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戦国哀歌78
雨にぬかるんだ山道を、綾と僧兵が才蔵の姿を求めて登り詰めて行く。
山狩り衆は雨の中での探索を早めに切り上げ、引き上げてしまい、綾と僧兵の二人が才蔵の姿を求めて、雨にぬかるんだ悪路を登って行く。
急勾配を前にして僧兵が息を切らして喘いでいる綾に告げる。
「あそこの岩陰まで登り、一息つくとしよう」
綾が相槌を打ち答える。
「分かった」
雨に打たれながらの登山は体力と体温を根こそぎ奪って行く。
青ざめ小刻みに震えている綾が、先導する僧兵の足掛かりに、そのまま倣うように足場を求めては、踏み固めるように踏ん張り、僧兵の作った手掛かりをそっくりそのまま踏襲して握り締め、気力を振り絞って、登り詰めて行く。
僧兵が綾を励ます。
「滑るなよ。滑って落下したら命が無い!」
眼に入る雨を防ぐように、綾が瞬きを繰り返しながら答える。
「相、分かった」
「もう少しじゃ。滑るなよ!」
「相、分かった!」




