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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:03 恐慌
22/32

Episode:22

 船体が碧いうねりの間で揺れる。

 青と白の街が近づいてくる。

「だいじょぶか?」

 久々に外へ出たのを心配してるみたいで、イマドが声をかけてきた。


「うん。思ってたより、調子……いいみたい」

「そか」

 長居はムリだろうけど、あの埠頭から海を眺めるくらいはできそうだ。

 少し元気が出てくる。


 やがて、船が止まった。

 揺れる足元に気をつけながら降りて、歩き出す。

 いつもと同じ、青い街。

 風に混ざる潮の香。


 シエラの船着場は入り江の中で、外洋はあまり見えないけど、ここは視線の先にどこまでも碧が広がる。

「きれい……」

 穏やかな風、穏やかな海。

 見てると気持ちが落ち着いてくる。


「あの先まで……行って、いい?」

「気をつけろよ?」

 いちばん好きな、埠頭の先まで行ってみる。

 近くで覗くとこの海、びっくりするほど透明度が高い。底まで見えて、きれいな魚が横切って行く。


「ねぇ、しばらくここにいて……いい?」

「あぁ。そしたらなんか飲むか? 買ってきてやるよ」

「……ありがと」

 待ってろと言って、イマドは向こうの店のほうへ駆けて行った。

 ひとりになる。


 でも不思議と、あたしは落ちついていた。ここ数日の落ちこみが、嘘みたいだ。

――この海のせい、なんだろうな。

 ぼんやりとそんなことを思った。

 明日もまた、来てみようかな?

 でもイマドはそうそう、あたしに付き合ってはいられないだろうし。


 ゆらめく水面に手もとの石を投げると、ぽちゃんと沈んで輪を描いた。

 それがなんだか、可笑しい。

 端からみたらきっと変に見えるだろうけど、なんとなく笑みがこぼれた。

 と。


(なに……)

 なぜだろう。何かの、予感。

 ぞっとして、あたしは振りかえりつつ立ちあがった。




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