Episode:11
何も言われないというのは一見よさそうだけど、こういう状況でのそれはつまり、何も期待していないし何もするな、という意味になる。
加えて年下からの編入が二人、同じ班だ。
数は合わせて形だけは整えて、あとは黙って隅に居ろということなんだろう。
「まー学院の考えることなんて、その程度だろうなぁ。けどこれで点がもらえるんなら、俺は別にいいけどな」
イマドはさっさと割り切ったみたいだ。
「どうします?」
あたしに問いかける先輩の瞳に、何かが閃いた。なんと言うか……そう、おもしろがっているような。
少し考えて答える。
「あの、あたし……やってみたい、です」
こういう訓練はあまりしたことないから、興味があった。
「あたし、インドアの訓練……ほとんど、やってなくて。だから……」
「なるほど」
何かが腑に落ちたような感じを一瞬見せたあと、先輩は今度は、イマドのほうに問いかけた。
「あなたはどうなのです?」
「コイツがやるってなら、俺別に構いませんよ。もっとも俺じゃ、足引っ張んねーようにすんのが、せいぜいですけど」
イマドのこういう、何でも言えるところは羨ましい。
「ではやりましょうか。教官が指示を出さないのですから、こちらが何をしてもいいわけですしね」
なんかちょっとだけ、教官たちが気の毒な気がした。
先輩がさっきの続きから、説明を始める。
「ここから突入した場合、敵側の拠点は恐らくここですから――最短経路はこれですね。まぁ、行けるとは限りませんが。
そしてこのルートですが、最初の関門はおそらくここです」
先輩の説明は、理路整然として的確だった。ルートや危険箇所が、次々と指摘されていく。
恐ろしい人だけど……この先輩、すごく有能だ。付いていけさえすれば、最短でクリアできるだろう。
「ざっとですが、だいたいこんなところですね。何か質問は?」
「あ、あの」
気後れしながら声を出す。
「あたし、さっき言ったとおり、インドア……あまり、してなくて。
アウトドアと比べて……特に注意する点とか、ありますか?」
「そうですね。当然と言えば当然ですが、インドアの方がトラップを仕掛けやすいのと、待ち伏せが簡単です。これはよく注意してください。
それから階段も要注意ですね。特にうっかり下から駆け上ろうとすると、狙い撃ちにされます。まぁ、やれば分かるとは思いますが。
――おや、そろそろ時間ですね。移動しましょうか?」