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この世の隙間お埋めします  作者: クルトン一二三
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美少女と蛇 下

この話で雪島楓の話は終わりです。

少し長いですが最後まで読んでくれるとうれしいです。

俺はミツバチを探していた。

そして俺はあることを思い出した。

先週の週末に散策をしたときに、養蜂場があったことを思い出した。

俺はとりあえずそこまで行ってみた。


養蜂場では、地面の上に小型冷蔵庫くらいの箱が点々と置いてあり、普通の高校生はは外から見ても何のことだか分からないであろう。

俺もわからなかったが、養蜂場という看板がでかでかと有ったので理解できた。

俺は養蜂場の管理者の人に蜂を分けてもらえるか確認しようとしたが、養蜂場には誰もいなかった。

しかし、俺は、一つの情報をつかんだ安心感を得たので、蜂をもらわずに帰ることにした。


家に帰ってくるころは2時を過ぎていた。

家には祖父しか居なかった。

俺は昼飯を食べていなかったのでどうしようもないくらい腹が減っていた。

俺は食料を求めてキッチンまで行った。キッチンに俺用の昼飯がラップをしてあった。

昼飯は焼きそばだった。焼きそばを食べている時、祖父が近くに来たので養蜂場のことを伝えた。

祖父は残念な顔をして言った。

「人に飼われているものは駄目だ。風の属性を失っている。

この近くに養蜂場があることを忘れていた。すまん。」

俺は、養蜂場を見つけて舞い上がっていた分、がっかりした。

あれほどあった食欲は消し飛んだ。


母や有美たちは、ミツバチを探しに行ったとのことだった。

昼に俺がミツバチを探しに行ったときは、急いでいてどうやってミツバチを捕まえるのか考えていなかったので虫取り網も虫かごも持っていかなった。俺は祖父に虫取り網と虫かごを借りて再び探しに行った。

