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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:02 実力
15/32

Episode:15

 結局訓練は、あたしたちのチームが守備側の拠点へ突入して終了した。

 とてもスムーズで、最短記録だったらしいから、教官も文句はつけられないだろう。

 終了のホイッスルが鳴り、自主解散になる。


「ではこれで――おや、下級生にはなにか伝達事項でもあるようですね」

「あ、俺行ってくるわ」

 先輩の言葉に、イマドが動いた。

 二人だけになる。


「そういえばあなたに、お礼を言わなくてはなりませんね。おかげで今日の課題は、ほぼパーフェクトでしたから。

――さすがに、戦場育ちというだけのことはあります」

「え?」


 一瞬耳を疑った。

 あたしが戦場で育ったのを知ってるなんて、この先輩いったい……?

 けど、次の言葉はもっと恐ろしいものだった。

「さすがは死神たるグレイス姓を、名乗るだけのことはありますね。

 いえ……ルーフェイア=グレイス=シュマー、とお呼びした方が正しいですか?」


 この一言に、あたしは凍り付く。

 本来誰も知るはずのない、「シュマー」の姓。これを学院内で知っているのは、学園長とロア先輩、それにイマドだけのはず。

 そしてそれ以上に、「グレイス」に込められた意味。これは学院では、あたし以外誰も知らない。


「……どうして、それを……?」

 ようやく出てきた問いに対して、タシュア先輩は冷たい笑みを浮かべた。

 抜き身のあたしに対して、タシュア先輩は剣に手さえかけていない。まるで動揺するあたしを、嘲笑するかのようだ。

 恐怖。

 普段は心の奥底へ抑えつけているはずのそれが、あたしの中に湧き上がってくる。


――かなわない。

 この先輩には、あらゆる意味で今のあたしでは、とても太刀打ち出来ない。

 太刀を握る手に汗がにじんだ。

 空気が張りつめる。

 けど、その緊張が破れることはなかった。


「おい、ルーフェイア、俺らは集合だってさ」

 様子を見に行ってたイマドが、あたしを呼びに来る。

 そしてそれが合図だったかのように、すっと先輩は動いた。

「では、またいずれ。

――そうそう、背中には気をつけたほうがいいですよ?」


 それだけ言うと、何事もなかったかのように静かに、あたしのそばを通りすぎる。

 足音どころか気配さえない。

 でも。

(これ……?)





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