戦国哀歌77
自害するならば手伝ってやるし、生きるつもりならばこのまま棄てるが、どうするんじゃと、男はどす黒く微笑み才蔵に尋ねた。
しのつく雨が山林を濡らす。
男がその雨音に聴き入りながら言った。
「雨が降って来たな。これで今日の山狩りは終了かのう?」
才蔵が首を振り答える。
「分からぬ」
男が感慨深げに言った。
「例えば山狩りが終わり、無事に生還出来たとして、俺には帰るところがあるが、あんたは仲間を裏切っているから帰還出来る所が無いわけじゃ。あんたは己の生を情けにほだされて裏切り、放棄した愉快な奴だから、俺としては面白く、ここまで付き合って来たのじゃが、俺は自分の生還の目処がついたら、あんたに毒消しの手掛かりを教えて立ち去るわけじゃ。そこで何じゃが、あんたは毒消しの手掛かりを教わっても生きる道が無いわけじゃから、どうするのじゃ、死ぬのか?」
間を置き才蔵が答える。
「まだ決めておらぬ」
男がほくそ笑み言った。
「お主が自害するならば俺は手伝ってやるが、生きるつもりならばこのまま立ち去る事になるぞ。いずれにしろ、どちらに加担しようと、理屈で考えれば俺はあんたの生死、及び善悪を相互裏切る事じゃから情け抜きに満足は行くわけじゃ。して、どうするんじゃ、死ぬのか、生きるのか、どうするつもりなのじゃ?」
才蔵が深呼吸してからおもむろに言った。
「お主がもたらす毒消しの情報次第じゃ」