祖父は調べ物をすると言って家に残っていた。


俺はなんとなく学校に行くことにした。前の学校で蜂が教室に迷い込んできたことを思い出したからだ。

俺は駅まで走って行った。今度は近道を教わったので20分程度で着いた。

駅に着いた時に運よく電車が到着して、俺は電車の扉の前にたった。

電車の扉のガラス窓に大きな虫取り少年がいた。俺だった。

俺は無性に恥ずかしくなった。

俺は首からかけていた虫かごを手で持つことにした。

これで少し、ましになった。


学校でミツバチを探した。しかし、どこを探してもいなかった。

1時間ほど探したところで、戦略を変えることにした。聞き込み作戦である。

俺はとりあえず学校の先生に話すことにした。

俺は靴箱に虫かごを入れて、虫取り網を立て掛けて職員室まで行った。

運よく担任の大中山先生がいたので、大中山先生に話をしてみた。

ちなみに、雪島楓のことは話してはいない。

大中山先生は、大変驚いていたが、丁寧に答えてくれた。

「今日の昼頃、蜂駆除の業者さんがきて駆除したばかりですよ。」

俺は、タイミングの悪さに愕然とした。何とか気力を振り絞って質問をした。

「隣の中学校もですか?」

「中学校は蜂はいなかったようですよ。ところで、なぜそんなに蜂が必要なの?」

俺は蜂の目的を祖父に擦り付けて他をあたることにした。


学校周辺にもいくらか聞き込みをしたが、蜂はいるどころか見たこともないという話しかなかった。

俺は養蜂場に行くことにした。養蜂場の人なら蜂について何かいい情報をくれると思ったからだ。

養蜂場につくころにはもう夜になっていた。中に入ってみると蜂の飼育員の人らしき人が箱の周りの掃除をしていた。

俺は勇気を出して飼育員に話しかけた。飼育員の人は親切に蜂について教えてくれた。


要約するとこんな感じだ

野生のミツバチを捕まえるには山に行くのが一番いい。

しかし、山にミツバチを取りに行くのはあまりに危険。

そもそもミツバチを生け捕りにするのは極めて難しい。

ミツバチは危険を察すると針で刺しに来る。

針で刺すとミツバチは死んでしまう。

駆除したミツバチは巣の中のミツバチで、蜜を集めているミツバチは生きているかもしれない。

巣を失ったミツバチはそのうち死んでしまう。


俺は養蜂場の飼育員にお礼を言って、家に戻った。

すでに家には母も有美も帰っていた。2人ともダメだったと聞いた。

俺は、学校で蜂の駆除があったことと、養蜂場に行って飼育員に聞いた話を祖父にした。


祖父は俺らが蜂を捜している間、隙間を使った占い隙占術ばつせんじゅつをしていたと言っていた。

楓についた隙魔を調べるときにやっていた、半紙とビー玉を使った儀式も隙占術の一種とのことだ。

この話については、詳しくは後ほどすることにしよう。


祖父は占いにによって、学校にミツバチがいると読んでいたらしい。

しかし、俺も学校に行って分かっている通り、蜂の駆除業者によって駆除されてしまった。

祖父も駆除されたことのタイミングの悪さに驚いていた。

俺と祖父は悩んでいた。俺は何か腑に落ちないことに気付いた。

それは時間だ。

明らかに 蜂の駆除 → 祖父の占い → 俺が学校に付く といった時系列だ。

つまり、蜂を駆除した後に、祖父の占いで学校にミツバチがいることになっている。

俺は祖父に聞いてみた。

「まだ学校にミツバチがいるかもしれないね。

養蜂場の人も働き蜂は蜜を集めに行っているから駆除を免れることはあるっていってたよ。」

「なるほど。その生き残りにかけるしかないな。」

「だけど、ミツバチは捕まえるのが大変なんだってよ。

捕まえようとすると命がけで刺しに来るって話だよ。」

祖父は黙って考え込んだ。どうやら祖父は捕まえ方を考えているわけではなかった。


「ミツバチの働き蜂は、嬢王蜂のために蜜を集めるという仕事をしている。

すでに、嬢王蜂は駆除されてしまっている。

それならば、嬢王を失った働き蜂は何のために働くのだろうか?」

祖父はゆっくりとした口調で説明した。

生きがいを失ったミツバチは今も嬢王のために蜜を探しているのかもしれない。

すでに嬢王が死んだこと理解して巣の近くを彷徨っているのかもしれない。

俺はミツバチに哀れさを感じた。ついこの間、父を亡くした俺にはその哀れさが強く理解できた。

意識せずに俺の口から言葉が出た。

「死に場所を探しているのかもしれない。」

「そうなんだろうね」

祖父も納得した顔で言った。


俺は次の日、雪島親子が来る前にミツバチを捕まえるため学校に行くことにした。

祖父は俺に小瓶を渡した。

「修一人で行ってきなさい。」

「俺一人?一人じゃ無理だよ。爺ちゃんも来てくれないか?」

俺は、自分一人では不安なので祖父に来てほしかった。

「その小瓶を開けて持っていれば蜂が中に入ってくるだろう。

それに私は行ってはいけない。有美も明美あけみも」

明美というのは母のことだ。

祖父は続けた。

「私や有美、明美は火の属性だ。風の属性のミツバチは火を恐れる。だから、私等に寄って来ることはない。

お前は風の属性だ。同じ属性のミツバチはお前に惹かれて寄ってくる。」

隙埋師にも種類のようなものがあって人それぞれ違うとのことだ。

どうやら祖父は俺たちが蜂を探している間に、隙占術を使って、俺と有美の属性を調べていたらしい。

どうやら祖父と有美と母は火で俺だけ風らしい。

歴代の隙埋師の7割は火属性で残りの殆どが風属性だそうだ。

ちなみに父は土属性でかなり珍しいとのことだ。水属性の隙埋師は長い歴史の中で一人もいないらしい。


俺は朝一番の電車で学校に行くことにした。

どうしても雪島親子が家に来る前にミツバチを捕まえておきたかった。

俺は焦っていた。まだ薄暗い中、家を出た。


その日は、きれいに晴れていた。

学校につくころには、日が照ってきていた。

俺は学校門をよじ登って中に入り、巣のあった場所に行ってみた。

俺は祖父の言葉を信じて、虫取り網も虫かごも持ってきていない。

瓶のふたを開けてじっとしていた。

10分しても20分しても何も寄ってこない。

俺は焦った。どんどん日が照りだして熱くなってきた。


1時間以上たった後、俺は瓶にあるものが入っていることに気づいた。

