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買い物のために外出した私は一分経たずに後悔した。
暑い。とにかく暑い。今日の天気予報は確認していないから気温は分からないが、体感温度は三十度越えているだろう。蝉の声は至る所から聞こえ、数メートル先はゆらゆらと陽炎が踊っている。まだ午後二時半ば頃だというのに、住宅街には人がほとんど見受けられない。きっとみんな家の中で過ごしているのだろう。私だって先ほどまでは部屋で本を読んでいた。
最寄りのスーパーマーケットは歩いて十分ぐらいだと横着して日傘を置いてきたのは失敗だった。紫外線が辛い。でも今から家に戻るのも考えものだ。このまま歩を進めて空調の効いているスーパーに逃げよう。
ところで、夏は暑いのが普通なのだから、空調は邪道であり、空調に頼るということは季節感を一つ潰している。という意見を唱えている友人がいるのだが、彼女は本当に空調に頼らず、この夏を乗り越えることができるのだろうか。私は不安でたまらない。熱中症で倒れる前にエアコンを使うべきでなかろうか。それに彼女の理論に基づくのなら冬は暖房器具を使うことができない。コタツに入れない冬なんて冬と呼べるであろうか。いや、呼べないだろう。
そんな益体のない空想をこじらせている間にスーパーで買い物を終える。地元のスーパーは売り出し日以外は比較的客の数が少ないのでレジがスムーズだ。これが売り出しの日だとレジ待ちの客が多く、目も当てられない。
再び外に出ると熱がまとわりつくように私を覆い、辟易とする。でも醤油のついでに買った大好きなマロンケーキのことを考えれば自然と足は自宅へと向かう。あと十分程度この暑さを耐えればいいだけだ。
帰り道、フェンスに囲まれた公園の近く。雲の動向を確認しつつ歩いていた所、前方からふらふらとおぼつかない足取りの、スーツを着た女性と対面した。その姿は以前に観たホラー映画に出てくるゾンビと呼ばれる個体にそっくりだった。今にも倒れそうで私の良心が彼女を無視することを許さず、スーツを着た女性に体調がすぐれないのか確認した。
「ごめんね……ちょっときついから、そこの公園のベンチまで肩をかしてくれる?」
辛そうに口を開いた女性に私は頷いて、女性を公園のベンチまで支えた。




