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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:03 恐慌
20/32

Episode:20

 そのまま、数日過ぎた。けどルーフェイアのやつは、ぜんぜん良くならない。

 ムアカ先生も最初は「ストレスだから数日寝てれば」ってたけど、ルーフェイアはなんせ脆いから、そんなじゃ済まなかったっぽい。いまもほとんど、何にも食えないままだ。

 んでどうしようもなくて、けっきょく診療所に引き取られてる


 俺とかロア先輩とかシーモアたちとか、なるたけみんな顔出して診療所居るようにしてっけど、はっきり言ってなんの役にも立ってねぇし。

 早い話、原因になっているコトを取り除きゃいいんだろうけど……これがいちばんハードル高いから困る。

 なにしろ相手ときたら、「あの」タシュア先輩なわけで。

 どうにか上手くここまで連れてきたにしても、ルーフェイアのヤツと引き合わせたが最後、事態なんてよけい悪くなりそうだ。


「先生、どうにかならないんです?」

「そうは言われてもねぇ」

 ムアカ先生が肩をすくめる。

「なんとかしてあげたいんだけど、どうにもならないわ。半分は性格なんだろうけど、ともかくよほどひどいストレスになってるみたいだし」

「そうですか……」

 うとうと寝入っているコイツ、少しやつれて見える。

 乱れて顔にかかっている金髪をそっと払いのけてやると、ルーフェイアは目を開けた。


「わりぃ、起こしちまったな。気持ち悪くねぇか?」

「……うん」

 まだ食べ物は受けつけねぇけど、今朝辺りから少し、良くなってきてんのかもしれない。

「今日って……お天気、いいね」

 そう言って何日かぶりに、ルーフェイアのやつが自力で、起きあがろうとする。


「ムリすんなよ」

「……起きたい、から」

 それ聞いて、マジでほっとした。これなら、あとはだんだん回復すんだろう。

 窓を開けてやる。

「あ、気持ちいい」

 吹き込んできた風に、金の髪がなびいた。

 久々の笑顔。


 その笑顔で俺がどんだけ安心したか、コイツには――たぶん分かんねぇだろう。

「少し、外でも出るか?」

「……うん」

 ムアカ先生のほう見っと、年のわりに案外気が強えぇこの人がうなずいた。少し外へ連れてって、気分転換させてこい、ってんだろう。

 着替えて立ちあがったルーフェイアも、思ったよりはしっかりしてた。


 そっと歩き出したコイツに歩調合わせて、玄関出て、船着場まで連れて行く。

 ルーフェイアは海が好きだ。ときどき用事がなくてもこいつ、出かけちゃ桟橋に座り込んでるの、俺も知ってた。

 今も久しぶりに海見て、こいつの顔がほころぶ。


「どする? ケンディクまで行ってみっか?」

「そうだね……あの街、見たいな」

 念のためにこっそり、通話石通してムアカ先生に訊いたら、行っていいって答えが返ってきた。思ったよりしっかり歩いてたし、気晴らしになるから好きなだけ行かせたほうがいいって言う。


「じゃぁ、そうすっか」

「……ありがと」

 足元に気をつけながら、俺らちょうど来てた連絡船に乗り込んだ。



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