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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:02 実力
16/32

Episode:16

 そう、知ってる。

 あたしと同じ……『戦うために生み出された』者のもつ匂い。

 初めて他人から感じた死神の匂いに、またぞっとする。

 先輩の後ろ姿が遠ざかるのを見て、ようやく緊張が解けた。立っていられなくて、思わずそこへ座りこむ。

 まだ、身体の芯が凍り付いたままだ。


「なにかあったんだな?」

「あの先輩に……全部、知られた……と思う」

 やっとのことで、イマドにそれだけ答える。

「よりによって、タシュア先輩にかよ」

 彼の言葉は、まるで吐き捨てるような調子だった。

 でもあたしにも、なんとなく意味がわかる。よくは分からないけれど、おそらく学院内でいちばん、知られたらまずい相手だ。


 そして、はっと気づく。

「まさか、あの、追いかけてきた――?」

「追いかけ? 何の話だ?」

 例のことは知らないイマドが、不思議そうな顔をした。でもあたしの中で、はっきりと線がつながる。


 数日前あたしを追いかけてきた、“誰か”。あれほどの腕をした人間が、そうそう学内にいるとは思えない。

 そして、あたしの素性を知るタシュア先輩。

 二人が同一なのは、おそらく間違いないだろう。

 だとしたらあの先輩はもう、シュマーの中へ入り込んでる。自由に情報を、盗み出すところまできてる。


 証拠はない。ただの推測だ。でも先輩が言った言葉は、そうとでも考えないと、説明がつかなかった。

 もちろん他のどこかから、情報を手に入れた可能性はゼロじゃないけど……ゼロじゃないってだけで、限りなく低い。

 だからおそらく、シュマーそのものからだろう。

 吐き気がした。

 これほどの恐怖を感じたのは、もしかすると初めてかもしれない。


「だいじょぶか? かなり顔色悪りぃぞ」

「だいじょうぶ……だと、思う」

 そう言って、やっとの思いで立ち上がる。

 自分でも信じられないほど、足元が危なかった。


「歩けっか?」

「うん……どうにか」

 答えて、あたしはイマドといっしょに、集合場所へと歩き始めた。



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