83/250
戦国哀歌83
短刀を眼前に置き、才蔵は前のめりに突っ伏し、再び狂おしく号泣した。
小屋の中。
才蔵は涙が止まらない。
短刀を眼前に置き、おもむろに合掌を為し、泣きながら念仏を唱える。
御仏に自害の許しを請願する祈願。
だが自害すれば極楽浄土への道は閉ざされるのが才蔵には分かる。
仏敵信長との聖戦で滅私、戦死をすれば、それはそのまま御仏の御心に叶う誉れ、極楽浄土への道は開ける。
自害する事は、その誉れを自ら放棄する事であり、御仏の慈悲慈愛をおのずから唾棄する事に繋がる。
自害する事は我が信仰、御仏への最大級の冒涜なのだ。
そんな理不尽なる請願を御仏が許すわけがなく、そんな愚かしい祈願を為す自分がひたすら情けなく、才蔵は熱い涙が止まらない。
念仏を唱えるのを中断し、才蔵は前のめりに突っ伏して、再び狂おしく号泣した。




