Episode:17
「えぇ〜! よりによって、あいつに知られたわけ?!」
部屋へ戻ってきたロア先輩に昼間のことを言うと、イマドとほとんど同じリアクションをした。
「やっぱり……まずいですか?」
「多分学院内じゃ、いちばんヤバい相手だね」
それを聞いて、気が重くなる。もしこれで家になにかあったら、完全にあたしのせいだ。
ともかくことの次第だけは連絡しようと、端末を立ち上げる。
その時、ふと思いついた。
「ロア先輩、タシュア先輩のラストネーム、リュウローンですよね?」
「そだけど?」
ロア先輩、タシュア先輩と同じクラスなだけあって即答する。
リュウローン。その名にあたし、聞き覚えがあった。たしか、どこかの研究者と同じだ。
その人はもう亡くなってて、でも子供向けに易しく書いたこの人の本を、読んだことがある。
あと、研究にまつわるおかしな噂を、ファールゾンから聞いたことがあった。
それがとても……気になる。
それも踏まえてざっと経緯を書いたうえで、問い合わせ事項も付け加えて、伝言を魔視鏡から送ろうとした、その瞬間。
「だめっ、ルーフェ! そっち監視されてる!!」
「え……!」
思わず驚いて、魔視鏡から手を離した。
ロア先輩が隣の自分の機で、なにやら操作を始める。
「ったく、どこまで根性ひん曲がってんだか……あ、逃げられた!」
先輩が悪態をつきながら立ちあがったけれど、あたしはもう聞いてなかった。
身体が冷たくなる。
怖い。
まるで心臓を掴まれたみたいだ。
「ルーフェ?」
あたしの様子に気がついたらしく、先輩が声をかけてくる。
けど、答えることさえ出来ない。
訓練のときみたいに、また吐き気がして、あたしは口元を抑えた。
「ちょ、ちょっと大丈夫? 気持ち悪い?!」
先輩の慌てた声。
「立てる? こっち来て……ほら、いいから吐いちゃって」
抱えられるように連れて行かれた洗面所で、あたしは吐いて倒れた。