美少女と蛇 上
こっから本編です。
不思議な世界観を楽しんでくれたらうれしいです。
今回はクラスメイトの美少女 雪島 楓のお話です。
3、美少女と蛇 上
そんなこんなで転入して初日になった。
学校の靴入れに戸惑いながらもなんとか職員室まで行って、素性を話して担任の先生を探した。
俺は急な引っ越しだったので、誰も学校の先生にあったこともなければ、担任が誰だかも当然分からなかった。
担任は大中山先生という50くらいの女性教師で国語を担当している先生であった。
大中山先生と教室まで行くことになった。
教室に入って挨拶をした。
「東京から来た、半田修です。趣味は空手です。」
と何の面白味のない自己紹介しかできなかった。俺はあがり症で人前が苦手なのだ。
クラスは30人程度で、男女比は半々くらいに見えた。
クラス生徒たちは「おおー」と盛り上げてくれた。
俺はチビで童顔で弱そうなので趣味の空手を言うと冷やかされることが多かった。
しかしここでは、冷やかしがなかった。俺は安心した。
クラスのみんなが盛り上がってる中、俺はあるものに気が付いた。
クラスの中に、ものすごい美少女がいた。さらっとしてつやのあるログヘヤーに、くっきりとした目鼻立ち
で美人ともかわいいとも取れる女の子だった。
その子は、窓際の後ろの方の席に座っていて、周りが盛り上がっている中、窓の方を向いていた。
俺の目は釘図けになった。
その女の子の名前は、雪島 楓という名前だった。
俺の席は楓の席から離れていた。授業中は俺の頭は楓のことが気になっていた。
そんな感じで何事もなく無事に1週間が過ぎた。
俺には、何人かの男子友達ができた。井上商店の愛華も色々親切にしてくれた。
俺は、一週間、楓を観察していた。楓は誰からも好かれそうな美少女でありながら、
いつも一人だった。どちらかというと楓の方から人を避けているように見えた。
楓はいつもつまらなそうな顔をしてた。
そんな楓に声をかける勇気は、俺にはなかった。
土日も終わり引っ越してから2週間目となった。
楓は休みだった。次の日も次の日も休みであった。
休みの日が続いたので、俺は心配になった。また、楓のことを質問する口実になったとも思った。
俺は愛華に楓について質問をすることにした。
「雪島さんって大丈夫なの?」
「なんだか体調が悪いみたい。詳しいことは分からないの」
「雪島さんってどんな子なの?」
「明るくていい子だよ。」
俺は驚いた。先週の見た感じでは明るい要素が見当たらなかったからだ。
「そうなんだ。早く良くなるといいね。」
俺は疑念を抱きつつも質問を切り上げた。
結局、楓は一週間学校に来ることはなかった。
学校は金曜日で終わりで土曜日になった。
俺は休みなので、新しく来た土地を散策することにしていた。今日もそのつもりだった。
家の周りは、山もあれば田んぼ畑もあり、少し歩いていくと急に店もあったりしてとても面白かった。
俺は、朝食を終えてダラダラとしながらも10時ごろに出かける予定にしていた。
出かけようとしたとき、来客があった。
その来客に俺は驚いた。雪島楓とその母らしき人だった。
俺は楓を見て挨拶をした。
「こんにちは、雪島さんだよね。最近学校休んでるけど体調大丈夫?」
楓は目を合わせてくれなかった。というよりも目を閉じていた。
楓の母が話しかけてきた。
「君は、楓のクラスメイト?楓は目が見えないのよ。ごめんなさいね」
俺は驚愕した。学校に来ていた一週間は明らかに目が見えていたはずだ。
それと俺は、2人が隙埋師としての祖父を訪ねてきていると直感的に理解した。
楓の母は、憔悴していたように見えた。憔悴していたが見た目は楓と似ていて美人だった。
俺は2人を祖父のところまで案内した。そのあと祖父に事情を説明した。
祖父の部屋まで、2人を案内して、俺は楓のことが気になりつつも部屋を出ていこうとした。
祖父は、部屋から出ていく俺を止めた。
「この子も、いてもいいでしょうか」
と祖父は2人に許可を求めた。
「はい」
楓の母は答えた。
それそれ、座布団に座った。俺の隣が祖父で、机を挟んで雪島親子といった具合だ。
「大方の内容はお伺いしましたが、もう一度ご説明をお願いします。」
「一週間前に急に楓の目が見えなくなってしまいました。
医者にも行ったのですが、異常がないといわれました。」
楓の母が答えた。楓はずっと黙っていた。
「異常がないのに見えないのですか?」
「はい。そのようなのです。目に光を当てて脳の反応を見る検査をしていたのですが、
しっかり反応が出ているのようなのです。お医者様に見えているはずと言われました。」
「見えているのですか。不思議ですね。」
「楓は、明るい子で、決して嘘をついて親をだますような子ではありません。」
「娘さんが嘘をついているなんて疑っていませんよ。」
祖父は優しくなだめた。
「では視てみましょう」
俺は机の片づけと、布団の用意を命じられた。祖父も部屋の中の物置から何やら取り出していた。
布団に楓を寝かせて、祖父は一枚の正方形の半紙を布団の横に置いて、その上下を白く濁った
ビー玉で重しにして固定した。半紙の上下左右に大きな字で水、?、火、土と書いてあった下の字は達筆すぎて読めなかった。
水
火 土
?
