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戦国哀歌86

才蔵死ぬなと、僧兵は怒鳴った。

綾への思いが胸を去来する。





自分は武勇に優れ、戦場で幾多もの功績を挙げて来た。





信仰と仲間の為に戦場を駆け巡る事にのみ人生を意味付け、その処世訓の為に全てを犠牲にしたのも又事実と言えよう。





しかしと才蔵は考える。





恋をしているのにその恋の何たるかも知らない、まるで赤子のような未熟で無知で無骨な愚かさをも胸に秘めて、悶々としているのも又事実であり、それを才蔵は理屈抜きに男の恥として生きている。





だからこの度の醜態を綾に知られる事はその秘めた恥じらいに照らし合わせてみて、正に無様生き恥であり、惨めな自害が相応しいと才蔵は理屈抜きに考える。




毒消しの手掛かりを見付け出す事に依って自分は綾の関心を買いたかったのではと自問自答し。





才蔵はそれに是と言う解答を導き出し、泣きながら自分を嘲笑った。





その無様な煩悩の結果であるこの度の醜態は、正に晒す事の出来ない生き恥、惨めな自害が相応しいと才蔵は考える。





綾にもう一度会いたい。





そして仲間達にも会いたいと考えると、万感胸に迫り溢れる涙が止まらない。





才蔵は一度深呼吸してから、再度短刀を握り締め、喉元にその切っ先を突きつけ、刺そうとしたその刹那、背後から強靭な力で羽交い締めにされ、才蔵は握っている短刀を落とし、反射的にその羽交い締めを外す動作を起こしたその瞬間、聞き覚えのある怒声が才蔵の耳をつんざいた。





「死ぬな、才蔵!」


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