それは、髪の毛だった。1っ本の長い髪の毛が瓶の中を這うように丸まって入っていた。

俺は、楓の髪の毛だと直感的にわかった。

俺は手の汗を拭おうとして、俺は地面に瓶を置いた。

その時、地面を這っていたミツバチに気付いた。5匹くらいはいたと思う。

俺は、蜂は飛ぶものだと思って空ばかり見ていたから驚いた。

ミツバチもこちらに気付いたようで、その中の一匹だけがこちらに寄って来た。

ミツバチはゆっくりと飛んできて、迷うことなく瓶の中に入っておとなしくなった。

とても、奇妙で神秘的な蜂の動きに見とれながらも、俺はふたを閉めた。

蜂を捕まえた俺は、少し安堵したが。焦りは消えなかった。

俺はミツバチだけを探しているのではなかった。

だけどそれが何かはっきりとわからない。


学校を出ると、母が車出迎えに来てくれていた。

俺は母に感謝しながら家に戻った。

家に戻るとすでに雪島親子が来ていた。

雪島親子は予定の1時間前に来ていたらしい。


楓は、祖父が用意した真っ白い浴衣を着ていた。

楓は、ただただ、きれいだった。多くの人は天使をイメージすると思う。

俺はミツバチが採れたことを祖父に報告した。

祖父は黙ってうなずいた。


前と同じように、祖父の部屋で楓を布団に寝かせた。

祖父は落ち着いた口調で話した。

「楓さん、お母さん目を直す準備は整いました。

これで、楓さんの目は見えることになるでしょう。」

祖父は、目が治ることは確信しているようだった。

「しかし、このまま目が治っても、今の精神状態だとまた同じ病に侵されてしまいます。

隙魔は精神の弱った人間に取り付きやすいのです。」

「何か心当たりはありますか?」

祖父のその言葉を境に沈黙が続いた。

確かに楓は、学校に来ていた時も人を避けていたし、何かから逃げるようだった。

愛華が言うように決して明るい子ではなかったと思う。


楓が口を開いた。

「私喧嘩したの。」

小さな声だった。しかし、彼女の声質のせいかしっかりと聞き取れた。

祖父は優しい声で言った。

「では、仲直りしなくちゃね。」

「はい」

また。楓は小さな声で答えた。


「では、始めます。みなさん楓さんから少し離れてください。」

祖父は、少し大きな声でみんなに促した。祖父を含めたてみんながべ際に行き部屋の中央にいる楓の周りには誰もいなくなった。

ミツバチは楓の匂いに導かれるらしい。だからなるべく楓から離れて楓と匂いが混ざらないようにしたのだ。

また前日、祖父が楓に渡した封筒はのは、祖父特製の塩でシャンプーや石鹸のにおいがつかないようにすることと、余計なにおいを落とすために塩で洗ってもらったということだった。


部屋を閉め切って、電気を消して、ろうそくを燃やした。ろうそくは楓を囲うように4本おかれた。

部屋は昼なのに薄暗くなった。

祖父は例の半紙の中央にミツバチの入った小瓶を置いてふたを開けた。

祖父は正座をしたまま目を閉じて、瓶の上に空間を開けてかざした。

「蜂よ。最後の仕事を果たしたまえ」

大きな声ではなかったが、非常に力強い声で祖父は言った。


ミツバチは、急に飛び出した。迷うことなく楓の顔の上まで飛んでいき、ホバリングしていた。

そのプーンという蜂の羽音に楓はおびえていた。

ミツバチは楓の顔に滑らかな曲線を描いて着地した。

ミツバチは楓の顔の右眉の外側のほうに降りた。

ミツバチは楓の顔に降りてから最後の微調整らしき動きをしていた。

どうやら、その辺りに隙間に奪われた黒子があるようだ。

楓は大量の汗をかいて、唸っていた。



ミツバチの動きが止まって、楓のまゆの上あたりに刺した。

楓は布団を掴みながら悶えて苦しんでいた。

明らかにミツバチ程度の子虫に刺された苦しみ方じゃなかった。

楓の母は頑張れと応援した。俺は声が出なかった。


30秒もすると楓は落ち着いて、自力で呼吸を整えていた。

祖父は黙って楓のところに行って、最後の仕事を果たしたミツバチの死骸を楓のまゆの上からとった。

祖父はありがとうございますとミツバチに感謝をした後小瓶の中に戻した。

「目を開けてごらん」

祖父は楓を起こしながら話しかけた。

楓はゆっくり目を開けた。

「見える。見えます。本当にみえます。」

楓は、言葉を言いきらないくらいで、号泣した。

楓の母も泣いていた。

俺は感動した。本当に美しいものを見ている気がした。



雪島親子は泣き終えた後、祖父に感謝をした。

楓が俺の前に来た。眉の上は祖母が手当をした絆創膏が貼ってある。

「半田君、ありがとう

私のためにいろいろ頑張ってくれて、学校でもよろしくね。」

楓は絵になるような笑顔で言った。

俺は「うん。よろしく」と答えた。

それと同時に俺は何かが満たされた気がした。

俺はミツバチを探している時、ミツバチ以外の何かを探していた。

この時、その何かがはっきり分かった。


「どうやら、なくしていたものは視力だけじゃなかったみたいだね。」

祖父は笑いながら言った。










後日談


楓は眉の傷が治っていくのと反比例するように明るくなった。

愛華のような底抜けの明るさではなく控えめだけど明るいといった感じだ。

ちなみに嗅覚も治ったそうだ。

万事うまくいったようだった。


楓の悩みは愛華と喧嘩していたことだったのだ。

楓は愛華に謝ったが、愛華はきょとんとしていた。

楓は勝手に愛華に無視されていると思い込んで、愛華を無視するようになり、他の人まで相手にしないようにしていたのだ。愛華は全くそんなつもりはなかったらしい。

楓の勘違いから生まれた悲劇だったのだ。

喧嘩の原因など、こんなもんなのかもしれない。


楓と愛華は仲直り?をして、2人の間の距離は埋まった。

俺も楓とあの一件以来、仲良くなれた。


楓の目が見えるようになった後、楓は家に訪ねてきたことがある。

ミツバチを譲ってほしいとのことだ。祖父は快く譲った。

あの時のミツバチは楓の家の庭にある墓で眠っている。

ある意味ひと段落終わりました。

長編ではなくショートストーリーの連続の作品にしたことを少し後悔しています

次の作品の書き出しが大変です。

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