といった漢字で書かれていて、文字の隙間をさまざまな波線が放射状に文字の隙間を埋めるように書かれていた。
祖父は半紙と楓の間に座り、左手は楓を、右手は半紙にかざした。
祖父は目を閉じて集中しているようだった。祖父が目を閉じてから10秒くらいしてから、半紙の上のビー玉の一つが少し動いた。
土という字の近くにあったビー玉が土という字の近くに寄った。
祖父はゆっくり目を開けて半紙のを確認した。
「やはり蛇のようです。」
とゆっくりとした口調で言った。その様子を見ていた俺と楓の母は、神秘的とも取れる現象に息をのんだ。
祖父の説明によると、蛇というのは隙魔の一種で、この世にできてしまった悪い隙間のことだった。
楓の目と脳の間に蛇の隙魔がいて、目で受け取った視覚情報を隙魔が情報を防いでしまったため、脳まで届かないため見えていないとのことだった。
また半紙の土の上にビー玉が動いたのは隙間がの属性が土であることを意味しているとのことだった。土の隙魔は動きを封じるのが得意である。
つまり、楓の視力は土の隙間の蛇によって封じられてしまったのである。
また半紙の読めない文字は『風』だったそうだ。
祖父は古い本を取り出して目を通していた。みんな黙って祖父のほうを見ていた。
祖父は本を読み終えるとお香を炊いた。
「娘さん起きているかい?何か変わったことがあるかな?」
ゆっくりと優しく祖父は尋ねた。
「はい。おきています。変わったことはありません。」
楓は答えた。俺はその時初めて楓の声を聴いた。少し大人びて見える容姿に反して可愛らしい通る声だった。
俺は声を聴いて少しドキドキした。早く治ってほしいと思う気持ちでいっぱいだった。
「変わった匂いはしないかな。」
部屋にはお香のにおいが充満していた。その匂いはお香などほとんど知らない俺でもわかる『ラベンダー』の香りだった。
「分かりません」
「そうですか。・・・・
どうやら娘さんは、鼻も効かないようです。」
祖父は残念そうに言った。楓の母は涙ぐみながらうなずいた。
「目が見えない、鼻が利かないということは顔の一部を隙魔にとられてしまったようです。
どうやら黒子のようですね。お母様どこか足りない黒子は分かりますか?」
楓の母は楓の顔をなめるように見た。
数分後、楓の母は泣きながらいった。
「ごめんね。ごめんね。分からないの。ごめんね楓」
祖父は楓の母をなだめた。俺も楓の顔を見たけど分からなかった。
楓はそもそも特徴的な大きな黒子なんてなかったと記憶している。
俺も祖父に分からないことを伝えた。
失った黒子の場所が分かれば、楓の血を利用して黒子を作ることで隙間を埋めることができるとのことだった。。
しかし、今回はその手が使えない。その為、土属性に強いとされる風の属性を持つ動物を利用することで黒子を探すらしい。
祖父は俺に
「修は外に行ってミツバチを探してきなさい。」
と言った。
そのあと、すぐに雪島親子に
「今日はここまでです。明日この時間来てください。
ここに来る前にこれを使って髪と体を洗って来てください。
シャンプーや石鹸は使わないでください。」
と言って、小さな封筒渡していた。封筒はシャカシャカと塩のような音がした。
「後、下着は白いものをお願いします。」
俺は楓親子を寺の外まで送った後、ミツバチを探しに行った。




