですか? なら、戻りましょうか」

「ああ」

 うっかり港側から回ったため、帰るにはもういちど街を横切らなくてはならない。

「反対から回るべきでしたかね?」

 言いながらタシュアは歩き始めた。シルファもなにも言わずについてくる。


 足を向けた港は、いつものように穏やかだった。よい天気に誘われたのだろう、けっこう人が出ている。

 と、すっとタシュアが立ち止まった。

「シルファ、先ほどの噂は本当なのですか?」

「聞いた話だから……どうかしたのか?」

 そう尋ねたシルファだが、タシュアが答えるより早く意味を知ったようだ。

 埠頭のところにいる金髪の少女は、どうみてもあのルーフェイアだった。


「嘘だったのか」

「単純に回復しただけかもしれませんよ。おや、気づいたようですね?」

 少女が振り返りながら、立ちあがる。



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