夢
以前書いていた『ムソウノグシャ』と書き直しです。
基本的設定を引き継いでいます。
ひどく愚かな結末の夢を見た。
それは、自分ではどうしようもない現実でいつものような荒唐無稽な終わり方ではなかった。
彼女は言った。
一人は辛いと。
彼女は願った。
皆に触れたいと。知らなければ怖いと。
そして彼女は泣きながら叫んだ。
もっと感じていたいと。
僕は、そんな彼女に手を伸ばした。
彼女の気持ちが、痛いほど分かったから。
そして僕が彼女に触れた瞬間にセカイは、激しいアラームにかき消された。
月曜日の朝の6時。
机に置かれた。スマートフォンの画面を除きこむ。スマートフォンのアラーム機能が正しく作動し、所有者の願いを正しく一切の誤差なく叶えた。
「学校か」と一人呟く。
この部屋に有るものは、しゃべったりはしないのでこの発言に返答する心有るものも無い。
カーテンの隙間から差し込む太陽光が、外の快活さを示す。
ベッドから降りて、軽く体を伸ばす。
欠伸をしながら一階に降りて、リビングに入る。
二人とも海外へ出張に行っている。
母さんも父さんもいない静なリビング。
冷蔵庫を開けて、パンと牛乳を取り出して食べる。味気の無いただの栄養摂取。この行動に娯楽としての価値を見いだすのは難しい。
テレビを点けて朝のニュースを流す。流れて過ぎ去っていくのは、日常となった殺人とつまらないゴシップだけだった。外の陽気のようなハッピーなニュースなんてのはもうなかなかない。オリンピックだってもう何の興味も湧かない。
階段を上り、部屋に戻る。
制服を着る。持ち物の確認をする。スマートフォンや財布などといつ貰ったかも分からない有象無象を流して鞄のチャックを閉じる。
階段を降りて、リビングの前を通る。消し忘れたテレビからは売れっ子アイドルが、無償の愛を下手くそな歌で伝えていた。
ドアを開けて、家を出る。鍵をかける。ガチャリ。
スマートフォンにイヤホンを差して、耳に突っ込む。イヤホンから流れてくるランダム再生も、先ほどの売れっ子アイドルの下手くそな歌だった。聞き流す。
今日のふざけた夢を想う。イヤホンからの歌より強く自己主張をする何処から届いているかも分からない音が、僕の夢を、成りたい自分を、ありもしない物を聴いてくる。
その音の主に想い返す。そんなものはいない。と、その売れっ子よりも強く来る声は、『ならば。君には夢を想う義務を与えよう。』と響いた。
いつも騒がしい校舎が見える。イヤホンを外すと、いつもの騒がしさと人波は消失していた。