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表と裏 ルーフェイア・シリーズ06  作者: こっこ
Chapter:02 実力
14/32

Episode:14

「てめぇっ!! ぶった切ってやる!!」

 一気に階下へ飛び降りてくる。

 でもタシュア先輩は、冷静なまま。ちょっと練習試合でもするような調子で、得物の両手剣――光をまったく反射しない、漆黒の刀身をしている――をすっと持ち上げただけだ。


 そしてあたしたちの方に視線を投げた。

 もちろん意味なんて、聞かなくても分かる。

 あたしとイマドは一瞬互いに視線を合わせると、守備側の死角になる位置から、階段の下へと動いた。

 一方でタシュア先輩は、ここから離れる方向へ、上手く相手の先輩を誘導していく。


 難関はこの階段。

「先に俺が」

 短く言って出たイマドを、とっさに防御魔法で援護する。けど何か魔法でも使ったのか、こんな狭い場所で彼の姿を見失った。

 敵側もそれは同じだったみたいで、大きな隙が出来る。

 これを逃す馬鹿はいない。あたしは一気に階段を駆け上がった。


 向こうが我に返って武器を構えたときには、あたしはもう肉薄していた。

 一閃。

 強烈な峰打ちを食らって、ひとり倒れる。けどそれは最後まで見ずに、あたしは身体を入れ替えた。

 後ろを取ったつもりでいたもう一人の先輩の長剣が、空を切る。


――あたしの後ろを取るなら、せめて気配くらいは消さないと。

 そして太刀をもう一度振るおうとした時、相手の動きが止まった。

 倒れた後ろには、イマドの姿。

「すごいこと……するね」

 まさか後ろから襲うとは、思わなかった。


「訓練だからって、気ぃ抜いてるヤツが悪いんじゃないか?」

 平然と言い放つ。

――イマドって思ってたより、凄い性格かも。

 でもとりあえずこれで、場所の確保はできた。

 あとはタシュア先輩が戻ってくるのを待つだけだけれど、いったいいつ頃……。


「綺麗に片付きましたね」

「――っ!!」

 真後ろから先輩の声がして、あたしは心臓が止まるほど驚いた。

「おや、どうしましたか?」

 また、タシュア先輩の瞳に光が閃く。まるで猫が、つかまえた鼠をおもちゃにするような……。


 ぞっとする。

 あたしだって戦場育ちだ。後ろを取られるのがどのくらい危険かは、骨身に染みて知っている。

 だいいちそういう環境で育ったから、あたしの後ろをとるのは傭兵の両親にだって出来ない。


――それなのに、この先輩は。

 もしこの先輩を敵にしたら、あたしは確実に死ぬだろう。

 寒気がした。



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