先生と失踪した旦那さん 上
半田修の担任の大中山先生の話です。
前中後編に分けました。
俺は引っ越してからやっていなかった空手の練習をすることにした。
前の家はマンションだったので、ドタドタ音がうるさいという理由で家の中で空手の練習をすることはなかった。
小さい頃は、父と一緒に公園で練習していた。
しかし、高校生となった今は恥ずかしくてできなくなった。
だから、空手の練習は人通りが少なくなった夜の公園ででしかやらなかった。
こっちに越してきてからは、人通りも少ないし、境内の庭で思う存分空手の練習をしている。
もう一つ始めたことがある。
隙埋師の勉強だ。もちろん師匠は祖父になる。
祖父は俺にかなり期待していた。
雪島楓の件の時、一番ミツバチの近くにたどり着いたのが俺だったからだ。
まずは、祖父から隙間についての知識や隙埋師の歴史を教わった。
それに隙占術も教わった。
祖父が隙占術をする時に使っていた半紙は隙埋術式紙と呼ばれ、血の入った墨で式が書かれている。
また、白いビー玉のようなものは、白集玉と呼ばれ隙間に引き寄せられる性質があるらしい。
俺は祖父から白集玉を一つもらった。
隙占術は、隙埋術式紙で小さな隙間を作り出し、その隙間に引き寄せられた白集玉によって占うのである。
俺には、まだ隙間を作ることはできなかった。
祖父は、隙占術が得意であった。
寺には祖父の占いを目当てに来る人も少なくない。
そのため、世間での祖父は、占い師70%、怪しい除霊師20%、お坊さん10%として知られていた。
雪島楓が祖父に頼ってきたのも、祖父が怪しい除霊師として認識されていたからだった。
急にだが、話は学校にの話題に移る。
学校での俺の生活は、いたって順調だった。
俺は勉強はそれなりにできたし、交友関係も順調だった。
クラスも人数が少ないせいか一体感があり、全体的に仲もよかった。
問題があるのは担任の大中山先生の方だった。
大中山先生は、50歳くらいのベテラン女性教師だ。
先生は、清潔感ある見た目で、大変温厚で生徒をしかるときも、単純な罵倒ではなく、理由を具体的に説明して生徒を納得させるような教師の鏡のような人だった。
その、大中山先生の様子が最近おかしいのである。
大中山先生は、いつも背筋が伸びてきりっとしていたが、明らかに倦怠しているように見えた。
俺は、ある噂を聞いた。
大中山先生の旦那さんが失踪したとのことである。
どうやら、その情報はかなり信憑性があるようで、愛華のお母さんが先生が交番で相談しているところを偶然見たとの話だった。
俺は、噂を内容を知って、先生の落ち込み具合を納得した。
俺は先生を心配した。
すぐにあることを思いついた。
祖父の隙占術なら先生の旦那さんを見つけられるかもしれないということだ。
俺は先生のところに行った。
「先生。最近元気ないですね。大丈夫ですか?」
「え?大丈夫ですよ。」
先生は、誰の目にも憔悴してみえた。
「先生のことは、噂で聞いて知ってしまいました。」
「そうですか。あなたも私のことでそんなにご心配ならずにね。」
「うちのお祖父さんは、お寺のお坊さん兼占い師をしています。
お祖父さんの占いは。先生の力になれると思うので是非うちの寺まで来てください。」
「半田君。気を使ってくれてありがとう。」
先生は、無理やり作った笑顔をしていた。
週の最後の授業も終わり、土曜日となった。
俺は祖父に大中山先生のことを伝えてなかった。
俺は、先生の表情を見る限り、寺には来てくれないだろうと思った。
しかし、そんな俺の予想を裏切り先生はいらっしゃた。時間は昼過ぎだったと思う。
「ごめんください。」
「先生。こんにちは。どうぞ上がってください。」
先生は今まで以上に疲れた顔をしていた。
俺は心配しながら、祖父の部屋まで先生を案内して、先生のことを紹介した。
祖父は、机の前の座布団に座り、反対側の座布団を先生を案内した。
私は、部屋の外に出て自分の部屋に行った。
1時間後部屋から祖父が出てきて、俺に話の内容を説明してくれた。
先生の話では、一週間前に旦那さんが仕事に行った後、帰ってことないとのことだ。
旦那さんには、失踪するような不審な点はなく、円満な夫婦生活だったのだという。
旦那さんの残した手紙や手がかりのようなものはなく、警察に行っても相手にされなかった。
このような現状らしい。
警察に行っても相手にされないというところが俺には引っかかった。
そんなことを考えている中、祖父は、ノートを俺に見せてくれた。
ノートには、祖父と先生のやり取りが記されていた。
名前 大中山 代助
年齢 52歳
身長 170cm後半くらい
体系 やせ形
血液型 O型
趣味 読書 テニス TV鑑賞
子供 なし
と書かれていた。次のページには
家の間取り図が書かれていた。
間取りを見ると先生はマンションに住んでいるようだった。
次のページには、先生の書いただろう旦那さんの似顔絵だった
絵はうまいとも下手とも言いにくいものだが、トレンディードラマに出てくるような俳優のような顔をしていた。
ここまででノートは終わっていた。
先生は、まだ祖父の部屋の中で待たされていた。
祖父は、便箋にさらさらと鉛筆でなにか書いた後俺も先生のところに来るように言った。
先生は思ったより疲れたかをしていなかった。
祖父と俺が座布団に座ると祖父は話し出した。
「長い間お待たせして申し訳ありません。
旦那さんのことをもっとよく調べたいので修を先生の家まで連れていって欲しいのです。」
俺は驚いた。いまさら俺が先生のうちに行って何ができるのだろうか。
「分かりました。」
先生はすんなり了承した。
「もう一点お願いがあります。明日も来ていただいてよろしいでしょうか。」
「もちろんです。」
これも先生はすんなり了承した。
先生は車で来ていたので俺は先生の車に乗せてもらうことになった。
帰りは迷惑をかけられないと祖父に電車で帰れと言われた。
家を出る時、祖父が便箋を先生に見えないようにこっそり渡した。
先生を待たせている時に書いていた便箋だ。
俺は先生の車に乗って先生の家に行くのであった。
うーん。後半ちょっと長くなりそうです。
バランスとるの失敗したなー




