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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:03 恐慌
19/32

Episode:19

「だいじょぶか?」

 こんなことっきゃ言えねぇ自分に、いちばん腹が立った。

「ゴメン、俺ってばなんも役に立ってねぇな」

 ルーフェイアのヤツが、かすかに首を振る。


「行かない、で……」

「分かった」

 俺が間髪入れずに答えると、コイツの表情が少しゆるんだ。

「急患はどっちなの」

「ボクの部屋です!」


 むこうから、慌しい足音と話し声とが聞こえてくる。

 すぐに勢いよくドアが開いて、ロア先輩とムアカ先生とが入ってきた。

「あらま、ここは女子寮だと思ったけど」

「え? あ、すいません」

 勢いで女子寮突っ込んだの、やっと気がつく。

 けどルーフェイアのヤツにああ言っちまった手前、出てくわけにもいかねぇし。


「ほら、あなた早く男子寮へ……ってなるほど、そういうことね」

 涙ためて見上げるこいつの様子で、ムアカ先生も事情を察したらしい。

「しょうがないわね。今晩だけは特別に許可するから、この子の隣にいてあげなさい。

――で、とりあえず診察したいんだけど?」

「あ、はい」

 さすがにこれはヤバいから、ロア先輩と二人、寝室の外へ出る。


「先輩、なにがあったんですか?」

 いちばん聞きたかった質問を、俺は先輩にぶつけた。

「それがさ、ボクにもよくわかんなくってね。あの子がネット上がろうとして、誰かが監視してるのに気づいてさ」

 多分タシュアだろうけど、とロア先輩が付け加える。

「そしたらいきなりルーフェイアが吐いて、倒れちゃったんだ」

「そうだったんですか……」


 引き金は、昼間の話だろう。たしかルーフェイア、「タシュア先輩にぜんぶ知られた」って言ってたはずだ。

 それで参ってたとこへ、そのご当人に監視までされて、一気にいったっぽい。

 思わず壁を叩いた。


「き、キミ、分かったから落ち着こうよ」

「……すいません」

 そんなやり取りしてたら、ムアカ先生に呼ばれた。

「もういいわよ。呼んでるから、ここに居てあげなさいね」

「あ、はい」


 許可もらって、こいつの部屋へ入る。

 おっくうらしくて視線だけで俺を見上げたルーフェイアは、こないだまで同居してた先輩の妹みたいに、小さくて頼りなかった。



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