表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

5

 数日後。私は新たな本を求めて外出していた。あれから未だに夢と妥協について引きずっているが、いつまでもうじうじはしていられない。どこかで顔をあげないと折角の夏休みが勿体ない。


 この間スーツ姿の女性と会った公園の近く。今日はこの前よりも一時間程早い時間帯であったが、ばったりと例の女性と再会した。今日はスーツ姿ではなく、水色と白色を基調とした爽やかなワンピース姿だった。


「あー! この間の子! ちょっとちょっと、そこの公園でまたお話しをしよ! 今日は私が飲み物おごるから!」


 導かれるまま前と同じベンチに腰掛けた。座った位置まで同じだ。ただ、今日の彼女は以前会った時とは比べ物にならないほど生気が満ちていた。雰囲気が柔らかい。


 私は彼女から飲み物を受け取ると、一口だけ飲んだ。中身は前と同じスポーツドリンク。気のせいだと思うが、少し味が違うような気がする。


「この間はごめんね。でも、あの時君と会ってなかったらもっと塞ぎ込んでたかも。君とお話しをしたから心が楽になったんだよ? だからお礼をさせて。本当にありがとう」


 彼女は慇懃に頭を下げた。私はすぐに彼女の頭を上げさせた。私は話を聞いただけで、それだけしかできなくて、礼を言われるようなことは何もできていない。


「それでね? 私、決めたの。ちっちゃい頃からやりたかったパティシエを目指すの! 夢は自分のお店を持つこと! そう、決めたの!」


 夢を語る彼女は生き生きとしていて、輝いていて。眩しかった。その姿は決して子どもなんかではなかった。


 彼女と一通り話し終えて、ケーキを作ったら是非私に食べて欲しいと言ってくれて。そして、私は夢を追いかけはじめた彼女の背中を見送った。


 夢。夢は儚いものかもしれないけれど、人を輝かせる。それは花火のようで空高く、瞬間的なものなのかもしれないけれど、人を惹きつける美しさもあって、否定してはいけない宝物。


 私はまだ宝物を見つけられていないけれど、いつか見つけたら、それを大事にしたいと強く心に留めた。そこに、大人も子どもも関係ないのだから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