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戦国哀歌90
涙を拭い、飾る事なく心のままに帰還する決意を才蔵は固めた。
涙を拭い才蔵は川の流れを見下ろした。
雨が降ったので川の流れは急流となっている。
それは正に今の己の心の状態と同じように乱れ散り散りに流れている。
だがそれは在るがままの姿であり、それ以上でもなければそれ以下でもない。
そんな流れを見詰めながら才蔵は考える。
飾る事は無いのだと。
綾を慕う心のままに小屋に帰還すれば良いのだ。
そして敵の間者と一緒に逃亡した事実を認めた上で、その敵が毒消しを作った張本人であるかもしれないという話はひた隠し、然るに毒消しの手掛かりは掴めなかった旨を報告しようと才蔵は考えた。
そして全てを一からやり直したい意向を伝え、決戦に赴く旨決意表明しよう。
そう才蔵は考えた。




